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第三章 受け継がれるもの
四幕 「赤の閃光」 一
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地下道を進むディオニージ達一行が礼拝堂の次の広間に着いた時、異変を感じ取ったアスが緊張した面持ちを見せた。
「どうしたアス?」
アスの表情が変化したことに気付いたエラルがキョトンとした顔で尋ねる。
「輝波だ。後ろから迫ってくる」
「えっ!?」
その言葉に一行の面持ちも一気に固まった。
「黒フレアが追いついたということでしょうか・・・」
皆の頭に浮かんだ不安をフォンセが代弁するかのように呟くが、アスは顔を横に振る。
「黒フレア程の圧は感じませんので多分違うと思います。どちらかというと通常の白いフレアに近いような・・・」
「どういうことだ?後ろから黒フレアじゃなくて白フレアが来るなんて・・・」
ディオニージが訝しげな表情で首を傾げる。
「分かりませんがすごい速さで迫っています」
「むぅ、黒フレアじゃないってことはフロイラン達が破られたわけじゃないということか。それとも何か別の要因があるのか。駄目だな、ここで考えてもなんとも分からない。どうするフォンセ?」
「・・・状況は分かりませんが危険が迫っているのは間違いないようですので、皆様はこのまま避難してください。私がなんとか足止めを試みます」
フォンセが腰に帯びた二本のダガーを鞘から抜いた。
「・・・駄目だ。それはフォンセ以外を少しでも延命させるための方法だろう?俺が聞きたいのはフォンセ、君も含めた全員の生存率が一番高い方法だ」
「しかし・・・」
「君は志征じゃないし少し心得があるといってもフレアと戦える程ではない。少しずつこちらの戦力が削られていくような案は悪手としか思えない。今この場の生命の価値に優劣をつけず、全ての戦力を使った場合の最善の手を言ってくれ。それでも先ほどの方法が最善だと言うならその案でいく」
ディオニージの真剣な眼差しを受けて、フォンセは深く頭を下げる。そして意を決したような表情で代案を話し始めた。
「・・・ディオニージ様、シオン様はこのまま退避いただき、残りの3名で迎撃します。エラル様の実力は存じておりますし、アス様の実力もヴェルノ様から伺っております。ですが、それでも圧倒的不利ですのでしばらくの時間稼ぎくらいしか出来ないでしょう」
「そうか、俺は戦力外か・・・」
ディオニージが落胆した表情を見せるとフォンセがクスクスと笑う。
「失礼ながらディオニージ様、最低限、私よりは強くあられませんと」
「本当に失礼だな。・・・まぁいい、とりあえずはそれが最善ということか。だが志征を残すのとは訳が違う。非戦闘要員であるフォンセ、エラル、アスの三人には命を賭けさせて俺は逃げるってのは流石に飲めない。何が出来るってわけでもないが今回ばかりは俺も残るぞ」
「・・・はい、そう仰ると思いました。残念ながら今回はその決意を変える理由が私には思い浮かびません。ですので、残るにあたって条件を一つだけ提示いたします。ここにはディオニージ様を護衛するだけの戦力はございませんので、最後まで前線には立たず後方支援に徹すること。これだけは必ずお守りくださいませ」
「・・・まぁ俺の実力ならしょうがないな。それで承知した。エラル、アス、すまないが力を貸してくれ。皆でこの難局を乗り切ろう」
「うん、任せてよ兄様!」
エラルが得意顔で剣に魔力を込め始めると、その刀身が赤く染まり始める。
「これが終わったらアスの剣にも魔力を注入するからちょっと待ってて」
「うん、ありがとう」
アスとエラルが着々と準備を進める中、フォンセがシオンに視線を移す。
「シオン様はディオニージ様と共に後方へ」
「私は・・・」
「申し訳ありません。一般人であるシオン様を危険に晒してしまったことをご容赦くださいませ」
フォンセに言葉を遮られたシオンは、喋ろうとした内容をそのまま飲み込み、コクンと頷いてディオニージの側に移動した。
「ディオニージ様も魔操をご準備ください」
フォンセに促されたディオニージは分かったと頷いてから剣を抜き、魔力を込め始める。その様子を見てからフォンセもダガーに魔力を込め始めた。
二人の魔錬刃が徐々に深緑に染まる。
「やっぱり剣は苦手だな。全然しっくりとこない」
ディオニージが自身の持つ剣の刀身を見つめながら緊張感のない声でそう呟くと、フォンセが苦笑いをしながら集中してくださいませと声をかけた。
少しして準備が整った一行は、フレアが乗り込んでくるであろうと想定される地下通路と大広間を結ぶ扉を前方に見据え、アス、エラルを前衛、中衛にフォンセ、後衛にディオニージ、シオンといった形で広間に戦列を組んだ。
皆の体はアスが生成した衛浄魔操のクッションで包み込まれている
「すぐそこまで来ています!」
真っ直ぐに扉を見据えるアスの緊張した声に連動するように皆の体も強張る。
次第に扉の向こう側から体の芯に響くような重たい足音が聞こえてきた。
その重たい足音は想像を超える速さで、アス達のいる広間に迫ってくる。そして、扉の手前で足音がピタッと止まった。
自然と剣を握るアスの手には力が入り、革手袋が絞られていく感触が手を伝ってくる
静寂の中、ギィっと音を立てながら目の前の扉がゆっくりと開く。皆の前に、広間へ侵入してくる白フレアの姿が現れた。
数ヶ月前にハマサ村で見た時と変わらない白い逆三角形の巨大で歪な体躯と禍々しい悪意。
