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おやすみなさい。インキュバスさん
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これは日本ではない、海の向こうのお話。
レンガ作りの夜の街。大人たちが行き交う流れに従い、ウェーブがかった赤毛が夜風に揺れている。あどけない声の高さを隠しきれない息を弾ませ、一人の少女は、そのそばかすのある幼い顔には似合わない、雑な化粧をその顔に施している。
厚いファンデーション、酔っ払いのように赤く塗られたチーク、派手すぎる口紅――夜の店の夜の光に照らされ、彼女の顔に気付いた大人たちがぎょっと引いて彼女を振り返る。そんな大人たちの目線に気づかず、少女は肩で風を切って歩いていた。
ふと、バーに目を留めてぴたりと止まる少女。着飾った大人の女性が彼女の目の前でそこに入っていったのに着いていき、さりげなく入店しようとした。
「おい」
落ち着きのある声が近くでしたかと思うと、それ以上前に進めなくなった。少女が声の主を振り返ると、目が合った。
少女の肩を掴んでいる彼は彼女の顔を見て大きく肩を跳ねさせ、変な声を短く上げた。
「……この国では、今日はハロウィンか?」
「……は?」
彼の言っている意味がわからず、強気な態度で「何いってんのあんた?」と青い目を瞬かせ聞き返す少女。
力でやや乱暴に自分の手を振り払い逃れた少女に、彼は小首を傾げた。
「その酷い化粧は、自分でやったのか」
「……酷くて悪かったわね」
「お前は、どう見ても子供だろう。保護者はどうした」
「うるさいわね! あんただって子供でしょ!」
彼女を引き留めた主である彼も、声や佇まいは歳のわりに落ち着いてはいるが、風貌からして歳が近く見える。
しかし少年は少女の怒りに付き合わず、「どうみても酒を飲んでいい歳ではないだろうに」と肩をすくめた。
「旅行者か? 親の目を盗んでホテルから抜け出してきたのか?」
「ほっといて!」
「それならホテルまで送ってやる」
「余計なお世話!」
そう言ってまたバーに入ろうとする少女だが、再び腕を掴まれ引き留められる。
「すぐに見破られてつまみ出されるぞ」
「じゃあほっとけばいいでしょ!」
「ここは治安が良くない。バーでたちの悪いやつらに目をつけられ後でもつけられたら厄介だ」
「平気よ。怖くないし」
「この近くで女児を狙った事件が最近あったらしい。犯人はまだ捕まっていないそうだ」
「だから何よ!?」
「……馬鹿なのか? お前は」
何故か腕を組んでふんぞり返り偉そうな少女に、呆れた顔になる少年。
「怖いだの怖くないだの、そういう話ではないだろう」
「別に。なにかあったらなにかあったで、別に変わんないし」
「……変わらない、とはなんだ?」
「どうせ、病気で死ぬんだから」
偉そうなのは変わらないが、大きな感情を無理矢理抑えこんだような響きが彼女の語尾にわずかに宿る。
少年が少し瞳を開き、なにかを感じ取ったような顔をした隙、少女は早足でバーに近づく。
そして扉に触れようとした直前、頭に痛烈な衝撃が走って、少女は頭を両手で抑えてうずくまった。
「……少しそこで待っていろ」
涼しい顔で少女の後頭部にチョップを食らわせた少年は、「入れるようにしてやる」と言い残して、痛みを堪えている少女から一度離れた。
頭から痛みがひいて、その後少し待った少女のもとに少年はすぐに帰って来た。二本の瓶を片手に現れ、あとは少年にどこか変わった様子はない。
「入れるようにするって……」
少年が少女から離れ行ってきたのは、バーの扉の方向とは逆だ。とてもマスターと話をつけにいった様子ではないのに、どういうことだろうかと少女が訝しんで見守る中、なんと少年はそのままバーの扉を開けて入っていく。
驚き、慌てて少年についていこうとすると、自然な様子で少年は少女の手を取ってバーの奥に入っていった。
「いらっしゃい」
大人たちに怒鳴られるのではないかと少女は冷や冷やしたが、店員が目配せして笑って挨拶する。
周りの客の大人たちも、自分たちをちらりと見やっただけで二人を咎めなかった。
テーブル席に優雅に腰かけた連れの少年に、少女は先程の威勢はどこへやら、どぎまぎしながら少年の相席に座る。
場違いな大人たちの空気に縮こまり、緊張を全面に出してキョロキョロ辺りに瞳を巡らせた。
そんな少女とは逆に、注文を聞きにやってきた店員に少年は大人びた笑顔で応えている。
店員が去ったあと、少女は異様な雰囲気にややびくびくしながら、「どういうこと……?」とテーブルに身を乗り出し少年に聞いた。
「なんで、誰もなにも言わないの……? 怒られたりとか……」
「ああ。魔法をかけた」
「……は……?」
平然と、ふざけた態度もなく言ってのけた少年に、少女は呆気にとられて目を丸くする。
