15 / 22
第一章
第十四話 修羅場?
しおりを挟む「で、何故俺はまたビンタされなければならないのか」
本日二発目のビンタを貰った俺は、理不尽な人生を嘆く。ビンタをされるほど悪い事をしたとは思えない。とは言え、それと同じくらいのご褒美は貰っているのだが。
梢さんは胸元のボタンを締めながら、
「ごめんね、可奈子ちゃん。洸平君が大胆で」
「梢さん!」
「はいはい。これはね、そういうのじゃないのよ」
「そう言うのって何ですか!」
可奈子の顔が真っ赤なのは夕日のせいだろうか。
「洸平に胸を触らせるなんて、破廉恥にも程があります!」
梢さんを指さして責め立てる。が、梢さんは涼しい顔をしている。
「洸平も!」
矛先が俺にも向く。まあ、当然か。言われたら反論の余地はありません。
「私の胸に顔を埋めておきながら、他の人の胸を触るなんて!」
「まあ大胆」
口を押さえて俺を横目で見る梢さん。いやいや、
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。あれは可奈子が押し付けて来たんじゃないか」
「まあ大胆」
梢さんが今度は可奈子を見る。
「だ、だって転んだんだから仕方ないでしょ!すっと紳士的に避ければよかっただけじゃない!」
「あの体勢からじゃ無理だって!それに、息が出来なくて死にそうだったんだぞ!」
「大袈裟なのよ!洸平は!ふがふがして顔をすりよせて来たでしょう!」
「んな訳あるか!苦しんでただけだ!」
俺と可奈子の言い分が合致する訳がない。俺としても、経緯はどうあれ可奈子の胸に顔を埋めてしまったのは事実なので、あまり強くは言えない。
「じゃあ何であの時『何か良かった』って」
「ダメよ洸平君。『ごちそうさまでした』って言わないと」
黙ってて貰えますか?
「多分ギジオレが作用したんだよ。ギジオレに乗ってると少しおかしいんだ」
そうじゃなかったらどうしよう。
「あの時は格好いい事言ってくれたと思ったのに」
可奈子が下を向く。
「まあまあ」
言い合いの原因の一部である梢さんが間に入る。
「二人で揉めないの。おっぱいだけに」
・・・
「何か急にバカバカしくなって来たわ」
「そうだな」
一言で丸く収めた梢さんは満足げ。
「とにかく可奈子ちゃん聞いて。さっきのは洸平君がとにかく触りたがったってのもあるんだけど」
「それは断固として否定します」
「これはカウンセリングの一環なの」
そうなのか。じゃあ、明日また来ようかな。
「いでで」
可奈子に耳を引っ張られる。いつから俺の心を読めるようになったんだ。
「いまいち信用出来ませんけど・・・どういう事ですか?」
可奈子が疑っているのは目を見れば分かる。
「だから洸平君がね、可奈子ちゃんで妄想出来なくなったって言うから、プランBとして私の妄想の種を洸平君の記憶に植えておいたの」
「妄想の種?」
初めて聞く言葉に、可奈子は聞きかえす。俺も聞いた事がない。
「誤解なく言うと、オカズのネタ」
「やっぱりその言い方はちょっと」
「プランAだけだったら、可奈子ちゃんに罪悪感を感じて妄想出来なくなったら力が発揮出来なくなるでしょう?だからその保険としてのプランB。これを記憶に残しておけば、いつでも呼び出せて妄想できるって寸法よ」
梢さんはそう言ってウインクする。
「だから、決して洸平君を取ろうとか、夜這いしようとか、媚薬を嗅がせようとか、既成事実を作ろうとか考えている訳じゃないのよ」
「さすがにそこまでは考えてませんよ」
可奈子がちょっと引いてる。
「とにかく」
梢さんが咳払いする。
「洸平君が可奈子ちゃんの事を想っているからこその行動なのよ。私はそれに協力しただけ」
「うん・・・」
可奈子が下を向いて、俺の方を見る。
「だから洸平君がおっぱい触るのは許してあげて」
そう言われると話が変わって来るんですよ。
どう言えばいいのか困っていると、可奈子が俺の袖を引っ張る。
「ねえ洸平。もし洸平が胸を触りたいって思ったなら」
「いや、何言ってるんだよ可奈子」
話が変な方向に向かいはじめたぞ。
「あの、ちゃんと言ってくれれば、ちょっとだけなら・・・」
目線を外してはにかむんじゃない。誤解するだろうが。
「とにかくその辺の話は忘れてくれ」
俺は両手を振って話を終わらせる。
「ところで、源治おじさんには何を言われたんだ?」
強引かもしれないが話を変える。そうでもしないと心がモヤモヤするばっかりだ。
「ああ、それ」
可奈子は思い出したように、顔を上げる。どうにか話題を変える事には成功した。
「まずは、ギジオレに安全装置を付けたって話。今までは洸平から送られる妄想力がギジオレの許容量を超えたら、洸平に逆流するようになってたらしいのよ」
恐ろしい仕様。そこまで妄想力が高まらないと考えられていたのか。思春期男子の妄想力を過小評価していたのだろうか。
「だから、ある一定の妄想力でリミッターがかかるようになったらしいわ。だから」
可奈子はそこまで言うと、目を伏せて俺から視線を逸らす。
「この間みたいな事はなくなるんじゃないかな」
「それは残念ね」
梢さんは茶化したように言うが、ようやくこの間の事件の真相が分かったような気がする。妄想力が逆流してパイロットをおかしくするなんて、恐ろしいロボットだな。
「それと」
可奈子は俺の方に向き直ると、もじもじし始める。どうにか話題を変えたのに、結局可奈子の態度があまり変わらない。
「最近パパがあまり帰ってこないでしょ?」
「そうみたいだな。まあ、元々忙しい人だったからね」
「だから私、家に一人になっちゃって」
「だから洸平君はちょっかいだしやすいのね」
「梢さん、黙ってて下さい」
キュートに舌を出す梢さんの表情を見る限り、言うことを聞いてくれそうにないけど。
可奈子はそんな梢さんを一瞥すると、
「最近侵略者の行動パターンが変わって来たから、一人じゃ危ないんじゃないかって」
「そうかもな」
俺は侵略者の行動パターンの変化を感じたわけではないが、侵略者と戦うギジオレの関係者である可奈子が一人でいるのは危ないかもしれない。
「だから」
「うん」
何か可奈子が言いにくそうにしている。
「暫く洸平の家に泊めてもらえって」
んんんん?それって?
「わお」
梢さんの目がきらりと光る。
「何かが起こりそうな気がするね」
何を期待しているんですか。
さらにモヤモヤしてしまうじゃないか。
0
あなたにおすすめの小説
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる