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素直に気持ちを伝える
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私が昼休憩から戻ると、受話器のところに付箋が貼られていた。
【会議室でカミムラ商事の方三人と副社長が打ち合わせ中。コーヒーは出してるので後はよろしく!野々山】
会議室のドアを見ると、使用中になっていた。
受付の野々山さんが来客対応してくれたみたいだ。
縁さんの退職が決まり、総務の野々山美香さんが受付の担当になった。
と言っても座る席が受付になっただけで、来客がないときは総務の仕事もしている。
しばらくして会議室のドアが開き、ゾロゾロと人が出てきた。
私は仕事をしていた手を止め、そちらに視線を向けると一人の男性と目が合った。
どこかで見たことがある気がする。
「あれ?惣菜屋さんの……」
「上村社長、どうかしましたか?」
副社長がその男性に声をかける。
社長?
失礼にならない程度にその男性を見て、あっと気づく。
そういえば、お弁当とか惣菜を一時期よく買いに来てくれていた人だ。
「いえ、あの女性の方を見たことがあったなと思いまして」
「夏木さんを?」
「夏木さん?下の名前は美桜さんですかね」
「そうですが……何か気になることでもありますか?」
副社長は困惑したように答える。
私もどうして名前を知られているのか不思議に思った。
「前に彼女が惣菜屋で働いていたのを何度か見たことがあって。うちの妻の母が彼女の勤めていたお店に通っていたんです。そこの従業員の人によくしてもらっていると義母が話をしていて、その時に美桜さんのことも言っていたのを耳にしたので。こちらで働いていたんですね」
「はい、先日から勤務しています」
「そうだったんですね」
副社長たちの話を聞いて、もしかしてと考えを巡らせる。
上村って安子さん?
上村社長は私の方を見て微笑んだ。
私は席を立ち、軽く頭を下げた。
「美桜さん、ですかね?うちの義母がよくみなさんの話していたんです。道端さんとかは年代が近いので話が合うと言っていて、美桜ちゃんは若いのにしっかりしていて惣菜のメニューとか考えていると。こんな年寄りにいつも笑顔で話しかけてくれると喜んでました。あの惣菜屋に行けば元気をもらえると私たち夫婦に楽しそうに話してくれていたんですよ」
安子さんがそんな風に私たちのことを話してくれているとは思わなかった。
私たちの方こそ、楽しい話を聞かせてもらったりしていたし。
「本当ですか?そういっていただけてすごく嬉しいです。失礼ですが、以前、お弁当を買いに来ていただいていましたよね」
「よく覚えてくれていましたね」
「何度かお見かけしたことがあったので。それに、安子さん、社長のお義母様は神社やお寺巡りが大好きみたいで、よく旅行の話を聞かせてもらってました」
「神社、お寺……」
上村社長は私の言った言葉に反応したみたいで、何か考えている。
おかしなことを言ってしまったんだろうか、と不安に駆られていた。
【会議室でカミムラ商事の方三人と副社長が打ち合わせ中。コーヒーは出してるので後はよろしく!野々山】
会議室のドアを見ると、使用中になっていた。
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と言っても座る席が受付になっただけで、来客がないときは総務の仕事もしている。
しばらくして会議室のドアが開き、ゾロゾロと人が出てきた。
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どこかで見たことがある気がする。
「あれ?惣菜屋さんの……」
「上村社長、どうかしましたか?」
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社長?
失礼にならない程度にその男性を見て、あっと気づく。
そういえば、お弁当とか惣菜を一時期よく買いに来てくれていた人だ。
「いえ、あの女性の方を見たことがあったなと思いまして」
「夏木さんを?」
「夏木さん?下の名前は美桜さんですかね」
「そうですが……何か気になることでもありますか?」
副社長は困惑したように答える。
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「前に彼女が惣菜屋で働いていたのを何度か見たことがあって。うちの妻の母が彼女の勤めていたお店に通っていたんです。そこの従業員の人によくしてもらっていると義母が話をしていて、その時に美桜さんのことも言っていたのを耳にしたので。こちらで働いていたんですね」
「はい、先日から勤務しています」
「そうだったんですね」
副社長たちの話を聞いて、もしかしてと考えを巡らせる。
上村って安子さん?
上村社長は私の方を見て微笑んだ。
私は席を立ち、軽く頭を下げた。
「美桜さん、ですかね?うちの義母がよくみなさんの話していたんです。道端さんとかは年代が近いので話が合うと言っていて、美桜ちゃんは若いのにしっかりしていて惣菜のメニューとか考えていると。こんな年寄りにいつも笑顔で話しかけてくれると喜んでました。あの惣菜屋に行けば元気をもらえると私たち夫婦に楽しそうに話してくれていたんですよ」
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おかしなことを言ってしまったんだろうか、と不安に駆られていた。
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