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騎士への道
王立ベルヘイム騎士養成学校13
しおりを挟む「んで、集合場所ってのは本当にココなのか? 崖に囲まれてる、こんな危険な場所をなんで選んだんだ?」
「さぁな……だが、ココで間違いない。既に奴隷の人達も集まって来てるしな……」
イングリスの視線の先には、確かに数10人程の人影が見える。
崖の間に挟まれ、人が横に6人程度しか並べない場所に、続々と人が集まり始めていた。
「嫌な予感しかしねぇな……イングリス、オレは崖の上を見てくる。まさかとは思うが、こんな襲撃しやすい地形に人を集めるなんて普通じゃない」
イングリスは頷くと、崖と城壁の影に身を隠す。
航太達が行動を開始した後も、奴隷の人達の数は増していく。
月明かりしかない暗闇の中を崖の頂上に向けて走る航太の前を、微かな灯が数個移動していた。
航太は咄嗟に叢に身を隠し、その灯の動きを目で追う。
灯は崖の上の方向に向かっており、カチャカチャと金属が擦り合うような音も聞こえる。
「崖の上に向かう部隊がある。聖鳳……じゃ、ないよな。奴隷とはいえ、まさか自国の民を攻撃する事はないだろうから……奴隷を解放しようとしている聖凰の部隊を討つ為って考えるのが普通だよな……多分」
航太は小声を出して自分の考えを確認すると、灯……松明が動く方へ身を隠しながら付いて行く。
崖の上……集まっている奴隷の人達が全て見下ろせる崖の上に、弓を持った兵達が集結していた。
「弓隊は、崖の端で矢を射る準備に入れ! 歩兵部隊は、聖凰の騎士が表れないか注意して、周囲を警戒しろ!」
崖の上では、弓兵が崖下に矢を射る準備を入る。
「狙ってんのは、聖凰の奴らだよな? こっからじゃ、よく見えねぇケド……この人数で矢を射って、奴隷の人達に当てないなんて出来んのか? くそっ……一応、出れる準備はしとかねーと」
航太はパーカーを深く被ると、グラムの鞘を握り締めた。
震える程寒い筈なのに、手の平が汗ばんでるのが鞘が湿る事で伝わってくる。
「そろそろ、全員集まったな……弓兵、構え! 射てーっ!」
部隊長らしき男が、白く輝く指揮棒を振り下ろす。
崖下に降り注ぐ矢の雨……響き渡る悲鳴と絶叫……見るまでもなく、弓兵の狙っている対象が分かってしまう。
「やめろーっ!」
フードで顔を隠している事も忘れ、航太は叫ぶ!
と同時に、鞘から引き抜いたグラムを大地に突き刺した。
グラムの力が大地に伝わり……弓兵が立っている場所が隆起していく。
「うわーっ!」
突然大地が盛り上がった事で弓兵達はバランスを崩し、航太の立っている近くまで転がり落ちてくる。
航太は転がってくる弓兵達を飛び越えながら、隆起した崖の端に立ち、崖下を見下ろした。
予想通り……矢が突き刺さった人達が地面に転がっており、矢が刺さった人達を助けようとする人々が見える。
そして……矢が刺さっている人を助けようとしていた人の背中に、矢が一本、2本と突き刺さった。
航太が立っている崖の正面……反対の崖の上から、矢の雨が奴隷達に降り注ぐ。
当然、矢は航太にも飛んでくる。
「冗談じゃ……ねぇぞ……」
グラムの刀身が炎に包まれ……航太がその場で回転すると、炎が渦の様に輪を描いて航太を襲おうとしていた矢を燃やし尽くす。
火の粉が舞う……炎の中、パーカーの中で光る航太の瞳は、怒りで炎に負けない赤を燈していた。
グラムの刀身に、雷が走る……
「うわあぁぁぁ!」
航太の哀しみと怒りの叫び声が響き、グラムの刀身から雷が放たれるれ、反対の崖にいる弓兵達は電撃で焼かれる……筈だった。
が……グラムから雷は放たれなかった……航太の動きは、グラムを振る直前で止まっている。
航太の視線は、反対の崖から再び崖下へ……
そこには、水のドームが出来上がっており、奴隷の人達を矢から守っていた。
「智美……いや、絵美か? それに、頭に届いた声は……?」
「航太さん、気付いてくれましたね……遅くなってスイマセン! ここからは聖凰騎士団……私達が皆さんを守ります!」
頭の中に、直接ルナの声が聞こえる。
「ルナか? 一体、何が起きてやがる?」
「ベルヘイムの奴隷狩りです! 詳しい話は後で……でも、これは私達を罠に嵌める為の作戦……私達を叩く為に、奴隷の皆さんを使ったんです」
ルナの声を聞きながら、航太は行動を開始した。
いや、行動するしかなかった……転げ落ちた弓兵が体勢を整えて矢を放ってくる。
待機していた歩兵も、航太が矢の射程から出ないように取り囲む。
「真実を確認しているヒマはねぇ……が、あんた達が無抵抗な人達に矢を射ったのは事実だ! 悪いが、少し寝ててもらうぞ! 閃騎疾雷!」
航太の瞳が再び赤く染まり、グラムの刀身に雷が走る。
凰の目の発動……目にも見えないスピードで振られたグラムから、微弱な電撃が扇状に広がっていく。
少しでも電撃に触れた者は、痙攣しながら倒れる。
「これで、時間は稼げる。しかし、ルナの言う通りなら聖凰騎士団を倒す為に自国の奴隷を犠牲にした……って事か。戦争だからって、ダメだろ……こんなの!」
航太は走り出す……何が正しいかは分からないが、それでも自分が正しいと思う行動をする為に……
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