少年は足を組み、イタズラっぽい子供の顔と、大人びた顔の混ざった、複雑だがどこか品のある表情でにやりと笑んで、更に非現実的な言葉を重ねた。
「俺はインキュバスだからな」
「……イン――?」
「悪魔の一種だ。酒場にいる人間を騙すことなど容易い」
「……は……??」
「ただし、俺たちが飲むのはオレンジジュースのみだ。酒場の雰囲気だけを味わえ。未成年への酒の提供は店側の問題になるからな。
さっき俺が頼んだ酒は、適当に隣のテーブルにくれてやる。無論俺の奢りでな」
少女の頭が理解にたどり着いてくれるまで、それから十分以上かかった。
あれから少女は酒場から何事もなく少年に送り届けられ、娘が消えていることに気付いてパニックになっていた少女の両親の安堵の悲鳴の中、帰宅を果たした。
帰路を辿る間、少女は少年にぽつり、ぽつりと自分のことを話した。
最近、病院で検査を受けたこと。残り少ない余命を、少女がいない場所で両親が医者から言い渡されたこと。二日前トイレで用を足すためにたまたま起きたとき、両親が自分の病気について話していたこと。
いつ絶えるかわからない命なら、大人にならなければできないことを今のうちにしようと考えたこと――。
悪魔を名乗った少年は、絵本に出てくる悪魔のように少女を嘲笑ったりなどしなかった。
ただ相槌を打つだけで、最後には「そうか」とだけ言い、それきり口を閉ざしたのだった。
「彼が遊びに来てくれたわよ」
扉をノックして少女の部屋に顔を覗かせる少女の母親。
あの酒場の日から、あの悪魔の少年は少女のもとに現れるようになった。
初めての少女の家への訪問には、少年はメイク道具を土産に持ってきた。
滑らかな少女の肌が荒れないようにと気遣われた上質なブランド品が新品で少女の部屋に並べられているのを母親が引き気味で見つめるなか、慣れた手つきで悪魔の少年は少女の顔に正しいやりかたでメイクを施した。
それから少女好みのアイシャドウを一緒に選びに行ったのを皮切りに、悪魔の少年は不定期ではあるが、少女のもとへ会いに来るようになったのだ。
「あんたって、本当に悪魔なの?」
出会ってから二ヶ月後。部屋で雑誌を見つめ、流行りのメイクの研究をしながら、少女はふと別の少女の雑誌を興味深そうに眺めているインキュバスに問いかける。
「何故そんなことを聞く?」
「だって、悪魔ってもっと意地悪なんじゃないの?」
「人の欲を利用するのが悪魔だからな」
「……悪魔だっていう証拠は?」
少女がちょっとした意地悪のつもりで軽く聞いたのに、少年は無言で雑誌のページを捲る。
代わりにバサリと音をたてて、少年の背中から黒い羽が片方生え、広がった。
「えっ……!?」
「おしまい」
「ちょ、まって! 本物なのそれ!? もう一回! ちゃんと見せて!!」
「駄目だ」
一瞬だけ見せられ仕舞われた少年の悪魔の羽をもう一度見たいとはしゃぐ少女を、少年は「見世物じゃない」と軽く睨んだ。
それから雑誌を教科書にピンクのアイシャドウを瞼に乗せ、お洒落を終えた三十分後。
集中し終えた少女は鏡越しに背後にいる少年を見、少し悩みはしたが、結局、気になり始めていたことを率直に聞くことにした。
「……人の欲を利用するって、私のことも利用するの?」
と。
しかし少年はあっさり否定し、「仕事の合間の暇潰しだな」と、そう答えた。
「仕事? 悪魔に仕事なんてあるの?」
「あるさ。とても大事な仕事だ」
「どんな?」
「子供を作る。俺たちインキュバスは、人間を利用しないと子孫を残せないからな」
「……子供……」
「健康な女しか狙わん。まず、お前みたいな子供にそういう気さえ起きないから安心しろ」
「……」
はっきり言ってのけた悪魔に少女は無言になり、今度は彼女が少年を睨んだ。
初めて少年と少女が出会ってから、更に三ヶ月が経とうとしていた頃。
悪魔の少年が少女のもとを訪れたとき彼らが出会った場所は、いつものような昼間の少女の家ではなかった。
発作を起こした少女が運ばれた、病院の個室。どこで知ったか、深夜の闇に紛れて悪魔の少年が窓を軽くノックすれば、寝付けない少女がすぐに窓を開けて彼を迎え入れる。
余命を言い渡された日にちよりも随分浅いのに、突然少女を襲った目に見えぬ脅威――。
孤独な病室に、そばかすの乗った頬を真っ白に青ざめさせて、少女は何も言わぬまま悪魔の少年の胸にすがる。事情を少女の親から知らされた少年は黙ってそれを受け入れ、少女を優しく抱き締めた。
少女はひとしきり静かに泣いた後、
「……私を愛して」
かすれた声で懇願した。
「子供が欲しいわ」
しかし少年は、「駄目だ」と芯のある声で拒んだ。
「どうして?」
「お前は、まだ生きられる」
「本当に?」
「……」
「本当に……??」
二度聞いた少女に、悪魔の少年は沈黙を続けた。
「現実で産むより、夢の中で産むほうが負担が少ないって……そう言ったじゃない……!」
「負担がないわけではない。体力を大きく消耗する。それがどう影響するか――」
「……大人になる前に、死んじゃうかもしれないのに?
