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5 苦手
しおりを挟む眠い目を擦りながら寝室を出ると、相変わらずの目の毒な光景が広がっていた。白いタンクトップに白いショートパンツ。白い太ももが眩しい。
「おはようございます。よく眠れましたか?」
最高に可愛いセイレーンが僕に笑顔を向ける。
あの状況で眠れるわけがない。眠れる事は出来なかったけど、レネの柔らかさを充分に堪能できました。
「まあ、よく眠れたよ」
「よかったです」
レネの笑顔が夏の太陽以上に眩しい。こんな笑顔を向けられて、その上あんな甘美な経験もさせてもらえたんだから、眠れないくらいどうって事ない。
レネは朝からオムレツを焼いていた。ここは孤島の割に、電気もガスも通っている。
綺麗に焼いたオムレツを皿に盛る。うん、焦げもなくうまく焼けています。
レネは冷蔵庫からケチャップを取り出す。それでハートマークとか描いてくれないかなぁ、と思っていると、
「きゃあ」
容器を強く掴みすぎたのか、中身がとびだしてレネの顔にかかる。
「あーあ」
言いながら、僕はレネの顔にかかったケチャップをティッシュで拭いてあげる。ちょっとくすぐったそうにしているレネが可愛い。
「すみません」
少し赤くなっているのも可愛い。
それから二人でオムレツを食べる。濃すぎない、自然で優しいレネの味はいくらでも食べられる。
「食欲もあるようで嬉しいです」
自分の事のように喜んでくれるレネ。その笑顔を見るともっと僕は嬉しくなるよ。
そんなレネの笑顔をずっと見ていたくて、なるべく時間をかけてオムレツを食べる。永遠に食べていられる方法が何か無いかなぁ。
今日はレネが島を案内してくれるらしい。まあ、ちょっとした運動も兼ねてなんだろうけど、小さな島を二人でゆっくり回ろうと言われた。
もちろん僕は二つ返事で承諾する。うん、レネと一緒にいられるなら、どこにでも行きますとも。
準備らしい準備も必要ないので、オムレツを食べてすぐに出発する。一応靴を履いておいた方がいいと言われたので、レネがいつの間にか洗ってくれていた自分のスニーカーを履く。レネはマリンシューズのような靴。
そしてレネは僕の手を引いて家を出る。
「今日も天気がいいね」
太陽の光が眩しい。それ以上にレネの白い肌が眩しい。
「この辺りは常に天気がいいんですよ」
レネがそう答える。だから、レネはこんな刺激的な格好をしているのかもしれない。
「セイレーンが歌わない限りは?」
レネがあまりにも可愛いので、ちょっといじわるしたくなる。
「それは言わないで下さい」
「あ、ごめん、ごめん」
レネが一瞬で泣きそうな顔になったので、僕は慌てて謝る。レネはちょっと純粋すぎるところがあるな。
それから僕らは白い砂浜を抜け、岩場を登る。ちょっと高い所は僕が先に登って、レネの手を引いてあげる。少しくらいはいい格好させてよ。
ごろごろした岩をジャンプしながら進む。
「この辺りでは貝が沢山取れるんですよ」
レネも岩をジャンプしながら言う。そんな事よりも僕がよく揺れるものを見ているのは内緒だ。
「っと——」
バランスを崩したレネを支えてあげる。いや、違う。どさくさに紛れてその場所を触ろうとした訳じゃない。たまたま当たっただけだ。
「ありがとうございます」
僕の腕の中で笑うレネはたまらなく可愛い。
「あ、カニが走ってますよ」
「本当だ!」
小さなカニがわらわらと出てきて、あっと言う間に岩陰に隠れてしまう。逃げ遅れた奴が困ったように右往左往していたけど、そのうち岩陰を見つけて隠れて行った。
「この岩場は魚もよく釣れるので、今度一緒に釣りに来ましょう」
レネと寄り添って釣り糸を垂らす——魚が一切釣れなくても、永遠に竿先を眺めていられる自信がある。いや、竿先を眺めるレネを。
「レネも釣りとかするんだ」
「勿論です。大抵の食料は定期的に輸送されてきますが、月に一回ほどしか船は来ないので。ある程度は自分で調達しないといけません」
大きな岩に飛び乗りながら言うレネ。