だが、すぐにその姿以上に皆を戦慄させる事実が明らかとなる。
動揺の色を隠せないアスが小さな声で呟いた。
「に、二体いる・・・」
「どうしたアス?」
アスの表情が変化したことに気付いたエラルがキョトンとした顔で尋ねる。
「輝波だ。後ろから迫ってくる」
「えっ!?」
その言葉に一行の面持ちも一気に固まった。
「黒フレアが追いついたということでしょうか・・・」
皆の頭に浮かんだ不安をフォンセが代弁するかのように呟くが、アスは顔を横に振る。
「黒フレア程の圧は感じませんので多分違うと思います。どちらかというと通常の白いフレアに近いような・・・」
「どういうことだ?後ろから黒フレアじゃなくて白フレアが来るなんて・・・」
ディオニージが訝しげな表情で首を傾げる。
「分かりませんがすごい速さで迫っています」
「むぅ、黒フレアじゃないってことはフロイラン達が破られたわけじゃないということか。それとも何か別の要因があるのか。駄目だな、ここで考えてもなんとも分からない。どうするフォンセ?」
「・・・状況は分かりませんが危険が迫っているのは間違いないようですので、皆様はこのまま避難してください。私がなんとか足止めを試みます」
フォンセが腰に帯びた二本のダガーを鞘から抜いた。
「・・・駄目だ。それはフォンセ以外を少しでも延命させるための方法だろう?俺が聞きたいのはフォンセ、君も含めた全員の生存率が一番高い方法だ」
「しかし・・・」
「君は志征じゃないし少し心得があるといってもフレアと戦える程ではない。少しずつこちらの戦力が削られていくような案は悪手としか思えない。今この場の生命の価値に優劣をつけず、全ての戦力を使った場合の最善の手を言ってくれ。それでも先ほどの方法が最善だと言うならその案でいく」
ディオニージの真剣な眼差しを受けて、フォンセは深く頭を下げる。そして意を決したような表情で代案を話し始めた。
「・・・ディオニージ様、シオン様はこのまま退避いただき、残りの3名で迎撃します。エラル様の実力は存じておりますし、アス様の実力もヴェルノ様から伺っております。ですが、それでも圧倒的不利ですのでしばらくの時間稼ぎくらいしか出来ないでしょう」
「そうか、俺は戦力外か・・・」
ディオニージが落胆した表情を見せるとフォンセがクスクスと笑う。
「失礼ながらディオニージ様、最低限、私よりは強くあられませんと」
「本当に失礼だな。・・・まぁいい、とりあえずはそれが最善ということか。だが志征を残すのとは訳が違う。非戦闘要員であるフォンセ、エラル、アスの三人には命を賭けさせて俺は逃げるってのは流石に飲めない。何が出来るってわけでもないが今回ばかりは俺も残るぞ」
「・・・はい、そう仰ると思いました。残念ながら今回はその決意を変える理由が私には思い浮かびません。ですので、残るにあたって条件を一つだけ提示いたします。ここにはディオニージ様を護衛するだけの戦力はございませんので、最後まで前線には立たず後方支援に徹すること。これだけは必ずお守りくださいませ」
「・・・まぁ俺の実力ならしょうがないな。それで承知した。エラル、アス、すまないが力を貸してくれ。皆でこの難局を乗り切ろう」
「うん、任せてよ兄様!」
エラルが得意顔で剣に魔力を込め始めると、その刀身が赤く染まり始める。
「これが終わったらアスの剣にも魔力を注入するからちょっと待ってて」
「うん、ありがとう」
アスとエラルが着々と準備を進める中、フォンセがシオンに視線を移す。
「シオン様はディオニージ様と共に後方へ」
「私は・・・」
「申し訳ありません。一般人であるシオン様を危険に晒してしまったことをご容赦くださいませ」
フォンセに言葉を遮られたシオンは、喋ろうとした内容をそのまま飲み込み、コクンと頷いてディオニージの側に移動した。
「ディオニージ様も魔操をご準備ください」
フォンセに促されたディオニージは分かったと頷いてから剣を抜き、魔力を込め始める。その様子を見てからフォンセもダガーに魔力を込め始めた。
二人の魔錬刃が徐々に深緑に染まる。
「やっぱり剣は苦手だな。全然しっくりとこない」
ディオニージが自身の持つ剣の刀身を見つめながら緊張感のない声でそう呟くと、フォンセが苦笑いをしながら集中してくださいませと声をかけた。
少しして準備が整った一行は、フレアが乗り込んでくるであろうと想定される地下通路と大広間を結ぶ扉を前方に見据え、アス、エラルを前衛、中衛にフォンセ、後衛にディオニージ、シオンといった形で広間に戦列を組んだ。
皆の体はアスが生成した衛浄魔操のクッションで包み込まれている
「すぐそこまで来ています!」
真っ直ぐに扉を見据えるアスの緊張した声に連動するように皆の体も強張る。
次第に扉の向こう側から体の芯に響くような重たい足音が聞こえてきた。
その重たい足音は想像を超える速さで、アス達のいる広間に迫ってくる。そして、扉の手前で足音がピタッと止まった。
自然と剣を握るアスの手には力が入り、革手袋が絞られていく感触が手を伝ってくる
静寂の中、ギィっと音を立てながら目の前の扉がゆっくりと開く。皆の前に、広間へ侵入してくる白フレアの姿が現れた。
数ヶ月前にハマサ村で見た時と変わらない白い逆三角形の巨大で歪な体躯と禍々しい悪意。
だが、すぐにその姿以上に皆を戦慄させる事実が明らかとなる。
動揺の色を隠せないアスが小さな声で呟いた。
「に、二体いる・・・」
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