それなら、できることをたくさん経験してから、死んじゃったほうがいい……」
すると悪魔の少年は少女の両肩に両手を置き、一度自分から引き離す。いつも甘やかな少年の琥珀色の瞳が赤く輝いた瞬間、真正面からその双眸を見つめた少女は、糸が切れたマリオネットのように、意識を手放し深い眠りに落ちた。
すぐに少女は無事に退院を果たし、それからは発作が嘘のように、少女の身体は順調だった。
が――病院から帰ってきた後の彼女の世界は、発作が起こる前に見えていた世界とは、違って見えた。なにかを悟ったような大人の目で、少女は自分の世界を他人事のように見つめていた。
暫く顔を見せなかった悪魔の少年が少女の家に訪れたのは、病院の出来事から半月が過ぎた頃。
昼、リビングで父親に教えてもらった宿題が床に投げ出された、少女の寝室――満月が眩い夜に、少女の意識は気づけば家の屋根の上にあった。
どうやって自分が自分の部屋からこんなところに登ったのか。思い出せないまま、裸足で自分はパジャマを着たままそこに立っている。
どうやって、なにを思って登ったのかはわからない――が。ここから落ちても、遅かれ早かれ自分は死ぬのだから、同じだろうか。
そんな考えが頭を過ったとき。少女は隣に気配を感じて、ふと振り向く。そこには、あれから何の音沙汰もなく、姿を見せなかった悪魔の少年が、前を向いたまま立っている。
状況がよくわからない少女の腰に、少年の腕が絡められた。少女が驚く間もなく、少年は彼女を抱き上げ悪魔の羽を広げ、深い夜の空へ舞った。
「怖いかもしれないが、安心していい。ここは、お前の夢の中だ」
「夢……!?」
「そうだ。少し精気を吸うが、身体は順調なのだろう?
念のため、見せる時間は短いが――」
少年は腕の中の少女を見下ろして、月のように淡く、優しく笑った。
「少し遅い、退院祝いだ」
端正な少年の顔に、少女はどきりとして顔を赤らめる。
今まで彼女に見せた彼の表情の中で一番優しく、美しいと思ってしまったのは、夢の中だからなのだろうか。
「お前も飛ぶか?」
「え――」
「ほら」
まるで父親が高い高いをするように、空の上で少年は少女を持ち上げる。空から落ちやしないかとハラハラしたが、背中を見るように言われて言うとおりに振り返る――そこには、大きく、美しい天使の羽が少女の背中を飾っていた。
月光に反射し、キラキラと純白に輝いていた。
「行こう」
いつの間にか自分を支える手は放され、少女は自分の力で飛んでいた。
差し出された悪魔の少年な手を取り、少女は街を一望できる場所を目指した。
自由を堪能して家の屋根の上に戻ってきた二人は、大きく誇大された夢の中の満月を並んで見上げる。
現実にはあり得ないが、きっと自分はこの出来事を、この月を忘れないだろう。
まるで夢のような、夢。現実には戻りたくないと、泣き出したくなるくらいに――。
「……なあ」
「……ん――」
「まだ、子供がほしいか?」
聞かれて、少女は少年を見る。
穏やかそうだが、瞳の奥にある光は真剣さが宿っていた。
「……今更、なんでそんなことを聞くの。嫌って言ったくせに」
「あれから、お前の親に話した」
「……――話した……?」
「勿論、本当のことは話していない。俺の正体も、夢の中で子を生ませることも。どうせ信じてもらえないだろうからな。
だから、娘のお前が望んでいることを、命に関わるかもしれないことでも果たすべきかどうか――とな。お前が望むこととはいえ、俺一人で決めるわけにはいかない」
「……それで。パパとママ、は……なんて?」
「即却下された。まあ、当たり前だな」
だが、と少年は続ける。
「退院してから、まるで死んでいるように生きていると。お前の両親は心配していた。
どうせ大人になれないならどう生きたって関係ないというように無気力で、お前を見ているだけでつらいそうだ」
「……」
「だから、娘がどうしても望んでいることならしてやってほしいと、一週間前改めて、お前の親から頼まれた」
固く厳しい少女の親が、まさかそんなことを言っていたとは想像すらできないことだ。意外な気持ちで、少女は語る少年の顔に見入っていた。
そんな彼女に、少年は再び問いかける。
「改めて、お前はどうしたい?」
と。
「……私、は」
「お前は、なんのために現実にいたいのだ? どういう自分でありたい」
「どういう……?」
「繋がりたい、大人になりたい、子供がほしい。確かに、それも幸せの一つだ。違いない。
新しい幸せを貪欲に求め、生きている間にすべてとはいえなくとも、なるべく多くのものを手に入れたいと願うのもいいだろう。だが――今、新しい幸せを求めなければならないほど、お前は不幸なのか?
