38 / 59
2024
2024/10/19
しおりを挟む
ひとりで海辺にぽつんといた。
友達も家族もおらず、人がきても私のことを避けているようだった。
砂浜から歩いてすぐのところに、私が暮らしているスペースがあった。
砂浜から陸側にある岩場。
岩場は砂浜から空に向かってつきだしていて、丸型テントのように中が空洞だった。
その中まで歩いていくと、暑苦しくて仕方なかった日差しが差さないお陰で、ひんやりして居心地が良かった。
そこから雲のできる瞬間や、嵐の発生と消失を見送って過ごしていた。
風が見えるのがすごく楽しくて、雲がどうやってできていくのか見えないはずなのに見えて、一人でいても楽しかった。
岩の天井を見上げると、岩を通り越して空を見ることができた。
そのままじっと見つめていると、青空の向こう、夜空のような宇宙まで見えてきて、星を数えながら昼寝をしたりして過ごしていた。
そんなある日、海辺のコンクリートで固められた段差に女の子が座ってるのが見えた。私より遥かに背の高く、体が細くて色白の子だった。
どうせ他の誰とも一緒で、私のことなんて見て見ぬふりだろう。
そんなことを思いながら通りすぎようとすると、私の持ってた玩具に興味を持ったらしく、手をいきなり掴まれた。
コンビニで働いていたときも、手を掴んでもらえたらしいのを思い出すような出来事だった。
びっくりしていると、私の持っていた玩具……ブリキの小鳥をその子は興味深そうに見つめていたので、渡してみることにした。
その子がブリキの小鳥にさわると、小鳥を構成している金属が辺りに散らばった。ブリキの小鳥は無傷のままだ。
私に確実に認識できたのは金だけで、他はアルミなのか鉄なのかステンレスなのかよくわからなかったけれど、確かなことはその子が触れると触れた金属が辺りに撒き散らされたということだけだった。
しげしげと女の子を見ていると、ブリキの小鳥を丸かじりしようとしたので慌てて止めた。
お腹がすいてるのだと思ったから、美味しそうだと思うものを画像を通して知ろうと、その辺にあった新聞を指差してコミュニケーションをとろうとしてみた。
現実の新聞にはなさそうな、深海魚の写真がたくさん載っている紙面だった。
その子は言葉を発することなく、写真を指差してお腹をならしていた。
「これ美味しそうだね!」
私が聞いても言葉を話すことはなかった。
絵や写真を指差して交流を深めるうちに、とても仲良くなることができた。
私の巣穴みたいな洞窟に呼んで一緒に遊ぼうとすると、中に入りたがらないどころかいやがられてしまった。
どうしたのか不思議に思いながら見つめると、寂しそうにしながら、ブリキの小鳥をいじるので、ニャーンと猫の泣き真似をしてみると、顔を輝かせながら頭を撫でてくれた。
とても優しい撫で方で、なんだかすごく嬉しい気持ちが溢れてくるのを夢ながらに感じた。
そこからは、二人で仲良く歩いた。
海辺を離れて町の中へ行き、雨が降りそうな雲の流れが見えて、その子に教えたけれど、ゲリラ豪雨の雲だったから雨宿りが間に合わなかった。
雨の中、その子が私にもたれながら歩き始めた。
とても辛そうに息を切らしている。熱でも出てるのだろうか?
どこかで休めないか考えながら周りをキョロキョロ見て歩いていると、女の子は青いチェックのタオルハンカチを落としてしまって焦りながら探していた。
とても不安そうだった。
タオルハンカチを探すと、私の目にサラリーマンっぽい男の人がもってるのが見えた。
それを指さしながら言葉で伝えると、その子は獣のように唸りながら取り返していた。
取り返すとき、初めて言葉を話していたので、ここにきてようやく喋れないわけではないことを知った。
相手の人が怪我しないよう両方の話しに耳を傾けて仲を取り持ち、女の子にタオルハンカチのことを聞いてみた。
昔飼ってた猫の形見らしい。
よく見ると、そのタオルハンカチはボロボロにほつれていて、猫が噛んだり引っ掻いたかのような痕跡があった。
雨宿りできる場所をようやく見つけ、着ていた服を乾かしながら一緒に寝ていると、その子の過去らしきものが夢に出てきた。
その子以外の家族はみんな殺されていた。
見た目には傷ひとつなく、かといって生きているようには見えなかった。みんな血の気のない真っ白な顔と体だった。まるで血を全部抜かれて死んでしまったかのよう。
私は訳がわからないまま、その子の昔の様子を見守った。
物が散乱しているのを一生懸命ひとりで片付けている。
最初、殺しの証拠を消してるのかと思ったけれど、どうやらそうではないらしい。
家族を食卓の椅子に座らせ、ご飯もせっせと運んで……。
まるで死んでいることに気がついていないかのようだった。
その子の過去を夢で見守っていると、ナレーションが流れた。
少女は愛の力で家族をよみがえらせることができるのでしょうか?
