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紅の剣士と恐怖の剣
クロウ・クルワッハの手の中で…
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この剣【ヘルギ】は、コナハト国の王妃が村を守る英雄、ゲインに托した神剣である。
しかし、敵を恐怖に陥れ、無抵抗の状態の敵を斬る【ヘルギ】の特性を嫌ったゲインが、友人の神父に教会で管理してもらうために預けていたのだ。
奇しくも、父が嫌った剣を、子が受け継いだ……しかも【ヘルギ】はガイエンを選んだ。
ガイエンは、母から貰ったエストとお揃いのペンダントを首からむしるように取り【ヘルギ】の落ちていた場所に投げ捨てた。
そして【ヘルギ】を持ち、再び村の中心を目指して歩き始めるガイエン……
その顔からは哀しみの表情は消え、復讐の鬼とかしたガイエンの姿があった……
ガイエンが村の中心に戻ってきた時、村は騒然としていた。
教会と逆側の村の外れにヨトゥン軍が迫っていた。
ゲインが死んだ事を知って、進軍を始めたのだ!!
今まで指揮をとっていたゲインがいない事で、村の剣士は烏合の衆となっていた。
規律のとれていない村の剣士は、ヨトゥンに各個撃破されていく。
1対1でヨトゥンに勝てる訳もなかった……
ガイエンはその様子を見ても、村を守って戦う気は微塵もなかった。
徐々に、村に火の手が上がる。
火の手から逃れようと、二人の女の子がガイエンの前を走り去ろうとした。
エストとティアだ。
「おい」
ガイエンがエストを呼び止める。
「ガイエン、貴方も逃げなさい!!このままじゃ火に囲まれるわよ!!」
ガイエンに気付いたエストは、少し大きめな声で言った。
しかし、ガイエンは火など気にしていない。
大好きなエストから、後悔の言葉、懺悔の言葉を言ってもらいたかったのかもしれない。
「エスト……なんで親父は死ななきゃいけなかった……?」
ガイエンは、エストに近付きながら問う。
「それは……村を裏切ったんだから仕方ないじゃない!私のお父さんだって殺されたんだから……」
エストから期待と違う言葉を聞き、ガイエンは頭に血が上るのを感じた。
ガイエンの様子が変わった事をエストは感じ、少し後退りする。
「オレの親父や母さんが殺された時、何を感じた??守ってきた村人に囲まれて殺された気持ちが分かるか??」
ガイエンはエストに【ヘルギ】の剣先を向けた!
「いや、ガイエン止めて……」
エストは、尻もちをついてしまう。
足は、ガクガク震えている。
「ガイエン兄ちゃん!!何をする気??これ以上はヤダよぅ!!」
半ベソをかきながら…恐怖でその場から動けないティアが、勇気を絞って声を出した。
しかしガイエンは、その言葉に耳を貸さず、エストに近づく。
「止めて………ガイエン」
もはやエストは、動く事さえ出来なかった……
「親父と母さんの味わった恐怖を感じながら……死ね!!」
その言葉を発した瞬間、ガイエンの心の中で何かが弾け飛んだ。
ガイエンは、エストの胸に躊躇なく【ヘルギ】を突き刺す!
その瞳に、一瞬首もとの深紅のペンダントの輝きを見る。
「いやぁぁぁ!!」
ティアは涙を流しながら発狂した。
その声を聞いたガイエンは、少しだけ悲しそうな表情を浮かべ…しかし、無慈悲に【ヘルギ】をエストの胸から引き抜き、倒れるエストを見ようともせず火の手の上がる方向へ歩いていった。
逃げる村人を切り裂きながら……
やがてガイエンは村人の返り血で真っ赤になっていた。
その姿を見たクロウ・クルワッハは、ガイエンに声をかけた。
「人間の醜さを見ただろう。我々と共に来ないか?」
ガイエンは頷く事しか出来なかった………
クロウ・クルワッハはゲインの子、ガイエンの剣の才能も見抜いていた。
厄介なゲインを殺し、ガイエンも手に入れたクロウ・クルワッハ。
ガイエンは心に深い傷を残し、ヨトゥンと共に歩く事を選択する。
クロウ・クルワッハの戦術によって引き起こされた事件という事に、ガイエンは気付かずに……
しかし、敵を恐怖に陥れ、無抵抗の状態の敵を斬る【ヘルギ】の特性を嫌ったゲインが、友人の神父に教会で管理してもらうために預けていたのだ。
奇しくも、父が嫌った剣を、子が受け継いだ……しかも【ヘルギ】はガイエンを選んだ。
ガイエンは、母から貰ったエストとお揃いのペンダントを首からむしるように取り【ヘルギ】の落ちていた場所に投げ捨てた。
そして【ヘルギ】を持ち、再び村の中心を目指して歩き始めるガイエン……
その顔からは哀しみの表情は消え、復讐の鬼とかしたガイエンの姿があった……
ガイエンが村の中心に戻ってきた時、村は騒然としていた。
教会と逆側の村の外れにヨトゥン軍が迫っていた。
ゲインが死んだ事を知って、進軍を始めたのだ!!
