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拗らせ女の同期への秘めたる一途な想い
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経理部長の乾杯の挨拶で飲み会が始まった。
早速、南川さんが動いた。
まずは初田さんのそばに行った。
有無を言わせず、私も連れていかれた。
初田さん、南川さん、私という横並び。
私と南川さんで初田さんを挟んで座ると、万が一、私の方を向いて話す量が増えたら嫌とのこと。
自分勝手すぎてウンザリだ。
誰でもいいから、早く南川さんに落ちてくれと願うばかり。
いつものように私が口火を切る。
「初田さんは休みの日はなにをされているんですか?」
その役目が終わると、口を閉じて唐揚げを頬張る。
あとは南川さんが喋るだけだ。
「休みの日か、映画みたり家でダラダラしてるかな」
「映画、私も好きでよくみてます。初田さんはどんなジャンルが好きなんですか?」
「アクション系とかホラーが好きでよくみてるよ」
「ホラーが好きなんですね。私、一人だと怖くて見れないので今度一緒に行きませんか?」
「そうだね」
「えー、約束ですよ」
ふふ、と笑いながらさりげなく初田さんの腕に左手を添えてボディタッチしている。
反対側の右肘で私を小突いた。
はいはい、彼女の存在ですね。
「あの、初田さんって彼女とかいらっしゃるんですか?」
「彼女はいないよ。募集中」
ニコリと笑って言う。
「えーそうなんですね。モテそうなのに」
南川さんが嬉しそうに言い、もう一度右肘で私を小突いた。
これで私の役目はひと段落だ。
「ちょっとお手洗いに行ってきます」
「いってらっしゃい」
南川さんに告げ、私は立ち上がった。
レストルームに行き、大きなため息をついた。
なんで私が毎回アシストをしないといけないのよ。
自分のことは自分でやれって話。
初対面の人に話を切り出すこっちの身にもなってほしい。
私のメンタルがすり減っていく。
お手洗いを済ませて座敷に戻り、どこに座ろうか悩む。
とりあえず、南川さんのそばに座らないことだけは確かだ。
となれば、いつもの総務部の人たちのところだ。
空いている場所に座り、ビールを飲んでいたら南川さんがやってきた。
肩をポンと叩かれ、「次」と一言。
もー、早く開放してくれと言いたくなった。
次は小笠原課長の隣だ。
さっきの様に横一列で並び、初田さんの時と同じ言葉を言う。
「小笠原課長は休みの日はなにをされているんですか?」
「とくになにも」
「趣味とかはないんですか?」
「とくに」
話が広がらない。
本当に余計なことは言わない人なんだな。
もうお手上げなんですけど。
隣の南川さんを見れば、ジロリと睨まれる。
まるで役立たずと言わんばかりに。
「小笠原課長はなにか運動されているんですか?」
我慢ならなかったのか、南川さんがそう言って小笠原課長の腕を触った。
一瞬、小笠原課長が嫌そうに顔を歪めていた。
でも、それを振り払うことなくそのままにしていたので、この場が嫌な雰囲気にならないように気を遣ってくれていたんだろう。
「学生の頃、バスケをしていた」
「そうなんですね。背が高いしバスケっぽいです」
南川さんが一生懸命話していたけど、小笠原課長の反応は薄い。
これは脈ナシだな、なんて思っていたら南川さんに右肘で小突かれた。
ここで聞くの?
私は仕方なく、いつものセリフを口にした。
「あの、小笠原課長は彼女とかいらっしゃるんですか?」
「申し訳ないがこれ以上、プライベートなことを話すつもりはない」
ピシャリと言われ、黙るしかなかった。
これには、さっきまでにこやかだった南川さんが真顔になり、再び私を睨み付ける。
そして、いきなり立ち上がるとなにも言わずに場所を移動した。
南川さんに理不尽な怒りをぶつけられ、叫びたくなった。
私のせいじゃないでしょ!
