愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん

文字の大きさ
34 / 76

33話 お泊まり

時間が過ぎるのは驚くほど早く、気づけば帰る時間になっていた。
俺たちは片づけを済ませ、ヨーゼフさんと孫の青年に挨拶する。

工房で長く過ごしたはずなのに、短く感じるほど濃い時間だった。
錬金術の話を重ねるうちに、最初の緊張もすっかり抜けて、気づけば言葉づかいまで砕けている。

「今日はありがとう、爺さん。ベンさんたちにも話して、また来られるようにするよ」

「大変なら泊まっていけばいい。次からはわしの仕事も少しずつ手伝ってもらうからの。よろしく頼むぞ」

因みに、爺さんの店には情報屋の客も数多く来るらしく、太一兄ちゃん──俺たちの兄の情報も何かしら入るかもしれない。それだけでも、ここに通う意味は十分ある。

「じゃーな歩夢!今度は遊びに行こうぜ!」

「うん、楽しみにしてる。」

歩夢も孫の青年とすっかり仲良くなったようで、名残惜しそうに手を振っていた。

店を出てしばらく歩くと、俺はアイザックの方を見る。

「アイザック、今日はありがとう。アイザックは退屈だったかもだけど、俺、来れてよかった」

俺は素直にそう礼を伝えた。
アイザックは肩をすくめて笑う。

「こんくらいどうってことねえさ。それに太一が通うなら、送り迎えもしてやる」

「…考えとく。そういえば今日、アイザックのとこ泊まるってベンさんと話したけど本当にいいのか?」

「ああ。今は友人が一人滞在してるが、まだ空き部屋がある。好きに使ってくれ」

ありがたくその言葉に甘え、歩夢もぺこりと頭を下げる。

ある程度必要なものの買い物を済ませ、アイザックの家に着くと、思っていたより広くて、整った家だった。
ワイルドな見た目とのギャップに思わず感心する。

それから夕飯を一緒に食べ、リビングで話していると──コンコン、と玄関の扉が鳴った。

「お、帰ってきたか。ちょっと出てくる。」

アイザックが立ち上がる。例の友人だろう。
俺が水を口に運んでいると、隣から小さな声がした。

「…うそ……」

歩夢の顔は驚きに固まっている。

「え、どうした歩夢?うそって…─敬遠」

問い返そうとしたタイミングで、アイザックが誰かを伴って戻ってきた。

「紹介するぜ。こいつはディラン・カーライル。俺の幼なじみだ」

白銀の髪に物腰が柔らかい青年が、穏やかに微笑む。

「はじめまして。気軽にディランと呼んでください。まさかアイザックに、こんな可愛らしい友人がいるとは」

「はじめまして。俺は太一で、こっちは弟の歩夢です」

「…………。」

あれ?
いつも俺の後に続いてしっかり挨拶する歩夢が、完全に固まっている。

「歩夢…?」と小声で呼ぶと、ビクッと肩を揺らし、慌てて名乗った。

理由を聞いても「なんでもない」と言う。
たしかに今日は朝から動きっぱなしだし、疲れが出たのかもしれない。

俺たちは早めに部屋へ向かい、休むことにした。

ただ──歩夢のあの反応だけは、胸の片隅に小さく引っかかったままだった。
感想 20

あなたにおすすめの小説

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

BLノベルの捨て駒になったからには

カギカッコ「」
BL
転生先は前世で妹から読まされたBLノベルの捨て駒だった。仕える主人命令である相手に毒を盛ったはいいものの、それがバレて全ての罪を被らされ獄中死するキャラ、それが僕シャーリーだ。ノベル通りに死にたくない僕はその元凶たる相手の坊ちゃまを避けようとしたんだけど、無理だった。だから仕方なく解毒知識を磨いて毒の盛られた皿を僕が食べてデッドエンドを回避しようとしたわけだけど、倒れた。しかしながら、その後から坊ちゃまの態度がおかしい。更には僕によって救われた相手も僕に会いにきて坊ちゃまと険悪そうで……。ノベル本来の受け担当キャラも登場し、周囲は賑やかに。はぁ、捨て駒だった僕は一体どこに向かうのか……。 これはこの先恋に発展するかもしれない青年たちのプロローグ。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

落ちこぼれオオカミ、種族違いのため群れを抜けます

椿
BL
とあるオオカミ獣人の村で、いつも虐げられている落ちこぼれの受けが村を出ようと決意したら、村をあげての一大緊急会議が開催される話。

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

兄の代わりに嫁いだら、結婚相手ではなく兄の婚約者だった公爵閣下に執着されました

なつめ
BL
名門伯爵家の次男である青年は、家の都合で本来嫁ぐはずだった兄の代わりに、遠方の名家へ“花婿”として送り込まれる。 屈辱的な身代わり婚のはずだった。冷遇され、義務だけ果たして静かに消える未来を覚悟していた。 けれど、彼を待っていたのは結婚相手その人ではなかった。 その男の隣には、かつて兄の婚約者だったという、美しく冷酷な公爵がいた。 弟をひと目見た瞬間、その公爵は気づいてしまう。 これは本来欲しかった相手ではない。なのに、目が離せない。 兄の代わりとして連れてこられたはずの弟へ、じわじわと執着を深めていく。 これは、祝福されるはずのない婚姻から始まる、 ねじれた執着と独占欲のBL。

繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました

こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。