天狐様のお袋の味

アキサクラ

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3章:命を救う真っ赤な苺ゼリー

28話:蓮華ちゃんの過去

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「おぬしの過去についてはワシも知ってるおる。 約束を破られることが一番嫌いな理由もな」

蓮華ちゃんは天狐様の言葉を聞くと目を見開く。

「…なんで、知ってるのよ」
「昔の相棒に教えてもらったんじゃよ。 なんでもおぬしと戦ったことがあるそうじゃ」
「そぉ。 狐と戦ったのは一度だけ。 とすると貴方の相棒は堕ちたのねぇ」
「強かったと言っておったよ。 フラフラ戻ってきては土産話をして去っていく。 気ままな奴じゃよ」
「ならわかるでしょう? 私は約束を破られるのが嫌いなのアイツのようにねぇ!」

怒りながら再度僕に向かって糸を伸ばすが、天狐様が間に入り思いっきり息を吸った。
同じ勢いで息を吐くとその息は真っ赤に燃え糸を燃やした。

「っなにをするのよ…!」
「確かに、おぬしの過去はひどく同情する。 嫌いになるのも頷ける。 だがのぉ? いい嘘、いい約束破りがあるんじゃよ」
「…!!」
「おぬしのために新汰が丹精込めて作ったゼリー。 これはおぬしを喜ばせるものじゃ。 いい嘘。 いやいいサプライズじゃっただろう?」

蓮華ちゃんは天狐様から僕の方を向く。
小さく溜め息をはくと口を小さく開いた。

「…今回だけよ。 今回だけ見逃してあげるから早くゼリーをもってきなさいよぉ」

ボスンと音を立て机の前に座り込む。
僕は急いで市販のゼリーを持っていき、僕が作っているゼリーはもうすぐ出来上がることを伝えた。
彼女は市販のゼリーを美味しそうに食べる。

「本当に美味しいわぁ! やっぱりこのプルプルがいいのよぉ!」

夢中になって食べている蓮華ちゃんを横目にコソっと天狐様に「蓮華ちゃんに何があったんですか?」と聞く。
天狐様が口を開ける前に蓮華ちゃんが口を開いた。

「私、とある木こりの男と駆け落ちする予定だったの」
「か、駆け落ちですか?」
「えぇ。 私は由緒正しい家の一人娘で許嫁がいたわぁ。 でも私は別の人に恋に落ちたの。 彼とは滝のある泉でよく逢瀬をしたわぁ。 結婚しようと約束して両親に合わせたの。 結果は勿論、許されなかったわぁ。 だから満月の夜泉で落ち合って駆け落ちすることにしたのよ」
「その相手が、こなかった…んですか?」
「いいえ、ちゃんと来たわよ」
「え! なら!」
「でも、泉に突き落とされたけどねぇ」
「…え」

蓮華ちゃんは昔を思い出すようにポツポツと話し出す。

「私たちが逢瀬した場所は浄蓮の滝って言ってねぇ。 絡新婦の伝承があった場所だったのよぉ。 随分昔に木こりの男が絡新婦が恋に落ちた話でねぇ。 天狗に結婚を認められに行くが、結局許可がでずに男は滝壺に消えていくの」
「え、木こりの男って…」
「そう。 私が恋をしたのはその男だったわ。 絡新婦は木こりに妖力を渡し、男は生き残っていた。 甘い生活を送っていたけど、どんどん絡新婦は衰弱していったの。 だから絡新婦に捧げる生贄が欲しかったのよ。 それにまんまと騙されて生贄にされたの」
「そんな…! 酷い…!」
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