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騎士への道
神話の世界へ2
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「あんた確か、一真の通ってた看護学校の同級生……だったよな? 一真が学校を休んでいるからって、何回か家に来ていたが……」
「とりあえず、嘘もついたし真実も話したし……それでも、納得してなかったもんねー」
尻餅をついているポニーテールの女性を見下ろしながら、航太と絵美が呆れながら声を出す。
「嘘を言って信じてもらえなくて、だから真実を言ったら余計に疑われたんでしょ? こんな嘘みたいな真実なんて、誰も信じないわよ……真実を言った後に嘘を言えば、まだ信じてもらえたかもね」
智美は航太達に冷たい視線を向けながら、お尻を水につけた女性に手を差し伸べる。
「さ、腰もお尻も冷えちゃうわ……とりあえず立ち上がって、水から出ましょ」
智美に導かれるままに、よろけながらポニーテールの女性は立ち上がり、陸に上がった。
「ま、これで分かったろ? 異世界って言っていいか分かんねぇけど、地球には裏の世界……神が創った世界が存在する。んで、一真は神様の生まれ変わりだ」
「って、言われても……ねぇ。カズちゃんが光の神様の生まれ変わりなんて、異世界があるって事よりも信じられないんじゃない? 私だって、あの戦いを見てなかったら信じてないかもしれないし……」
航太と絵美の言葉は聞こえているのか……ポニーテールの女性は、肩を震わせている。
「大丈夫……この場所からなら、元の場所に直ぐに戻れるわ。カズちゃんは、私達が必ず連れて帰るから。時間はかかっちゃうかもしれないけど……」
その肩を優しく抱いた智美は、それ以上に優しい口調でポニーテールの女性に声をかけた。
「私……まだ信じられない……だって一真君とは、数ヶ月前まで一緒に勉強していたんだよ……本気で心配して、家を訪ねたら訳の分からない嘘をつかれて……でも、それっポイ世界が本当にあって……もう、訳が分からない!」
ポニーテールの女性は、泣き出してしまった。
このポニーテールの女性の名は鳳美羽(おおとり みはね)。
一真と同じ看護学校に通い、同じ実習グループで学んでいた。
夏休み後、真面目に学習していた一真が急に学校に来なくなった事を心配して、何度か航太の家を訪ねていたらしい。
航太が美羽と始めて会ったのは、神話の世界から戻った数日後、家で調べ物をしていた時。
家に訪ねて来た美羽は、航太の両親が説明していた「一真は病気」という話を信じていなかった。
病気で入院するなら、看護学校が附属している病院の筈である。
総合病院なのだから、感染症でも骨折でも、どんな病気でも対応出来るし、何より田舎なので入院出来る病院なんて看護学校が附属している病院以外ありえない。
始めて、両親以外の人から話が聞ける……そんな期待は裏切られた。
まずは病気だと両親と同じ事を言い、そんな筈はないと理由を説明すると、今度は神話の世界で心を失ったとか訳の分からない事を言いだし、しまいには神様の生まれ変わりだと……
埒があがらない……そう感じた美羽は、航太達の後を付ける事にした。
このまま休めば、一真は単位が足りなくて再実習になってしまう。
美羽は一真と同じ実習グループで何回も助けてもらっていたし、なにより看護の実習は辛い為、なんとかしてあげいという気持ちが強かった。
その結果が、今の状況だ。
美羽の頭は混乱し、目からは涙が零れた。
その時……
「航ちゃん! 後ろ!」
絵美の大きな声が響き渡る。
その直後……
ガァキキキキィィィィン!
聞いた事もないような激しい金属音が、美羽の耳を劈いた。
「三人がかりで女性を襲ってるから、ただの雑魚かと思ったが……なかなかやるな!」
「不意打ちしてくる卑怯者が言う事かよ! 舐めやがって!」
襲い掛かってきた白い鎧の男の剣撃をエアの剣で受け止めた航太は、鋭い風を発生させる。
その風に煽られて吹き飛んだ白い鎧の男……ガラードは、空中で体勢を整えて、一回転して足から上手く着地した。
「チンピラが神剣を持っているのか? 女性を助けるついでだ。神剣も回収してやる」
「智美、看護学生さんを頼む! 一真の学友に、傷を負わせる訳にはいかない! 絵美、やれるか?」
天沼矛をクルクルと何回か振り回した後、絵美は攻撃体勢をとる。
「何が……」
「ごめんね。コッチの世界は、日本みたいに平和じゃないのよ……でも、あなたは私が守るから……」
草薙剣と天叢雲剣を抜いた智美を見て、ガラードは更に勘違いをした。
「人質か……とんだ外道共だな! だが、これで手を抜いてやる必要も無くなった! カリバーン、やるぞ!」
黄金の剣に白い盾を携えたガラードは、大地を蹴った……
「とりあえず、嘘もついたし真実も話したし……それでも、納得してなかったもんねー」
尻餅をついているポニーテールの女性を見下ろしながら、航太と絵美が呆れながら声を出す。
「嘘を言って信じてもらえなくて、だから真実を言ったら余計に疑われたんでしょ? こんな嘘みたいな真実なんて、誰も信じないわよ……真実を言った後に嘘を言えば、まだ信じてもらえたかもね」
智美は航太達に冷たい視線を向けながら、お尻を水につけた女性に手を差し伸べる。
「さ、腰もお尻も冷えちゃうわ……とりあえず立ち上がって、水から出ましょ」
智美に導かれるままに、よろけながらポニーテールの女性は立ち上がり、陸に上がった。
「ま、これで分かったろ? 異世界って言っていいか分かんねぇけど、地球には裏の世界……神が創った世界が存在する。んで、一真は神様の生まれ変わりだ」
「って、言われても……ねぇ。カズちゃんが光の神様の生まれ変わりなんて、異世界があるって事よりも信じられないんじゃない? 私だって、あの戦いを見てなかったら信じてないかもしれないし……」
航太と絵美の言葉は聞こえているのか……ポニーテールの女性は、肩を震わせている。
「大丈夫……この場所からなら、元の場所に直ぐに戻れるわ。カズちゃんは、私達が必ず連れて帰るから。時間はかかっちゃうかもしれないけど……」
その肩を優しく抱いた智美は、それ以上に優しい口調でポニーテールの女性に声をかけた。
「私……まだ信じられない……だって一真君とは、数ヶ月前まで一緒に勉強していたんだよ……本気で心配して、家を訪ねたら訳の分からない嘘をつかれて……でも、それっポイ世界が本当にあって……もう、訳が分からない!」
ポニーテールの女性は、泣き出してしまった。
このポニーテールの女性の名は鳳美羽(おおとり みはね)。
一真と同じ看護学校に通い、同じ実習グループで学んでいた。
夏休み後、真面目に学習していた一真が急に学校に来なくなった事を心配して、何度か航太の家を訪ねていたらしい。
航太が美羽と始めて会ったのは、神話の世界から戻った数日後、家で調べ物をしていた時。
家に訪ねて来た美羽は、航太の両親が説明していた「一真は病気」という話を信じていなかった。
病気で入院するなら、看護学校が附属している病院の筈である。
総合病院なのだから、感染症でも骨折でも、どんな病気でも対応出来るし、何より田舎なので入院出来る病院なんて看護学校が附属している病院以外ありえない。
始めて、両親以外の人から話が聞ける……そんな期待は裏切られた。
まずは病気だと両親と同じ事を言い、そんな筈はないと理由を説明すると、今度は神話の世界で心を失ったとか訳の分からない事を言いだし、しまいには神様の生まれ変わりだと……
埒があがらない……そう感じた美羽は、航太達の後を付ける事にした。
このまま休めば、一真は単位が足りなくて再実習になってしまう。
美羽は一真と同じ実習グループで何回も助けてもらっていたし、なにより看護の実習は辛い為、なんとかしてあげいという気持ちが強かった。
その結果が、今の状況だ。
美羽の頭は混乱し、目からは涙が零れた。
その時……
「航ちゃん! 後ろ!」
絵美の大きな声が響き渡る。
その直後……
ガァキキキキィィィィン!
聞いた事もないような激しい金属音が、美羽の耳を劈いた。
「三人がかりで女性を襲ってるから、ただの雑魚かと思ったが……なかなかやるな!」
「不意打ちしてくる卑怯者が言う事かよ! 舐めやがって!」
襲い掛かってきた白い鎧の男の剣撃をエアの剣で受け止めた航太は、鋭い風を発生させる。
その風に煽られて吹き飛んだ白い鎧の男……ガラードは、空中で体勢を整えて、一回転して足から上手く着地した。
「チンピラが神剣を持っているのか? 女性を助けるついでだ。神剣も回収してやる」
「智美、看護学生さんを頼む! 一真の学友に、傷を負わせる訳にはいかない! 絵美、やれるか?」
天沼矛をクルクルと何回か振り回した後、絵美は攻撃体勢をとる。
「何が……」
「ごめんね。コッチの世界は、日本みたいに平和じゃないのよ……でも、あなたは私が守るから……」
草薙剣と天叢雲剣を抜いた智美を見て、ガラードは更に勘違いをした。
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黄金の剣に白い盾を携えたガラードは、大地を蹴った……
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