「ふーん。大変じゃない?」
いろいろ揃っているとは言え、孤島では不自由も多いだろう。
「いえ、楽しいですよ」
レネは大きな岩をステージみたいにして、くるりと一回転して笑う。その様子は、地上に降りてきて救いを与えようとする天使以外の何者でもない。
レネはジャンプして岩を飛び降りて、僕の目の前に着地する。残念な事に、ふらつく事なくしっかりと着地した。
支えてあげたかったな、と思いつつ僕は岩場の先に目を向ける。
「こっちはもう山道みたいだね。そんなに高い山ではないみたいだけど」
小さな島だ。山と言っても丘に近いかもしれない。鬱蒼と木々が茂っているが、迷ったりするほどではなさそうだ。
「はい・・・」
レネは気乗りしない様子。
それでも僕の手を引いて山道を歩く。獣道と言うほど荒れてはいないが、なんとなく道になっているな、程度の山道。
「あ、この木の実」
レネが背の低い木に生るさくらんぼくらいの大きさの緑色の木の実を指差す。
「赤くなったら食べごろです。甘くて美味しいんですよ」
味を思い出したのか笑顔になる。その笑顔だけで味が分かりそう。
「それに、この野草は——」
レネが小さな池の辺りに生えるぐるぐる渦巻きみたいな野草に手を伸ばした時、
「きゃぁぁぁぁ!」
突然悲鳴。初めて聞くレネの悲鳴に、思わず体をぴくりと震わせる。
その瞬間レネが抱きついてきて、柔らかい肌が密着する。何ですか。なんのご褒美ですか。
「ちょ、ちょっとレネ」
そうは言うが、この状況嬉しくない訳がない。柔らかくて温かい感触を全身で受ける。なるべく自然に強めに抱きしめて、レネを安心させるように頭を撫でる。子犬のように震えるレネの顔がすぐ横にある。
ああ、レネはすごくいい匂い。花でも果物でもない、そんな『甘い』とは違う甘さ。もっと鼻を近づけて匂いの正体を探りたいくらい。
「レネ、どうしたの?」
いろいろ探求したいが、まずはレネの悲鳴の元を確認しなければ。
「あ、あれです!」
レネがそちらも見ずに、指を差す。そこには、
「小さいカエルじゃないか」
「・・・カエルさんは苦手です」
レネが僕の胸に顔を埋めて言う。小さなカエルくん、ありがとう。これからもいいところで登場をよろしく。
「ほら、もう行っちゃったよ」
僕が言うと、レネは少し体を離す。
「本当ですか?」
少し泣いてるみたいだ。
「うん。そんなに苦手なんだ」
孤島で一人で暮らしている割にカエルが苦手とか。カエルなんていくらでもいるだろうに。
「だから山にはあまり行きたくないんだね」
「はい・・・」
少ししゅんとするレネ。そんなレネも愛おしい。
「じゃあ、こっちは今度にしよう」
そう言って山道を引き返す。その間ずっと僕に寄り添っていたけど、ずっとこうしていてくれないかなぁ。
岩場に戻って来る。すると、先程は気づかなかった高さ二メートル程の岩が海岸付近に鎮座しているのに気付く。それは桟橋のように海へ長く伸びている。
「あ、あそこはとっておきの場所なんです」
元気になったレネが駆け出すので追いかける。その大きな岩は直方体で、登るための縄梯子がかけられている。
「私がかけたんですよ」
得意げに言って、縄梯子を登る。
・・・僕の目の前にレネのお尻が——
何だろう。胸とは違うこの魅力。決して大きくはないが、健康的に引き締まっているこの膨らみ。胸にばかり目が行っていたが、レネのお尻もなかなか。
レネの新たな魅力に心を躍らせていると、ふいにお尻が近づいてくる。
「あっ」
レネの声がする。
僕は、縄梯子を掴み損ねたレネのお尻に押しつぶされ、砂浜に倒れ込んだ。岩場じゃなくてよかった。
「だ、大丈夫ですか!」
「うん・・・新しい性癖に目覚めそうだ」
「どういう事ですか!しっかりして下さい!」
倒れ込んだ僕をレネが覗き込んできてゆすってくる。
お尻を眺めていた罰だろうか。でも、やっぱり目の前で揺れる二つの膨らみの魅力からは逃れられそうにない。
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