愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん

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33話 お泊まり

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時間が過ぎるのは驚くほど早く、気づけば帰る時間になっていた。
俺たちは片づけを済ませ、ヨーゼフさんと孫の青年に挨拶する。

工房で長く過ごしたはずなのに、短く感じるほど濃い時間だった。
錬金術の話を重ねるうちに、最初の緊張もすっかり抜けて、気づけば言葉づかいまで砕けている。

「今日はありがとう、爺さん。ベンさんたちにも話して、また来られるようにするよ」

「大変なら泊まっていけばいい。次からはわしの仕事も少しずつ手伝ってもらうからの。よろしく頼むぞ」

因みに、爺さんの店には情報屋の客も数多く来るらしく、太一兄ちゃん──俺たちの兄の情報も何かしら入るかもしれない。それだけでも、ここに通う意味は十分ある。

「じゃーな歩夢!今度は遊びに行こうぜ!」

「うん、楽しみにしてる。」

歩夢も孫の青年とすっかり仲良くなったようで、名残惜しそうに手を振っていた。

店を出てしばらく歩くと、俺はアイザックの方を見る。

「アイザック、今日はありがとう。アイザックは退屈だったかもだけど、俺、来れてよかった」

俺は素直にそう礼を伝えた。
アイザックは肩をすくめて笑う。

「こんくらいどうってことねえさ。それに太一が通うなら、送り迎えもしてやる」

「…考えとく。そういえば今日、アイザックのとこ泊まるってベンさんと話したけど本当にいいのか?」

「ああ。今は友人が一人滞在してるが、まだ空き部屋がある。好きに使ってくれ」

ありがたくその言葉に甘え、歩夢もぺこりと頭を下げる。

ある程度必要なものの買い物を済ませ、アイザックの家に着くと、思っていたより広くて、整った家だった。
ワイルドな見た目とのギャップに思わず感心する。

それから夕飯を一緒に食べ、リビングで話していると──コンコン、と玄関の扉が鳴った。

「お、帰ってきたか。ちょっと出てくる。」

アイザックが立ち上がる。例の友人だろう。
俺が水を口に運んでいると、隣から小さな声がした。

「…うそ……」

歩夢の顔は驚きに固まっている。

「え、どうした歩夢?うそって…─敬遠」

問い返そうとしたタイミングで、アイザックが誰かを伴って戻ってきた。

「紹介するぜ。こいつはディラン・カーライル。俺の幼なじみだ」

白銀の髪に物腰が柔らかい青年が、穏やかに微笑む。

「はじめまして。気軽にディランと呼んでください。まさかアイザックに、こんな可愛らしい友人がいるとは」

「はじめまして。俺は太一で、こっちは弟の歩夢です」

「…………。」

あれ?
いつも俺の後に続いてしっかり挨拶する歩夢が、完全に固まっている。

「歩夢…?」と小声で呼ぶと、ビクッと肩を揺らし、慌てて名乗った。

理由を聞いても「なんでもない」と言う。
たしかに今日は朝から動きっぱなしだし、疲れが出たのかもしれない。

俺たちは早めに部屋へ向かい、休むことにした。

ただ──歩夢のあの反応だけは、胸の片隅に小さく引っかかったままだった。
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