お前が貪欲にならなければならないのは。今、大切にすべきものに対してではないのか?」
そして肥大した非現実的な月に、シアターのように映る二つの顔。
少女の両親が、いつも優しい母が、いつもふざけてくだらない冗談を言う父が、泣いていた。
「これが。余命短いお前の望む、幸せなのか――?」
少女が夢から覚めると、悪魔の少年が少女の傍らに立って自分を見下ろしている。
少女はゆっくり身体を起こすと、少年を見上げていた瞳を伏せて考えるような顔つきになり――やがて、寝る前に床に放り捨てた宿題に目を留める。
「……勉強なんかしたって、もう無駄だって、意味ないって思ってた」
悪魔の少年も、少年の目をたどって乱雑に転がっている勉強道具を見下ろす。
「でも……パパは、そうじゃないの。諦めないで、私がわかるまで、教えてくれるの。できたら、褒めてくれるの。
もう私、いつ、いなくなったって、おかしくないのに……」
少女の語尾が涙で滲み、震えた。
「ママも、一緒にお菓子作ろうって。失敗したら、次は、上手くいくって、言うの――次なんて、ないかもしれないのに」
「……お前の母親の『次』よりも、愛していない男との子供が大切か?」
「……ううん」
少女は首を横に振ってから床に膝をつき、そばかすを涙で濡らしながら、勉強道具を拾い上げては強く抱き締めた。
「それでいい。死ぬまでに果たしたいお前の本当の『欲望』は、そこにある」
少女は悪魔の少年を見上げ、涙を拭って頷いた。
少女は自分のベッドの中に戻ると、自分が横たわるベッドに腰かけている悪魔の少年と目がかち合う。
少女は精気を多少吸われた心地よい疲労感に身を委ねながら、暫しなにも話さず、少年と見つめ合う。
嗚呼――そういえば、お礼を言わないとと思い立ったとき、少年のほうから口を開いた。
「暫く、会えなくなる」
「……え?」
「仕事は終わっていないが、都合上な」
「やだ」
「……やだ、って」
頬を膨らまる少女に、少年は困った顔になった。
だって、と、少女は言った。
「『友達』がいなくなるなんて、嫌」
少女が放った二文字に悪魔の少年は一瞬、意外そうに目を瞬かせる。
そこからすぐに少年は元の表情に戻ると、横たわった姿勢でシーツの上に置かれた少女の手の甲に、自分の手を重ねた。
「また会えるさ」
「……いつ?」
「できるだけ。この先も会いに行く」
「本当?」
「本当だ。友達だからな」
「これからも、ずっと?」
「勿論だ」
少年が頷くと、少女は少し安堵した顔で、同時に微睡み始める。
「本当、に。約束……ずっと友達だからね」
「ずっと、友達だ」
「じゃあ、寝るまで、こうしてて。傍にいて――」
「いいぞ」
そんな会話の最中――薄々、少女は気づいていた。目を覚まして朝になると、きっと少年は自分の前から姿を消しているのだろう、と。
それでも、彼女は微睡みながら、信じた。
悪魔の少年が、また友達として、自分が生きているうちに自分の前に現れる『いつか』を。
あと残り少ない命の中で。
一つでも多く自分に『目覚め』が来ることを祈りながら。
『おやすみ』
悪魔の少年の声を、眠りの直前、少女は確かに聞いた。
レンガ作りの夜の街。大人たちが行き交う流れに従い、ウェーブがかった赤毛が夜風に揺れている。あどけない声の高さを隠しきれない息を弾ませ、一人の少女は、そのそばかすのある幼い顔には似合わない、雑な化粧をその顔に施している。
厚いファンデーション、酔っ払いのように赤く塗られたチーク、派手すぎる口紅――夜の店の夜の光に照らされ、彼女の顔に気付いた大人たちがぎょっと引いて彼女を振り返る。そんな大人たちの目線に気づかず、少女は肩で風を切って歩いていた。
ふと、バーに目を留めてぴたりと止まる少女。着飾った大人の女性が彼女の目の前でそこに入っていったのに着いていき、さりげなく入店しようとした。
「おい」
落ち着きのある声が近くでしたかと思うと、それ以上前に進めなくなった。少女が声の主を振り返ると、目が合った。
少女の肩を掴んでいる彼は彼女の顔を見て大きく肩を跳ねさせ、変な声を短く上げた。
「……この国では、今日はハロウィンか?」
「……は?」
彼の言っている意味がわからず、強気な態度で「何いってんのあんた?」と青い目を瞬かせ聞き返す少女。
