命導の鴉

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第一章 輝葬師

序幕 「輝葬」  五

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 野営地は今ほど輝葬を行った場所から 十分少々歩いた所にあった。

 山の中にしては少し開けた場所で、上を見上げれば星空が美しかった。

 日中に設営しておいたテントが見えてくると、安全確認のため父が先行してテントに近づく。

 しばらくして危険がないことが確認できたようで父は二人を呼び寄せた。

 三人はテントに入ると、携行していた荷物をおろし一息ついた。

 アスが発光機器を用いて灯りをつけると、テント内は淡い光に包まれた。

 続いてアスは、テント内の荷物から三人分の鉄製のカップを取り出すと、水筒の水を注いで父と姉にそれぞれカップを渡した。

「ありがとう」

 ジゼルは、渡されたカップの水を少し口に入れ喉を潤す。

「明日は日が昇ったら早々に下山を開始しようと思ってるから、二人とも早めに休みなさい」

「はーい」

 ジゼルは、父の言葉に返事をすると残った水を一気に飲み干した。

 そして熊の毛皮で作られた毛布を荷物から取り出して包まると、手をヒラヒラさせながらおやすみと言って早々に寝入ってしまった。

 アスも寝るために毛布を荷物から取り出す。

 もう一つ毛布を取り出し、父に渡そうとすると、父がアスの服の袖を軽く引っ張り顔を近づけてきた。

「今日の輝葬、記憶はどこまで見えた?」

 父がささやくような声でそう尋ねてくる。

 アスは見えた記憶を少し頭で整理してから、今回見えた記憶の内容を全て伝えた。

 黙って話を聞いていた父は、アスの話を聞き終わると神妙な面持ちとなり、腕組みをして考え込むような仕草を見せた。

「お父さん?」

 次の言葉を待っていたが、少し間が空いたため、たまらずアスは声をかけた。

「ん?ああ、すまない。それで、今日は輝核の流れをしっかり捉えられたか?」

「実は、今回も記憶の映像に意識が集中してしまって、あまり・・・」

「そうか・・・。慣れてくると記憶を見ながらも意識は保てるようになってくるよ。輝葬中に輝核の流れをしっかり捉えられるようになるまで、もうしばらくは自分の意識を保つ練習を続けよう」

 アスは静かにコクリと頷いたが、これまでの輝葬では意識を保つことが全く出来ず、その糸口さえも掴めていないことから、自身の要領の悪さに少し歯痒さを感じていた。

 不安そうな顔をするアスの頭を父が優しくポンポンと叩く。

「焦らなくてもいいよ」

「・・・うん、でも次こそは上手くできるといいな」

「そうだな、少なくとも今日よりは上手くいくさ。・・・すまんな、寝る前に時間をとって。そろそろ明日に備えて寝よう」

 父はカップの水を喉に流し込み、寝床の脇に空のカップを置いた。

「おやすみ、アス」

 父が先ほど受け取った毛布をきて横になる。

「おやすみなさい」

 アスは明かりを消し、皆と同じく毛布に包まって床についた。

 ふと、リーベルマンの記憶の話をした時の父の神妙な顔を思い出した。

 あれはなんだったのだろうかと少し気になったが、疲れがたまっていたのか暗闇の中でアスはじき眠りについた。



 翌朝、アスが目を覚まし周りを見ると、二人は既に起きているようで、寝床は片付けられていた。

 寝起きの頭を覚醒させるために体を伸ばす。ふっと力を抜くと同時にあくびが出た。

 先程まで体を温めていた毛布をたたみ、荷の中に片付けるとテントの外に出た。朝日が眩しい。

「おはよ、よく眠れた?」

 焚き火を起こし、そこで朝食の準備をするジゼルが明るい調子で挨拶をした。

「うん、少し寝坊しちゃったね。手伝うよ。お父さんは?」

「少し奥にある沢に水を汲みにいったら魚がいたみたいで、それを捕ってくるって。さっき網持って出かけたよ」

「そうなんだ。・・・魚、食べたいね。捕れるといいな」

「そうだね。今回の捜索が始まってから食べてないもんね。期待して待ってよ」

 朝食の準備を終えると、二人はすぐ出発できるようにテントをたたみ、荷物をまとめた。

 ちょうど荷物をまとめ終わる頃に父が戻ってきた。
 得意気な表情をしているところをみると釣果は期待できそうだった。

「ふっふっふ、なんとか魚三尾とれたよ。これで一人一尾食べれるな。あと道中でみつけたキノコもスープに入れて食べよう。」

 ここ数日は干し肉などの乾物ばかりだったこともあって、成果を聞いたアスとジゼルは互いに喜びの声をあげた。

 早速、アスはその魚を焼き、ジゼルは準備しておいたスープにキノコを入れる。

 テキパキと配膳を済ませ、三人でそれらを食べると、調理器材を片付け、焚き火を消した。

「久々の魚、美味しかったね~」

「うん、そうだね。本当に美味しかった」

 先ほど食べた魚の余韻に浸る姉にアスはニッコリして頷いた。

「それはよかった。獲ってきた甲斐があったよ。さぁ準備も整ったし下山を開始するか」

 魚でご満悦の三人は揃って麓を目指し、山道を歩き始めた。
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