自称不良は君専用

アtorica

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七章

6

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「何だよコレ」

 さっきまでは何ともなかった筈なのに、突然熱が出たかのように顔が熱い。
 携帯を握る手も汗で湿ってきた気がする。
 宮田の声を聞いていただけなのに、何故突然こうなったのか。
 正直、安堵感に甘さが含まれたアノ声は反則だと思う。

「っていうか、いつまで俺の心臓はバクバクしてんだよ」

 本当に意味がわかんねえ。
 片手で髪の毛をくしゃりと掻き混ぜた瞬間、携帯が震え出して肩が跳ねた。

「……宮田」

 俺が急に電話を切ったから、心配してかけ直してくれたんだろう。
 それは分かっていても、今の状態で出れるわけがない。

「どうすっかな」

 宮田への罪悪感で、震える携帯に出ようとするも手が震えて動けない。

「いや、出よう。……やっぱ無理!」

 葛藤を繰り返して一人で戦っている間に、携帯の震えが止まってしまった。
 俺からの電話を待つ側に回ったのかもしれない。
 勿論、気持ちの整理がつかないまま混乱していた俺に、かけなおすことなんて出来る筈がなかった。
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