妄想ロボ ギジオレ

みつつきつきまる

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第一章

第十四話 修羅場?

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「で、何故俺はまたビンタされなければならないのか」

 本日二発目のビンタを貰った俺は、理不尽な人生を嘆く。ビンタをされるほど悪い事をしたとは思えない。とは言え、それと同じくらいのご褒美は貰っているのだが。

 梢さんは胸元のボタンを締めながら、

「ごめんね、可奈子ちゃん。洸平君が大胆で」

「梢さん!」

「はいはい。これはね、そういうのじゃないのよ」

「そう言うのって何ですか!」

 可奈子の顔が真っ赤なのは夕日のせいだろうか。

「洸平に胸を触らせるなんて、破廉恥にも程があります!」

 梢さんを指さして責め立てる。が、梢さんは涼しい顔をしている。

「洸平も!」

 矛先が俺にも向く。まあ、当然か。言われたら反論の余地はありません。

「私の胸に顔を埋めておきながら、他の人の胸を触るなんて!」

「まあ大胆」

 口を押さえて俺を横目で見る梢さん。いやいや、

「ちょ、ちょっと待ってくれよ。あれは可奈子が押し付けて来たんじゃないか」

「まあ大胆」

 梢さんが今度は可奈子を見る。

「だ、だって転んだんだから仕方ないでしょ!すっと紳士的に避ければよかっただけじゃない!」

「あの体勢からじゃ無理だって!それに、息が出来なくて死にそうだったんだぞ!」

「大袈裟なのよ!洸平は!ふがふがして顔をすりよせて来たでしょう!」

「んな訳あるか!苦しんでただけだ!」

 俺と可奈子の言い分が合致する訳がない。俺としても、経緯はどうあれ可奈子の胸に顔を埋めてしまったのは事実なので、あまり強くは言えない。

「じゃあ何であの時『何か良かった』って」

「ダメよ洸平君。『ごちそうさまでした』って言わないと」

 黙ってて貰えますか?

「多分ギジオレが作用したんだよ。ギジオレに乗ってると少しおかしいんだ」

 そうじゃなかったらどうしよう。

「あの時は格好いい事言ってくれたと思ったのに」

 可奈子が下を向く。

「まあまあ」

 言い合いの原因の一部である梢さんが間に入る。

「二人で揉めないの。おっぱいだけに」

 ・・・

「何か急にバカバカしくなって来たわ」

「そうだな」

 一言で丸く収めた梢さんは満足げ。

「とにかく可奈子ちゃん聞いて。さっきのは洸平君がとにかく触りたがったってのもあるんだけど」

「それは断固として否定します」

「これはカウンセリングの一環なの」

 そうなのか。じゃあ、明日また来ようかな。

「いでで」

 可奈子に耳を引っ張られる。いつから俺の心を読めるようになったんだ。

「いまいち信用出来ませんけど・・・どういう事ですか?」

 可奈子が疑っているのは目を見れば分かる。

「だから洸平君がね、可奈子ちゃんで妄想出来なくなったって言うから、プランBとして私の妄想の種を洸平君の記憶に植えておいたの」

「妄想の種?」

 初めて聞く言葉に、可奈子は聞きかえす。俺も聞いた事がない。

「誤解なく言うと、オカズのネタ」

「やっぱりその言い方はちょっと」

「プランAだけだったら、可奈子ちゃんに罪悪感を感じて妄想出来なくなったら力が発揮出来なくなるでしょう?だからその保険としてのプランB。これを記憶に残しておけば、いつでも呼び出せて妄想できるって寸法よ」

 梢さんはそう言ってウインクする。

「だから、決して洸平君を取ろうとか、夜這いしようとか、媚薬を嗅がせようとか、既成事実を作ろうとか考えている訳じゃないのよ」

「さすがにそこまでは考えてませんよ」

 可奈子がちょっと引いてる。

「とにかく」

 梢さんが咳払いする。

「洸平君が可奈子ちゃんの事を想っているからこその行動なのよ。私はそれに協力しただけ」

「うん・・・」

 可奈子が下を向いて、俺の方を見る。

「だから洸平君がおっぱい触るのは許してあげて」

 そう言われると話が変わって来るんですよ。

 どう言えばいいのか困っていると、可奈子が俺の袖を引っ張る。

「ねえ洸平。もし洸平が胸を触りたいって思ったなら」

「いや、何言ってるんだよ可奈子」

 話が変な方向に向かいはじめたぞ。

「あの、ちゃんと言ってくれれば、ちょっとだけなら・・・」

 目線を外してはにかむんじゃない。誤解するだろうが。

「とにかくその辺の話は忘れてくれ」

 俺は両手を振って話を終わらせる。

「ところで、源治おじさんには何を言われたんだ?」

 強引かもしれないが話を変える。そうでもしないと心がモヤモヤするばっかりだ。

「ああ、それ」

 可奈子は思い出したように、顔を上げる。どうにか話題を変える事には成功した。

「まずは、ギジオレに安全装置を付けたって話。今までは洸平から送られる妄想力がギジオレの許容量を超えたら、洸平に逆流するようになってたらしいのよ」

 恐ろしい仕様。そこまで妄想力が高まらないと考えられていたのか。思春期男子の妄想力を過小評価していたのだろうか。

「だから、ある一定の妄想力でリミッターがかかるようになったらしいわ。だから」

 可奈子はそこまで言うと、目を伏せて俺から視線を逸らす。

「この間みたいな事はなくなるんじゃないかな」

「それは残念ね」

 梢さんは茶化したように言うが、ようやくこの間の事件の真相が分かったような気がする。妄想力が逆流してパイロットをおかしくするなんて、恐ろしいロボットだな。

「それと」

 可奈子は俺の方に向き直ると、もじもじし始める。どうにか話題を変えたのに、結局可奈子の態度があまり変わらない。

「最近パパがあまり帰ってこないでしょ?」

「そうみたいだな。まあ、元々忙しい人だったからね」

「だから私、家に一人になっちゃって」

「だから洸平君はちょっかいだしやすいのね」

「梢さん、黙ってて下さい」

 キュートに舌を出す梢さんの表情を見る限り、言うことを聞いてくれそうにないけど。

 可奈子はそんな梢さんを一瞥すると、

「最近侵略者の行動パターンが変わって来たから、一人じゃ危ないんじゃないかって」

「そうかもな」

 俺は侵略者の行動パターンの変化を感じたわけではないが、侵略者と戦うギジオレの関係者である可奈子が一人でいるのは危ないかもしれない。

「だから」

「うん」

 何か可奈子が言いにくそうにしている。

「暫く洸平の家に泊めてもらえって」

 んんんん?それって?

「わお」

 梢さんの目がきらりと光る。

「何かが起こりそうな気がするね」

 何を期待しているんですか。

 さらにモヤモヤしてしまうじゃないか。
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