自称不良は君専用

アtorica

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八章

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あれからどのぐらい走ったんだろう。
荒くなった息で肩を揺らしながら、額から伝った雫で濡れた床を睨む。
無我夢中すぎてよく覚えていないけど、屋上まで走ってきてしまったみたいだ。

「疲れた」

こんなに走ったのは、ヤバイ連中に喧嘩をふっかけちまった時以来だ。
ダサすぎる過去に思いを馳せて、コンクリートの上に寝転がった。
徹夜明けの体を労わるように、ゆっくりと流れる雲を眺めて息を吐く。

「まじで意味わかんねえ」

昨日に引き続き、今日も宮田に悪い事をしてしまった。
確実に俺が悪いから、今すぐにでも謝りたい。
けど、俺を動揺させる感情が落ち着かない限りは、謝るどころか喋る事すら出来そうになかった。

「困ったな」

空を見上げて、五分ぐらいが経過した気がする。
ゆっくりと流れる雲を見て、温かい日差しを浴びていたら、眠気が襲ってきた。
折角早く学校に来たけど、今日一日ここで寝るのもありかもしれない。
ゆっくりと瞼を閉じ、眠気に身を任せようとした瞬間、身体に重みを感じて息を呑んだ。
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