妄想ロボ ギジオレ

みつつきつきまる

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第一章

第十五話 「おめでとう」

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「洸平、聞いたぞ」

 翌日学校へ行くための待ち合わせ場所で俺を見つけた晴人が、あいさつもそこそこに俺を責め立てるように言った。隣にいるクリオナがぺこりと頭を下げて来る。

 見たところ怒っている訳ではなさそうだが、あまり好意的な雰囲気ではない。

「ななな、何を?」

 心当たりのありすぎる俺は声を上ずらせながら、可奈子と顔を見合わせる。

 ギジオレの中で可奈子とあった一悶着だろうか。それとも連合軍のカウンセリングルームで梢さんとあった一悶着だろうか。それともその後の一悶着だろうか。

 なんか一悶着だらけだな。

 晴人はどれをどこでどうやって聞きつけたのか。晴人の次の言葉によっては、俺の今後がいろいろ左右されかねない。

「一緒に水着を買いにいったんだろ?」

「あ、あ、うん。その事か」

 なんだ。それなら別にただ買い物に行っただけだし、晴人に責められる理由はない。

「可奈ちゃんはともかく、クリオナの水着姿も見たって事だろ。何で俺を呼ばないんだよ」

 それで拗ねてる訳か。

「そんな事言われてもなぁ」

 別に俺が誘った訳じゃないし。

「クリオナは私が誘ったのよ」

 そう、俺も朝可奈子にクリオナの部屋に連れて行かれて初めて知ったのだ。

「クリオナは晴人に選んで欲しくなさそうだったしね」

「でも、ついていくくらいはいいだろうよ。何で洸平だけがいい思いを」

「いい思いって何だよ」

「どうせいやらしい水着を着せて、舐めるように上から下まで眺め尽くしたに違いない」

「どんな偏見だよ」

「洸平さんがそうしていたのは、可奈子さんにだけですよ」

「だからあんなにいやらしい目をしてたのね」

「ならいいや」

 なんだこれ。俺は責められているんだかからかわれているんだか分からない。ただただ買い物に付き合っただけなのに。

「実際のところ」

 可奈子はふふっと口元に笑みを浮かべて、

「私の水着を選んでもらっただけ。クリオナの水着は私が選んだし」

「えっちなの選んでもらった?」

「普通のに決まってるでしょう?」

「何やってんだよ、洸平」

 違う方向で攻めてくる晴人。

「せっかくだからバニースーツとか」

「水着じゃねえよ」

「一回手にとったわね」

「何でそれを通さなかった」

「間違えただけだって」

「迷わず取りましたからね」

「だからそうじゃないって!」

「・・・でも、洸平が着て欲しいって言うなら」

 そういう事言うなよ。

「そういう事言うと誤解されるぞ。可奈子」

 俺がそう言うと、一瞬可奈子が何かを言おうとして息を吸い込んだ。だが、その言葉は飲み込んだらしく発せられる事はなかった。

「こうだからなぁ」

 代わりに晴人がそう言って、クリオナと顔を見合わせてため息をついている。

 え?何?急に話が終わったぞ。

 まあいいや。

「晴人、そんなに文句があるなら、クリオナに水着を選んでもらえばいいだろうよ」

 少なくとも、クリオナは自分の水着を晴人に選んでもらうのを断っただけだ。

「それもそうだなぁ」

 晴人は改めてクリオナを見る。

「どう?俺の水着選んでくれる?」

 クリオナはにっこりと、

「いいですよ」

「本当?俺、紐でもブーメランでも何でも履くよ!」

 それはやめとけ。




「そう言えば、可奈子」

「ん?」

 俺が言うと、並んで歩く可奈子がこちらを見上げた。

「一応二人にも言っておいた方がいいと思うんだけど」

「そうね。二人には言っておいた方がいいかもね」

 そんな事を言い出す俺たちに、晴人は振り返って怪訝な顔を見せる。しかし次の瞬間、思い当たる事があったらしく、ぱっと笑顔を輝かせた。

「そうか。分かった」

 まだ何も言ってない。

 晴人は一人で納得したように大きく頷くと、俺の両手を取って、

「洸平、おめでとう!」

「は?」

「可奈ちゃんもおめでとう!」

「ん?」

 なぜか祝福される。ああ、俺も可奈子も誕生日だからそう言うのかな?

 晴人は俺の手を強く握ると、

「とうとう二人が結婚を決めたんだな。分かる分かる。言わなくても分かってるから」

「まあ、おめでとうございます」

「ま、待て待て!そんな訳がないだろう!」

 俺は慌てて手を振り解く。どこからどうやって話が飛躍したんだ。

「ああ、そうか。すまんすまん」

 おかしな早合点に、晴人は頭に手を置く。

「そうだよな。一応世間体的に付き合ってる状態を経由しないとな。世間は順序を重んじるから。でも、俺たちは分かってるからな」

「私たちは応援してますよ」

「だから付き合うとか結婚とか、そうじゃない!」

 俺が大声で否定したので、周囲を歩く学生やら会社員やらがこちらをちらちら見ている。 

「洸平、あまり大声出さないで」

 可奈子が小声で言って来る。

 俺は周囲を気にして声を落ち着かせる。

「そういう事じゃない。そんな報告じゃない」

 晴人がやはり怪訝な顔をする。何を期待してたんだ。

「じゃあ何だ。あとは、ファーストキスの報告か、初めての夜の報告くらいしかないぞ」

「そんな事わざわざ報告しない」

「あったのか?」

「ないけども」

 しっかりと否定してから、俺は改めて言う。

「これから暫く、可奈子が俺の家に泊まる事になった」

 あらぬ誤解を招かぬように先に言っておこうと思ったのだが、晴人の誤解の方が先走っていた。

 ・・・

 晴人の表情は変わらない。

「何だ、そんな事か」

 つまらなそうに言って、再び前を向いて歩き出した。

 いや、ちょっと待ってくれ。若い女の子が同年代の男の子の家に泊まりに行くなんて、普通ならちょっとしたニュースだろ。いや別に騒いで欲しいわけじゃないけども。

「二人の関係性を考えれば、泊まりに行くぐらい普通な事だろ。むしろ、今一緒に住んでるって聞いても驚かなよ」

 その認識の方がおかしいような。

「だが安心しろ。俺が責任を持って全校生徒に言いふらしてやる。二人が同棲を始めたって」

「何でそんな事!」

「言わなくていいの!」

 俺と可奈子が声を上げると、晴人はにやりとして俺に言う、

「ちゃんと仕留めるんだぞ」

 どっかで聞いたな。
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