私はいつも通り、南川さんの言うことを聞いただけなのに自分勝手すぎる。
経理部長の乾杯の挨拶で飲み会が始まった。
早速、南川さんが動いた。
まずは初田さんのそばに行った。
有無を言わせず、私も連れていかれた。
初田さん、南川さん、私という横並び。
私と南川さんで初田さんを挟んで座ると、万が一、私の方を向いて話す量が増えたら嫌とのこと。
自分勝手すぎてウンザリだ。
誰でもいいから、早く南川さんに落ちてくれと願うばかり。
いつものように私が口火を切る。
「初田さんは休みの日はなにをされているんですか?」
その役目が終わると、口を閉じて唐揚げを頬張る。
あとは南川さんが喋るだけだ。
「休みの日か、映画みたり家でダラダラしてるかな」
「映画、私も好きでよくみてます。初田さんはどんなジャンルが好きなんですか?」
「アクション系とかホラーが好きでよくみてるよ」
「ホラーが好きなんですね。私、一人だと怖くて見れないので今度一緒に行きませんか?」
「そうだね」
「えー、約束ですよ」
ふふ、と笑いながらさりげなく初田さんの腕に左手を添えてボディタッチしている。
反対側の右肘で私を小突いた。
はいはい、彼女の存在ですね。
「あの、初田さんって彼女とかいらっしゃるんですか?」
「彼女はいないよ。募集中」
ニコリと笑って言う。
「えーそうなんですね。モテそうなのに」
南川さんが嬉しそうに言い、もう一度右肘で私を小突いた。
これで私の役目はひと段落だ。
「ちょっとお手洗いに行ってきます」
「いってらっしゃい」
南川さんに告げ、私は立ち上がった。
レストルームに行き、大きなため息をついた。
なんで私が毎回アシストをしないといけないのよ。
自分のことは自分でやれって話。
初対面の人に話を切り出すこっちの身にもなってほしい。
私のメンタルがすり減っていく。
お手洗いを済ませて座敷に戻り、どこに座ろうか悩む。
とりあえず、南川さんのそばに座らないことだけは確かだ。
となれば、いつもの総務部の人たちのところだ。
空いている場所に座り、ビールを飲んでいたら南川さんがやってきた。
肩をポンと叩かれ、「次」と一言。
もー、早く開放してくれと言いたくなった。
次は小笠原課長の隣だ。
さっきの様に横一列で並び、初田さんの時と同じ言葉を言う。
「小笠原課長は休みの日はなにをされているんですか?」
「とくになにも」
「趣味とかはないんですか?」
「とくに」
話が広がらない。
本当に余計なことは言わない人なんだな。
もうお手上げなんですけど。
隣の南川さんを見れば、ジロリと睨まれる。
まるで役立たずと言わんばかりに。
「小笠原課長はなにか運動されているんですか?」
我慢ならなかったのか、南川さんがそう言って小笠原課長の腕を触った。
一瞬、小笠原課長が嫌そうに顔を歪めていた。
でも、それを振り払うことなくそのままにしていたので、この場が嫌な雰囲気にならないように気を遣ってくれていたんだろう。
「学生の頃、バスケをしていた」
「そうなんですね。背が高いしバスケっぽいです」
南川さんが一生懸命話していたけど、小笠原課長の反応は薄い。
これは脈ナシだな、なんて思っていたら南川さんに右肘で小突かれた。
ここで聞くの?
私は仕方なく、いつものセリフを口にした。
「あの、小笠原課長は彼女とかいらっしゃるんですか?」
「申し訳ないがこれ以上、プライベートなことを話すつもりはない」
ピシャリと言われ、黙るしかなかった。
これには、さっきまでにこやかだった南川さんが真顔になり、再び私を睨み付ける。
そして、いきなり立ち上がるとなにも言わずに場所を移動した。
南川さんに理不尽な怒りをぶつけられ、叫びたくなった。
私のせいじゃないでしょ!
私はいつも通り、南川さんの言うことを聞いただけなのに自分勝手すぎる。
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