21(仮)※不定期掲載

zakura

文字の大きさ
4 / 7

7月19日 日曜日

しおりを挟む
森の奥にある一件の家。

今日は朝から三人は集まっていた。

部屋の机にはたくさんのお酒の缶。

床には倒れるように寝ている灰色の髪の黒(こく)。

もう一人、机に顔をうっつぷして寝ている肩までの髪の女、灰(ぐれい)。

その向かいでパソコンを打っている黒髪の男、白(はく)。

部屋には扇風機の音とキーボードを叩く音。

白の方を見て灰は言う。

「まだ、やってんの?」

白は起きていたのかと驚いたようにして、言葉を紡いだ。

「終わらなくて、、」

「昨日終わらせたじゃん。」
 
正確には今日の朝方である。

白は困ったように言った。

「これは、明日までの。」

灰はため息をつく。

「また人のやつか。」

白はごまかすように言った。

「違うんだよ。これは、俺もやらなきゃいけなかったやつで……。」

「嘘つくなよー。」

床から顔をあげて黒も白を睨む。

白は困ったように笑った。

「白はギリギリになってする人じゃないでしょ。なにうちらをごまかそうとしてんのよ。」

黒も続く。

「そうだよ。白が真面目でなんでも後回しにしないってわかってるんだからー。」

「どうせ、頼まれたんでしょ?」

白はもうごまかせないと確信してうなずいた。

灰は舌打ちする。

「ったく、だから断れって言ってるよね?毎回。」

「苦しいのは自分だよ?断るのも人のためっていつもいってるじゃーん。」

「でも、、、同僚は子供いるから、休みの日仕事できないし、、、」

灰は指で机をとんとん叩きながら言う。

「あんたは、休みの日仕事できるの?」

「え?、、、できるけど、、」

灰は長いため息をつく。

そのあと白を真っ正面から見つめていった。

「子供がいる、いない関係ないの。

その人にはその人の仕事があって

その人のキャパに合わせてあるの。

その人が休みの日まで持ち込まなきゃできなかったのならそいつの力不足よ。

同僚が休みの日仕事しないなら、

あんたが仕事する必要はない。」

白は黙る。

「……」

灰も黙る。

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

耐えきれなくなった灰が口を開いた。

「もう!!

私がこんだけいっても、どうせ頼まれたらするんでしょ!くそ!!

お人好しが!

ったく、断るってスキルを身に付けろよ!」

とぶつぶついいながら部屋を出ていく。

残された黒は白の方を見て言う。

「心配してるんだよ?俺も灰も。」

白は顔をくしゃっと歪めた。

「わかってる。」

黒は優しく言う。

「わかってるならいいんだよー。」

そういうと黒も外へ出ていった。

白は呟く。

「わかってる、、、わかってるよ。


……灰が羨ましいよ。」

その声は誰にも届かず消えていく。













五時のサイレンで目が覚める白。

時計を見て驚く。

今まで寝ていたようだ。

朝五時に帰ってきた体は限界だったようで二人が外に出てから作業をしていたら寝てしまったようだ。

白はあせる様子でパソコンを見る。

そこには、、、



『化粧品サンプル◯◯◯◯について』

『新商品開発案』

『次回雑誌◯◯原案』

終わらせなければならないパワーポイントや資料がすべて出来上がってデスクトップに入っていた。

やったのは二人しかいない。

外に出ていったのを思いだし、急いで外に出る。


外では二人がバーベキューをしていた。

白の慌てた様子を見て二人は笑う。

「なんつーかおしてんの白。」

「ふふっ。おもしろー。」

白はよろよろと二人に近づく。

昨日も今日も二人に助けてもらってばっかりの白はもう思いが溢れそうだった。

それを察した二人はぎょっとする。

慌て出す。

「ちょ、、ちょっと!なに泣きそうになってのよ!」

「なかないでよー、、お肉!お肉食べよ!」

白は涙をこぼす。

「きゃあああ!!泣かないでよ!!なんでなくのよ!」

「ちょっと!灰!トング網に置きっぱになってるからー!」

白は思わず笑い出す。

その様子を落ち着いた二人は見ている。

白は言った。

「ありがとう。」

灰はいつも通り嫌み付く。

「聞きあきたわ。」

「俺らもいつも助けられてるからねー白に。」

二人は白の肩を叩きながらバーベキューの網の前へとつれていく。

美味しそうなお肉を頬張る三人。





 



ところで、、

なぜ白のしなければならない資料やパワーポイントの内容がわかったのかっていうことは、今回は内緒。

誰も知らなくていいこと。

黒と目があった灰はにっこり笑った。

白の電話の発信履歴には会社の同僚の名前がずらりと並んでいることに白はまだ気づかない。


夕日が沈んでいく。

三人の夜はこれからだ。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

処理中です...