力でやや乱暴に自分の手を振り払い逃れた少女に、彼は小首を傾げた。
「その酷い化粧は、自分でやったのか」
「……酷くて悪かったわね」
「お前は、どう見ても子供だろう。保護者はどうした」
「うるさいわね! あんただって子供でしょ!」
彼女を引き留めた主である彼も、声や佇まいは歳のわりに落ち着いてはいるが、風貌からして歳が近く見える。
しかし少年は少女の怒りに付き合わず、「どうみても酒を飲んでいい歳ではないだろうに」と肩をすくめた。
「旅行者か? 親の目を盗んでホテルから抜け出してきたのか?」
「ほっといて!」
「それならホテルまで送ってやる」
「余計なお世話!」
そう言ってまたバーに入ろうとする少女だが、再び腕を掴まれ引き留められる。
「すぐに見破られてつまみ出されるぞ」
「じゃあほっとけばいいでしょ!」
「ここは治安が良くない。バーでたちの悪いやつらに目をつけられ後でもつけられたら厄介だ」
「平気よ。怖くないし」
「この近くで女児を狙った事件が最近あったらしい。犯人はまだ捕まっていないそうだ」
「だから何よ!?」
「……馬鹿なのか? お前は」
何故か腕を組んでふんぞり返り偉そうな少女に、呆れた顔になる少年。
「怖いだの怖くないだの、そういう話ではないだろう」
「別に。なにかあったらなにかあったで、別に変わんないし」
「……変わらない、とはなんだ?」
「どうせ、病気で死ぬんだから」
偉そうなのは変わらないが、大きな感情を無理矢理抑えこんだような響きが彼女の語尾にわずかに宿る。
少年が少し瞳を開き、なにかを感じ取ったような顔をした隙、少女は早足でバーに近づく。
そして扉に触れようとした直前、頭に痛烈な衝撃が走って、少女は頭を両手で抑えてうずくまった。
「……少しそこで待っていろ」
涼しい顔で少女の後頭部にチョップを食らわせた少年は、「入れるようにしてやる」と言い残して、痛みを堪えている少女から一度離れた。
頭から痛みがひいて、その後少し待った少女のもとに少年はすぐに帰って来た。二本の瓶を片手に現れ、あとは少年にどこか変わった様子はない。
「入れるようにするって……」
少年が少女から離れ行ってきたのは、バーの扉の方向とは逆だ。とてもマスターと話をつけにいった様子ではないのに、どういうことだろうかと少女が訝しんで見守る中、なんと少年はそのままバーの扉を開けて入っていく。
驚き、慌てて少年についていこうとすると、自然な様子で少年は少女の手を取ってバーの奥に入っていった。
「いらっしゃい」
大人たちに怒鳴られるのではないかと少女は冷や冷やしたが、店員が目配せして笑って挨拶する。
周りの客の大人たちも、自分たちをちらりと見やっただけで二人を咎めなかった。
テーブル席に優雅に腰かけた連れの少年に、少女は先程の威勢はどこへやら、どぎまぎしながら少年の相席に座る。
場違いな大人たちの空気に縮こまり、緊張を全面に出してキョロキョロ辺りに瞳を巡らせた。
そんな少女とは逆に、注文を聞きにやってきた店員に少年は大人びた笑顔で応えている。
店員が去ったあと、少女は異様な雰囲気にややびくびくしながら、「どういうこと……?」とテーブルに身を乗り出し少年に聞いた。
「なんで、誰もなにも言わないの……? 怒られたりとか……」
「ああ。魔法をかけた」
「……は……?」
平然と、ふざけた態度もなく言ってのけた少年に、少女は呆気にとられて目を丸くする。
少年は足を組み、イタズラっぽい子供の顔と、大人びた顔の混ざった、複雑だがどこか品のある表情でにやりと笑んで、更に非現実的な言葉を重ねた。
「俺はインキュバスだからな」
「……イン――?」
「悪魔の一種だ。酒場にいる人間を騙すことなど容易い」
「……は……??」
「ただし、俺たちが飲むのはオレンジジュースのみだ。酒場の雰囲気だけを味わえ。未成年への酒の提供は店側の問題になるからな。
さっき俺が頼んだ酒は、適当に隣のテーブルにくれてやる。無論俺の奢りでな」
少女の頭が理解にたどり着いてくれるまで、それから十分以上かかった。
あれから少女は酒場から何事もなく少年に送り届けられ、娘が消えていることに気付いてパニックになっていた少女の両親の安堵の悲鳴の中、帰宅を果たした。