今まで指揮をとっていたゲインがいない事で、村の剣士は烏合の衆となっていた。
規律のとれていない村の剣士は、ヨトゥンに各個撃破されていく。
1対1でヨトゥンに勝てる訳もなかった……
ガイエンはその様子を見ても、村を守って戦う気は微塵もなかった。
徐々に、村に火の手が上がる。
火の手から逃れようと、二人の女の子がガイエンの前を走り去ろうとした。
エストとティアだ。
「おい」
ガイエンがエストを呼び止める。
「ガイエン、貴方も逃げなさい!!このままじゃ火に囲まれるわよ!!」
ガイエンに気付いたエストは、少し大きめな声で言った。
しかし、ガイエンは火など気にしていない。
大好きなエストから、後悔の言葉、懺悔の言葉を言ってもらいたかったのかもしれない。
「エスト……なんで親父は死ななきゃいけなかった……?」
ガイエンは、エストに近付きながら問う。
「それは……村を裏切ったんだから仕方ないじゃない!私のお父さんだって殺されたんだから……」
エストから期待と違う言葉を聞き、ガイエンは頭に血が上るのを感じた。
ガイエンの様子が変わった事をエストは感じ、少し後退りする。
「オレの親父や母さんが殺された時、何を感じた??守ってきた村人に囲まれて殺された気持ちが分かるか??」
ガイエンはエストに【ヘルギ】の剣先を向けた!
「いや、ガイエン止めて……」
エストは、尻もちをついてしまう。
足は、ガクガク震えている。
「ガイエン兄ちゃん!!何をする気??これ以上はヤダよぅ!!」
半ベソをかきながら…恐怖でその場から動けないティアが、勇気を絞って声を出した。
しかしガイエンは、その言葉に耳を貸さず、エストに近づく。
「止めて………ガイエン」
もはやエストは、動く事さえ出来なかった……
「親父と母さんの味わった恐怖を感じながら……死ね!!」
その言葉を発した瞬間、ガイエンの心の中で何かが弾け飛んだ。
ガイエンは、エストの胸に躊躇なく【ヘルギ】を突き刺す!
その瞳に、一瞬首もとの深紅のペンダントの輝きを見る。
「いやぁぁぁ!!」
ティアは涙を流しながら発狂した。
その声を聞いたガイエンは、少しだけ悲しそうな表情を浮かべ…しかし、無慈悲に【ヘルギ】をエストの胸から引き抜き、倒れるエストを見ようともせず火の手の上がる方向へ歩いていった。
逃げる村人を切り裂きながら……
やがてガイエンは村人の返り血で真っ赤になっていた。
その姿を見たクロウ・クルワッハは、ガイエンに声をかけた。
「人間の醜さを見ただろう。我々と共に来ないか?」
ガイエンは頷く事しか出来なかった………
クロウ・クルワッハはゲインの子、ガイエンの剣の才能も見抜いていた。
厄介なゲインを殺し、ガイエンも手に入れたクロウ・クルワッハ。
ガイエンは心に深い傷を残し、ヨトゥンと共に歩く事を選択する。
クロウ・クルワッハの戦術によって引き起こされた事件という事に、ガイエンは気付かずに……
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