命導の鴉

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第一章 輝葬師

序幕 「輝葬」  四

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 リーベルマンの記憶の映像が途絶え、目の前の景色が闇夜に戻る。

 輝核と骸を繋いでいた光の糸が切れ、輝核の激しい発光はおさまり穏やかに辺りを照らしていた。

 アスは自分の手を目の前に持ってきて握り、そして開いた。

 自分の意思で体が動く。意識が戻ったことを実感するとともに、衝撃的な記憶から解放されたことに安堵していた。

 額にうっすらと滲んでいた汗を拭い、大きく息を吐くと骸のそばにいる男に視線を戻した。

 輝核は男の掌の上でふわふわと漂っている。

 輝核を労わるようにしばらく見つめてから男は輝核に沿えていた手をすっと離した。

 輝核は静かにゆっくりと空に向かって上昇を始める。

 そして周りの木々の頭の高さを越えると一気に加速し南の空へ弧を描くように飛んでいった。

 光の残滓がその軌跡を描き、やがて闇夜に消えていく。

 輝核を失った骸は光の粒子となり、ほどなくして大気に吸収されるかの如く霧散した。

 衣服に付いていた血痕など、骸に紐づくものも同様に消失し、後にはリーベルマンが着用していた衣服や所持品だけが残った。

 男はふぅぅと大きく深呼吸すると、ジゼルとアスに声をかけた。

「無事輝葬は完了だ。遺品を整理して目録を作るから、二人は付近に遺品らしきものがないか念の為に確認してくれ」

 はいと返事をしてから、アスは機器に明かりを灯し一帯を照らす。

 アスとジゼルはその明かりが届く範囲で周囲の捜索を始めた。



「どうだ?周囲に遺品らしき物はありそうか?」

 捜索を開始してしばらく経った頃に男が二人に問いかけたが、アスもジゼルも頭を振って応えた。

「そうか。遺品の整理が終わったから二人ともこっちに来てくれ」

 アスは頷いて父の所に戻る。

 父の足元にある大きな鞄には、丁寧にたたまれた衣服と目録と書かれた紙が入れられていた。

「衣服類、空の鞄、指輪、家族の写真。・・・遺品はこれだけか。金目のものは見事に何もないな。やはり全部持ってかれたんだろう」

 父の少し寂しそうな声にアスは頷いた。

「どういうこと?」

 輝葬の際に記憶を見ることができないジゼルは怪訝な顔をして父に問いかける。

「ああ、さっきの輝葬の際に金銭目当ての野盗らしき連中がリーベルマンをこの場所で襲った映像が見えたんだ。多分彼はその際に命を落としたんだろう」

「そっか・・・」

 ジゼルは悲しそうな表情をすると、骸があった場所に視線を向けた。

 同じくその場所を眺めていたアスは、先ほどの悲痛な声で懇願するリーベルマンの記憶を思い出し、心が痛むと同時に呼吸が荒くなっていた。

「大丈夫?」

 その様子に気づいたジゼルが、アスの肩にそっと手をあてて顔を覗き込む。

 心配するジゼルの顔をみて、アスは次第に落ち着きを取り戻した。

「うん、大丈夫だよ。ありがとうお姉ちゃん」

 アスの呼吸が落ち着くのを確認するとジゼルはにっこり微笑み、アスの頭をなでた。

 そんな二人のやりとりを見ていた男が、二人に穏やかな声をかける。

「野営地に戻ろうか」

 二人は、父である長身の男を見て静かに頷いた。
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