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七章
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しおりを挟む「え? 俺の方向から見たら、完全にキスをしているように見えたけど。あ、でも結ちゃんも『あきちゃんの唇が、奪われちゃうかと思った』って言ってたな」
そこはバッチリ聞いてたのかよ。
色々とツッコミたくなりながらも、宮田が納得するまで待つことにした。
「じゃあ、本当に未遂だったのか」
「納得したかよ」
「納得した」
一人で勝手に勘違いして、今日一日中そんな事を考えていたのかと思うと複雑な気持ちだ。
無事に誤解が解けたことにホッとして、苦笑いが声に滲む。
「宮田って、単純だよな」
「悪かったな」
「いや、別に悪いとは言ってねえけど」
完全にいつも通りの宮田が帰ってきた気がして、頬が緩む。
「まあでも、今の俺は気分が良いから、何を言われてもご機嫌かも」
「は?」
そんなにご機嫌になるような事が、この短時間の間にあったっけ。
首を傾げれば、電話越しに安心したような溜息が聞こえてきた。
「安心した」
「何が」
「あきが、他の奴とキスしていなくて」
甘さを含んだ声に、心臓が時を刻むのを止めたかと思った。
気が付けば、俺の指も勝手に電話を切っていたけど、かけなおす勇気はない。
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