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不器用な優しさ
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「ここをこうして……」
風船をハンドポンプで膨らませ、キュッキュッと手でねじっているとパンッ!という音と共に風船が割れた。
「わっ!」
驚いて声が出た。
はぁ、また割れた……。
まだまだへっぴり腰で腕を精いっぱい伸ばし自分から風船を遠ざけながらも、やっと出来るようになってきたところで振り出しに戻る。
最初は怖くて風船をねじることすら出来なかった。
こんなにビビりだとは思わなくて自分の新たな一面を発見した気分だ。
一緒にバルーンアートをする町田さんは、自分の担当ブースと掛け持ちになるので、バルーンアートの方は私が主に担当することになった。
初のイベントでブースを任されるなんて責任重大だけど、風船をねじることに苦戦している。
「麻里奈ちゃん、こういうの得意そうに見えたんだけど……」
町田さんは言葉を濁し、床に落ちている割れた風船を見ながら苦笑いする。
期待外れでごめんなさいって感じだ。
町田さんはコツをつかんだのかネットの動画を見ながらいろんな種類のバルーンアートにチャレンジしていた。
会議室のテーブルの上には出来上がった犬や剣が数本置いてある。
どうしたらそんな短時間で習得できるんだろう。
「うぅ……、ホントに苦手だから町田さんに全部お任せしてもいいですか?」
つい泣き言をいってしまうのは仕方ないと思う。
「任せろって言ってあげたいけど、そういう訳にもいかないからね。一緒に頑張ろうぜ」
満面の笑みを向けてくる。
町田さんは今もキュッと風船をねじり、可愛いピンクのリボンが出来上がってるし!
それに引き替え私は……ため息しか出ない。
落ちている風船の残骸を拾い袋に入れる。
もう一度ポンプで風船を膨らませ、ねじりながら形を作っていく。
どうにか出来た剣は、持ち手の部分が少し短くて不恰好だった。
自分の不甲斐なさに落ち込み、一休みしたくなった。
「ちょっと休憩してもいいですか?」
「あー、だったら今日はもう終わろうか。そんなに根つめてやるもんでもないしな。はい、これは麻里奈ちゃんにプレゼント!」
そう言って私にさっき作っていたリボンの風船を渡してくれた。
「ありがとうございます」
「じゃ、片付けようぜ」
出来上がった犬や剣、リボンを紙袋に入れて会議室を出る。
「手が臭いな」
「ホントですね」
歩きながらお互いに自分の手を臭って苦笑いする。
「俺、まだ仕事が残っているから気を付けて帰りなよ」
「はい。付き合わせてしまってすみません」
「なに言ってるんだよ。俺が無理矢理、麻里奈ちゃんを道連れにしたようなもんだから気にすんなって。それに、いい気分転換になって楽しいから」
確かにそうですよね。
元はといえば、町田さんが私を巻き込んだんだし……という本音は言えず。
だけど、自分の仕事を後回しにして付き合ってくれていることに感謝してる。
一人だと間違いなく気持ちが萎えていると思う。
風船をハンドポンプで膨らませ、キュッキュッと手でねじっているとパンッ!という音と共に風船が割れた。
「わっ!」
驚いて声が出た。
はぁ、また割れた……。
まだまだへっぴり腰で腕を精いっぱい伸ばし自分から風船を遠ざけながらも、やっと出来るようになってきたところで振り出しに戻る。
最初は怖くて風船をねじることすら出来なかった。
こんなにビビりだとは思わなくて自分の新たな一面を発見した気分だ。
一緒にバルーンアートをする町田さんは、自分の担当ブースと掛け持ちになるので、バルーンアートの方は私が主に担当することになった。
初のイベントでブースを任されるなんて責任重大だけど、風船をねじることに苦戦している。
「麻里奈ちゃん、こういうの得意そうに見えたんだけど……」
町田さんは言葉を濁し、床に落ちている割れた風船を見ながら苦笑いする。
期待外れでごめんなさいって感じだ。
町田さんはコツをつかんだのかネットの動画を見ながらいろんな種類のバルーンアートにチャレンジしていた。
会議室のテーブルの上には出来上がった犬や剣が数本置いてある。
どうしたらそんな短時間で習得できるんだろう。
「うぅ……、ホントに苦手だから町田さんに全部お任せしてもいいですか?」
つい泣き言をいってしまうのは仕方ないと思う。
「任せろって言ってあげたいけど、そういう訳にもいかないからね。一緒に頑張ろうぜ」
満面の笑みを向けてくる。
町田さんは今もキュッと風船をねじり、可愛いピンクのリボンが出来上がってるし!
それに引き替え私は……ため息しか出ない。
落ちている風船の残骸を拾い袋に入れる。
もう一度ポンプで風船を膨らませ、ねじりながら形を作っていく。
どうにか出来た剣は、持ち手の部分が少し短くて不恰好だった。
自分の不甲斐なさに落ち込み、一休みしたくなった。
「ちょっと休憩してもいいですか?」
「あー、だったら今日はもう終わろうか。そんなに根つめてやるもんでもないしな。はい、これは麻里奈ちゃんにプレゼント!」
そう言って私にさっき作っていたリボンの風船を渡してくれた。
「ありがとうございます」
「じゃ、片付けようぜ」
出来上がった犬や剣、リボンを紙袋に入れて会議室を出る。
「手が臭いな」
「ホントですね」
歩きながらお互いに自分の手を臭って苦笑いする。
「俺、まだ仕事が残っているから気を付けて帰りなよ」
「はい。付き合わせてしまってすみません」
「なに言ってるんだよ。俺が無理矢理、麻里奈ちゃんを道連れにしたようなもんだから気にすんなって。それに、いい気分転換になって楽しいから」
確かにそうですよね。
元はといえば、町田さんが私を巻き込んだんだし……という本音は言えず。
だけど、自分の仕事を後回しにして付き合ってくれていることに感謝してる。
一人だと間違いなく気持ちが萎えていると思う。
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