帰路を辿る間、少女は少年にぽつり、ぽつりと自分のことを話した。
最近、病院で検査を受けたこと。残り少ない余命を、少女がいない場所で両親が医者から言い渡されたこと。二日前トイレで用を足すためにたまたま起きたとき、両親が自分の病気について話していたこと。
いつ絶えるかわからない命なら、大人にならなければできないことを今のうちにしようと考えたこと――。
悪魔を名乗った少年は、絵本に出てくる悪魔のように少女を嘲笑ったりなどしなかった。
ただ相槌を打つだけで、最後には「そうか」とだけ言い、それきり口を閉ざしたのだった。
「彼が遊びに来てくれたわよ」
扉をノックして少女の部屋に顔を覗かせる少女の母親。
あの酒場の日から、あの悪魔の少年は少女のもとに現れるようになった。
初めての少女の家への訪問には、少年はメイク道具を土産に持ってきた。
滑らかな少女の肌が荒れないようにと気遣われた上質なブランド品が新品で少女の部屋に並べられているのを母親が引き気味で見つめるなか、慣れた手つきで悪魔の少年は少女の顔に正しいやりかたでメイクを施した。
それから少女好みのアイシャドウを一緒に選びに行ったのを皮切りに、悪魔の少年は不定期ではあるが、少女のもとへ会いに来るようになったのだ。
「あんたって、本当に悪魔なの?」
出会ってから二ヶ月後。部屋で雑誌を見つめ、流行りのメイクの研究をしながら、少女はふと別の少女の雑誌を興味深そうに眺めているインキュバスに問いかける。
「何故そんなことを聞く?」
「だって、悪魔ってもっと意地悪なんじゃないの?」
「人の欲を利用するのが悪魔だからな」
「……悪魔だっていう証拠は?」
少女がちょっとした意地悪のつもりで軽く聞いたのに、少年は無言で雑誌のページを捲る。
代わりにバサリと音をたてて、少年の背中から黒い羽が片方生え、広がった。
「えっ……!?」
「おしまい」
「ちょ、まって! 本物なのそれ!? もう一回! ちゃんと見せて!!」
「駄目だ」
一瞬だけ見せられ仕舞われた少年の悪魔の羽をもう一度見たいとはしゃぐ少女を、少年は「見世物じゃない」と軽く睨んだ。
それから雑誌を教科書にピンクのアイシャドウを瞼に乗せ、お洒落を終えた三十分後。
集中し終えた少女は鏡越しに背後にいる少年を見、少し悩みはしたが、結局、気になり始めていたことを率直に聞くことにした。
「……人の欲を利用するって、私のことも利用するの?」
と。
しかし少年はあっさり否定し、「仕事の合間の暇潰しだな」と、そう答えた。
「仕事? 悪魔に仕事なんてあるの?」
「あるさ。とても大事な仕事だ」
「どんな?」
「子供を作る。俺たちインキュバスは、人間を利用しないと子孫を残せないからな」
「……子供……」
「健康な女しか狙わん。まず、お前みたいな子供にそういう気さえ起きないから安心しろ」
「……」
はっきり言ってのけた悪魔に少女は無言になり、今度は彼女が少年を睨んだ。
初めて少年と少女が出会ってから、更に三ヶ月が経とうとしていた頃。
悪魔の少年が少女のもとを訪れたとき彼らが出会った場所は、いつものような昼間の少女の家ではなかった。
発作を起こした少女が運ばれた、病院の個室。どこで知ったか、深夜の闇に紛れて悪魔の少年が窓を軽くノックすれば、寝付けない少女がすぐに窓を開けて彼を迎え入れる。
余命を言い渡された日にちよりも随分浅いのに、突然少女を襲った目に見えぬ脅威――。
孤独な病室に、そばかすの乗った頬を真っ白に青ざめさせて、少女は何も言わぬまま悪魔の少年の胸にすがる。事情を少女の親から知らされた少年は黙ってそれを受け入れ、少女を優しく抱き締めた。
少女はひとしきり静かに泣いた後、
「……私を愛して」
かすれた声で懇願した。
「子供が欲しいわ」
しかし少年は、「駄目だ」と芯のある声で拒んだ。
「どうして?」
「お前は、まだ生きられる」
「本当に?」
「……」
「本当に……??」
二度聞いた少女に、悪魔の少年は沈黙を続けた。
「現実で産むより、夢の中で産むほうが負担が少ないって……そう言ったじゃない……!」
「負担がないわけではない。体力を大きく消耗する。それがどう影響するか――」
「……大人になる前に、死んじゃうかもしれないのに?
