わずか25分で、春夜は学校で一番かわいい女の子と付き合い始めました。

MayonakaTsuki

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君への道

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空はゆっくりと暮れ始め、橙色の光が深い群青に溶けていった。
穏やかな風が流れ、遠くの車の音が、虫の鳴き声と混じり合う。

ヒカルとミユは並んで歩いていた。
街灯が灯り始め、二人の影が長く伸びて、地面で一つに重なった。

ミユは少し前を歩き、唇にいたずらっぽい笑みを浮かべていた。
ふいに振り返り、手を差し出す。

――「ほら、ヒカル。手、出して。道を案内してあげる。」

ヒカルは一瞬ためらった。
あまりに自然なその仕草に、どう返せばいいのか分からなかった。
けれど次の瞬間、ミユの手が彼の手を包み込む。
その温もりは柔らかくて、それでいて確かに胸を打った。

「お、俺……こういうの、慣れてなくて……」
頬を赤らめながら、ヒカルがつぶやく。

ミユは小さく笑った。
「じゃあ、これから慣れてもらわなきゃね。」

二人はしばらく無言で歩いた。
アスファルトに響く足音だけが、夜の空気に溶けていく。

やがてヒカルが、少し照れくさそうに口を開いた。
「なぁ、ミユ……君の両親、俺が一緒に帰ってきたら……嫌がらない?」

ミユは振り向き、街灯の光に照らされた瞳を輝かせて微笑んだ。
「もちろん、そんなことないよ。ママ、ヒカルのこと気に入ると思う。」

「そ、そうなのか? じゃあ……」
ヒカルは首の後ろをかきながら、少し照れたように続ける。
「今度は……何かプレゼントでも持ってくるよ。」

ミユはくすっと笑い、目を細めた。
「ママ、きっと喜ぶと思う。」

歩くたびに、夜風がミユの髪を揺らす。
ヒカルはその横顔を、つい何度も見てしまう。

「ねぇ、ヒカル。」
「ん?」
「兄弟いる?」

「え? ああ、いないよ。一人っ子なんだ。」
「そっか。私はね、一つ上のお兄ちゃんがいるの。」

「へぇ、そうなんだ。仲いいの?」
「たまにうるさいけど、ヒカルなら仲良くなれそう。」
ミユがそう言って笑うと、ヒカルも思わず笑みを返した。

「そうだといいな……」

気づけば、道のりがどんどん短く感じられていた。
二人の会話は自然に流れ、時間の流れさえ穏やかに感じられる。

やがてミユが前方を指差した。
「もうすぐ着くよ。」

「えっ……あの家?」
ヒカルが見つめたのは、庭の明かりが優しく灯る温かな家。

「うん、あそこ。」
ミユが微笑む。

だがその時、ヒカルが何かに気づいたように立ち止まった。
「待って……誰か、あの家から出てくる。」

ミユも同じ方向を見て、手を振った。
「あっ、お兄ちゃんだ。」

ヒカルの目が見開かれる。
「えっ? 彼……俺たちと同じ学校に通ってるのか?」

「うん、そうだよ。」
当たり前のように言うと、ミユはヒカルにいたずらっぽく笑いかけた。
「さ、紹介してあげる。」

「い、今!?」

ミユはヒカルの手をぎゅっと握りしめ、笑った。
「もちろん。だって――彼、ヒカルの“義理のお兄ちゃん”になるんだから。」

「な、なっ……!?」
ヒカルの顔が一気に真っ赤になる。
言葉が出ず、思考が一瞬で真っ白になった。

そんな彼をよそに、ミユは楽しそうに笑いながら、その手を軽く引いた。
二人の影が再び伸び、家の灯りへと続いていく。

ヒカルの胸の鼓動は止まらなかった。
その音が自分でもはっきり聞こえるほどに。

――そして、その時ヒカルは気づいた。

ミユの家までの帰り道は、もうただの“放課後の道”ではなかった。
それはきっと、まだ名前も知らない“何か”の始まりだった
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