スマートフォンのサダ子さん

タナトス

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困惑してるよ、サダ子さん

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「ああ、朝日とは何て素晴らしいんだろう」
部屋の窓から差し込む朝日を浴びながら、囮はまるでミュージカルでもしているかのように言う。
「数時間前まで、暗闇しかなかったこの地上を美しく照らし、地上に生きる僕達が今日を明るく生きれるようにしてくれる。朝日とは何て偉大なのだろう。でも、そんな朝日も……」
一旦言葉を止めた囮は、部屋の床をちらりと見た。
「この悪夢から覚まさせてはくれない」
ズーン、という効果音が聞こえてくるのではないかという程重く囮は肩を落とした。
「何を言ってるの?香?」
囮が視線を落とした床には、どう形容すればいいのか迷うような光景が広がっていた。
床には、自分のスマートフォンと夜食用に隠していたポテトチップスの袋が落ちていた。これだけならいいのだが、問題なのは囮を下の名前で呼ぶこの少女の存在だった。いや、果たしてこの不可思議な存在を少女と呼んでいいのか非常に迷うのだが、しかし見た目が少女そのものなので便宜上そう呼ぶ。
その少女の見た目は、汚れひとつない真っ白なワンピースに、足首まで届いている艶のある長い黒髪に、美少女と言っても良い程に整った顔立ち。ここまでなら、可愛らしい女の子が部屋にいるという、大変羨ましい話というだけで済む。しかし問題はここからである。まず体の大きさがおかしい。スマートフォンと同じくらいの大きさなのだ。つまり、手のひらサイズ。この時点で問題ありだがそれだけではない。
う~む、これをどう形容すれば人に伝わるのか、囮は迷っていたが、強いて例えるとすれば、あれだ、水に足首を突っ込んでいる少女、と言うべきか。とにかくそんな感じで、その少女はスマートフォンの画面と少女の足がくっついていて、その足が伸びることで移動しているようだ。もっとわかりやすい例を挙げるとすれば、人間に寄生する生物が出てくる漫画で、主人公の右手に寄生しているあの生物、みたいな感じか。
とにかく、そんな感じの少女が、床に寝転がりながら、ポテトチップスを美味しそうに食べていた。食べていたと言っても、体の大きさとポテトチップスの大きさがほぼ同じなのでそのままでは食べられないため、砕いてから食べている。
「何で頭を抱えてるの?」
ポテトチップスが底をついたのか、袋の中にあるポテトチップスのカスを指先で取って舐めながら、不思議そうな顔で彼女はいう。
「えっと、とりあえず、説明してくれるかな?」
囮はどんなに信じられないようなことも、全てを受け入れる覚悟を決めながら、彼女に聞くのだった。
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