適応のにおいがすれば、家族はよみがえることができるよ。
さあ、愛の力で頑張ろう。
あいのちーかーらー! あいのちーかーらー!
最後は聞いたことがあるような、ないような合唱での歌声だった。
適応のにおいって腐乱臭のこと?
私は聞こえてきたナレーションから導きだした可能性にゾッとして息をのんだ。
すると、場面がとんだ。
「さあ、君が家族を本当に愛しているのなら、みんなは生き返って君を抱き締めてくれるよ」
顔は見えないけれど、スーツを着ている男がまだ幼いその子に良からぬことを吹き込んでいるところだった。
「散らかってる部屋を片付けて、みんなにご飯を作ってあげるんだ。愛だよ、愛。適応のにおいがする頃に、みんな蘇ってきて君をもう一度抱き締めてくれるから」
違う。
嘘だ、聞いちゃダメだ!
私が見ているのはしょせん過去のことで、夢の中だ。
そいつはきっと家族を殺したやつで、純粋無垢なその子に証拠を消させた上に通報させない気なんだ。下手すると濡れ衣を着せられかねない。
聞いちゃダメだよ!
いくら叫んでも届くことはなかった。
女の子は不器用ながら一生懸命片付けをして、家族の遺体を椅子に座らせ、甲斐甲斐しく世話をし始めてしまった。
家の外まで腐乱臭が漂った頃に警察が訪れ、その子は保護ではなく逮捕された。
猫だけが最後までその子に寄り添っていたけれど、結局途中で死んでしまったらしい。
夢の中で見た夢だったけれど、すごく嫌な気分になりながら一気に目が覚めた。
友達も家族もおらず、人がきても私のことを避けているようだった。
砂浜から歩いてすぐのところに、私が暮らしているスペースがあった。
砂浜から陸側にある岩場。
岩場は砂浜から空に向かってつきだしていて、丸型テントのように中が空洞だった。
その中まで歩いていくと、暑苦しくて仕方なかった日差しが差さないお陰で、ひんやりして居心地が良かった。
そこから雲のできる瞬間や、嵐の発生と消失を見送って過ごしていた。
風が見えるのがすごく楽しくて、雲がどうやってできていくのか見えないはずなのに見えて、一人でいても楽しかった。
岩の天井を見上げると、岩を通り越して空を見ることができた。
そのままじっと見つめていると、青空の向こう、夜空のような宇宙まで見えてきて、星を数えながら昼寝をしたりして過ごしていた。
そんなある日、海辺のコンクリートで固められた段差に女の子が座ってるのが見えた。私より遥かに背の高く、体が細くて色白の子だった。
どうせ他の誰とも一緒で、私のことなんて見て見ぬふりだろう。
そんなことを思いながら通りすぎようとすると、私の持ってた玩具に興味を持ったらしく、手をいきなり掴まれた。
コンビニで働いていたときも、手を掴んでもらえたらしいのを思い出すような出来事だった。
びっくりしていると、私の持っていた玩具……ブリキの小鳥をその子は興味深そうに見つめていたので、渡してみることにした。
その子がブリキの小鳥にさわると、小鳥を構成している金属が辺りに散らばった。ブリキの小鳥は無傷のままだ。
私に確実に認識できたのは金だけで、他はアルミなのか鉄なのかステンレスなのかよくわからなかったけれど、確かなことはその子が触れると触れた金属が辺りに撒き散らされたということだけだった。
しげしげと女の子を見ていると、ブリキの小鳥を丸かじりしようとしたので慌てて止めた。
お腹がすいてるのだと思ったから、美味しそうだと思うものを画像を通して知ろうと、その辺にあった新聞を指差してコミュニケーションをとろうとしてみた。
現実の新聞にはなさそうな、深海魚の写真がたくさん載っている紙面だった。
その子は言葉を発することなく、写真を指差してお腹をならしていた。
「これ美味しそうだね!」
私が聞いても言葉を話すことはなかった。
絵や写真を指差して交流を深めるうちに、とても仲良くなることができた。
私の巣穴みたいな洞窟に呼んで一緒に遊ぼうとすると、中に入りたがらないどころかいやがられてしまった。
どうしたのか不思議に思いながら見つめると、寂しそうにしながら、ブリキの小鳥をいじるので、ニャーンと猫の泣き真似をしてみると、顔を輝かせながら頭を撫でてくれた。
とても優しい撫で方で、なんだかすごく嬉しい気持ちが溢れてくるのを夢ながらに感じた。
そこからは、二人で仲良く歩いた。
海辺を離れて町の中へ行き、雨が降りそうな雲の流れが見えて、その子に教えたけれど、ゲリラ豪雨の雲だったから雨宿りが間に合わなかった。
雨の中、その子が私にもたれながら歩き始めた。
とても辛そうに息を切らしている。熱でも出てるのだろうか?