それなら、できることをたくさん経験してから、死んじゃったほうがいい……」
すると悪魔の少年は少女の両肩に両手を置き、一度自分から引き離す。いつも甘やかな少年の琥珀色の瞳が赤く輝いた瞬間、真正面からその双眸を見つめた少女は、糸が切れたマリオネットのように、意識を手放し深い眠りに落ちた。
すぐに少女は無事に退院を果たし、それからは発作が嘘のように、少女の身体は順調だった。
が――病院から帰ってきた後の彼女の世界は、発作が起こる前に見えていた世界とは、違って見えた。なにかを悟ったような大人の目で、少女は自分の世界を他人事のように見つめていた。
暫く顔を見せなかった悪魔の少年が少女の家に訪れたのは、病院の出来事から半月が過ぎた頃。
昼、リビングで父親に教えてもらった宿題が床に投げ出された、少女の寝室――満月が眩い夜に、少女の意識は気づけば家の屋根の上にあった。
どうやって自分が自分の部屋からこんなところに登ったのか。思い出せないまま、裸足で自分はパジャマを着たままそこに立っている。
どうやって、なにを思って登ったのかはわからない――が。ここから落ちても、遅かれ早かれ自分は死ぬのだから、同じだろうか。
そんな考えが頭を過ったとき。少女は隣に気配を感じて、ふと振り向く。そこには、あれから何の音沙汰もなく、姿を見せなかった悪魔の少年が、前を向いたまま立っている。
状況がよくわからない少女の腰に、少年の腕が絡められた。少女が驚く間もなく、少年は彼女を抱き上げ悪魔の羽を広げ、深い夜の空へ舞った。
「怖いかもしれないが、安心していい。ここは、お前の夢の中だ」
「夢……!?」
「そうだ。少し精気を吸うが、身体は順調なのだろう?
念のため、見せる時間は短いが――」
少年は腕の中の少女を見下ろして、月のように淡く、優しく笑った。
「少し遅い、退院祝いだ」
端正な少年の顔に、少女はどきりとして顔を赤らめる。
今まで彼女に見せた彼の表情の中で一番優しく、美しいと思ってしまったのは、夢の中だからなのだろうか。
「お前も飛ぶか?」
「え――」
「ほら」
まるで父親が高い高いをするように、空の上で少年は少女を持ち上げる。空から落ちやしないかとハラハラしたが、背中を見るように言われて言うとおりに振り返る――そこには、大きく、美しい天使の羽が少女の背中を飾っていた。
月光に反射し、キラキラと純白に輝いていた。
「行こう」
いつの間にか自分を支える手は放され、少女は自分の力で飛んでいた。
差し出された悪魔の少年な手を取り、少女は街を一望できる場所を目指した。
自由を堪能して家の屋根の上に戻ってきた二人は、大きく誇大された夢の中の満月を並んで見上げる。
現実にはあり得ないが、きっと自分はこの出来事を、この月を忘れないだろう。
まるで夢のような、夢。現実には戻りたくないと、泣き出したくなるくらいに――。
「……なあ」
「……ん――」
「まだ、子供がほしいか?」
聞かれて、少女は少年を見る。
穏やかそうだが、瞳の奥にある光は真剣さが宿っていた。
「……今更、なんでそんなことを聞くの。嫌って言ったくせに」
「あれから、お前の親に話した」
「……――話した……?」
「勿論、本当のことは話していない。俺の正体も、夢の中で子を生ませることも。どうせ信じてもらえないだろうからな。
だから、娘のお前が望んでいることを、命に関わるかもしれないことでも果たすべきかどうか――とな。お前が望むこととはいえ、俺一人で決めるわけにはいかない」
「……それで。パパとママ、は……なんて?」
「即却下された。まあ、当たり前だな」
だが、と少年は続ける。
「退院してから、まるで死んでいるように生きていると。お前の両親は心配していた。
どうせ大人になれないならどう生きたって関係ないというように無気力で、お前を見ているだけでつらいそうだ」
「……」
「だから、娘がどうしても望んでいることならしてやってほしいと、一週間前改めて、お前の親から頼まれた」
固く厳しい少女の親が、まさかそんなことを言っていたとは想像すらできないことだ。意外な気持ちで、少女は語る少年の顔に見入っていた。
そんな彼女に、少年は再び問いかける。
「改めて、お前はどうしたい?」
と。
「……私、は」
「お前は、なんのために現実にいたいのだ? どういう自分でありたい」
「どういう……?」
「繋がりたい、大人になりたい、子供がほしい。確かに、それも幸せの一つだ。違いない。
新しい幸せを貪欲に求め、生きている間にすべてとはいえなくとも、なるべく多くのものを手に入れたいと願うのもいいだろう。だが――今、新しい幸せを求めなければならないほど、お前は不幸なのか?
お前が貪欲にならなければならないのは。今、大切にすべきものに対してではないのか?」
そして肥大した非現実的な月に、シアターのように映る二つの顔。
少女の両親が、いつも優しい母が、いつもふざけてくだらない冗談を言う父が、泣いていた。
「これが。余命短いお前の望む、幸せなのか――?」
少女が夢から覚めると、悪魔の少年が少女の傍らに立って自分を見下ろしている。
少女はゆっくり身体を起こすと、少年を見上げていた瞳を伏せて考えるような顔つきになり――やがて、寝る前に床に放り捨てた宿題に目を留める。
「……勉強なんかしたって、もう無駄だって、意味ないって思ってた」
悪魔の少年も、少年の目をたどって乱雑に転がっている勉強道具を見下ろす。
「でも……パパは、そうじゃないの。諦めないで、私がわかるまで、教えてくれるの。できたら、褒めてくれるの。
もう私、いつ、いなくなったって、おかしくないのに……」
少女の語尾が涙で滲み、震えた。
「ママも、一緒にお菓子作ろうって。失敗したら、次は、上手くいくって、言うの――次なんて、ないかもしれないのに」
「……お前の母親の『次』よりも、愛していない男との子供が大切か?」
「……ううん」
少女は首を横に振ってから床に膝をつき、そばかすを涙で濡らしながら、勉強道具を拾い上げては強く抱き締めた。
「それでいい。死ぬまでに果たしたいお前の本当の『欲望』は、そこにある」
少女は悪魔の少年を見上げ、涙を拭って頷いた。
少女は自分のベッドの中に戻ると、自分が横たわるベッドに腰かけている悪魔の少年と目がかち合う。
少女は精気を多少吸われた心地よい疲労感に身を委ねながら、暫しなにも話さず、少年と見つめ合う。
嗚呼――そういえば、お礼を言わないとと思い立ったとき、少年のほうから口を開いた。
「暫く、会えなくなる」
「……え?」
「仕事は終わっていないが、都合上な」
「やだ」
「……やだ、って」
頬を膨らまる少女に、少年は困った顔になった。
だって、と、少女は言った。
「『友達』がいなくなるなんて、嫌」
少女が放った二文字に悪魔の少年は一瞬、意外そうに目を瞬かせる。
そこからすぐに少年は元の表情に戻ると、横たわった姿勢でシーツの上に置かれた少女の手の甲に、自分の手を重ねた。
「また会えるさ」
「……いつ?」
「できるだけ。この先も会いに行く」
「本当?」
「本当だ。友達だからな」
「これからも、ずっと?」
「勿論だ」
少年が頷くと、少女は少し安堵した顔で、同時に微睡み始める。
「本当、に。約束……ずっと友達だからね」
「ずっと、友達だ」
「じゃあ、寝るまで、こうしてて。傍にいて――」
「いいぞ」
そんな会話の最中――薄々、少女は気づいていた。目を覚まして朝になると、きっと少年は自分の前から姿を消しているのだろう、と。
それでも、彼女は微睡みながら、信じた。
悪魔の少年が、また友達として、自分が生きているうちに自分の前に現れる『いつか』を。
あと残り少ない命の中で。
一つでも多く自分に『目覚め』が来ることを祈りながら。
『おやすみ』
悪魔の少年の声を、眠りの直前、少女は確かに聞いた。
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