どこかで休めないか考えながら周りをキョロキョロ見て歩いていると、女の子は青いチェックのタオルハンカチを落としてしまって焦りながら探していた。
とても不安そうだった。
タオルハンカチを探すと、私の目にサラリーマンっぽい男の人がもってるのが見えた。
それを指さしながら言葉で伝えると、その子は獣のように唸りながら取り返していた。
取り返すとき、初めて言葉を話していたので、ここにきてようやく喋れないわけではないことを知った。
相手の人が怪我しないよう両方の話しに耳を傾けて仲を取り持ち、女の子にタオルハンカチのことを聞いてみた。
昔飼ってた猫の形見らしい。
よく見ると、そのタオルハンカチはボロボロにほつれていて、猫が噛んだり引っ掻いたかのような痕跡があった。
雨宿りできる場所をようやく見つけ、着ていた服を乾かしながら一緒に寝ていると、その子の過去らしきものが夢に出てきた。
その子以外の家族はみんな殺されていた。
見た目には傷ひとつなく、かといって生きているようには見えなかった。みんな血の気のない真っ白な顔と体だった。まるで血を全部抜かれて死んでしまったかのよう。
私は訳がわからないまま、その子の昔の様子を見守った。
物が散乱しているのを一生懸命ひとりで片付けている。
最初、殺しの証拠を消してるのかと思ったけれど、どうやらそうではないらしい。
家族を食卓の椅子に座らせ、ご飯もせっせと運んで……。
まるで死んでいることに気がついていないかのようだった。
その子の過去を夢で見守っていると、ナレーションが流れた。
少女は愛の力で家族をよみがえらせることができるのでしょうか?
適応のにおいがすれば、家族はよみがえることができるよ。
さあ、愛の力で頑張ろう。
あいのちーかーらー! あいのちーかーらー!
最後は聞いたことがあるような、ないような合唱での歌声だった。
適応のにおいって腐乱臭のこと?
私は聞こえてきたナレーションから導きだした可能性にゾッとして息をのんだ。
すると、場面がとんだ。
「さあ、君が家族を本当に愛しているのなら、みんなは生き返って君を抱き締めてくれるよ」
顔は見えないけれど、スーツを着ている男がまだ幼いその子に良からぬことを吹き込んでいるところだった。
「散らかってる部屋を片付けて、みんなにご飯を作ってあげるんだ。愛だよ、愛。適応のにおいがする頃に、みんな蘇ってきて君をもう一度抱き締めてくれるから」
違う。
嘘だ、聞いちゃダメだ!
私が見ているのはしょせん過去のことで、夢の中だ。
そいつはきっと家族を殺したやつで、純粋無垢なその子に証拠を消させた上に通報させない気なんだ。下手すると濡れ衣を着せられかねない。
聞いちゃダメだよ!
いくら叫んでも届くことはなかった。
女の子は不器用ながら一生懸命片付けをして、家族の遺体を椅子に座らせ、甲斐甲斐しく世話をし始めてしまった。
家の外まで腐乱臭が漂った頃に警察が訪れ、その子は保護ではなく逮捕された。
猫だけが最後までその子に寄り添っていたけれど、結局途中で死んでしまったらしい。
夢の中で見た夢だったけれど、すごく嫌な気分になりながら一気に目が覚めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる