バウンスガールズ

にくづき

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プロローグ

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「ショーほど楽しい商売はない」と誰かは言ったようだが、実際のところそんなことはない。昼夜を問わず行われる様々なイベントが隆盛と衰退を繰り返し、そこに絡む人々は激しく争っている、ショーはそんな世界だ。
  そこに華を添え、ひとときの癒しをもたらすのがダンスだ。
ショーの世界の殺伐さとは裏腹に、ダンスは互いを認めあう平和な世界だった。各地域に登録された名簿から多様なメンバーが選ばれ、1つのチームとして各イベントを盛り上げるという仕組みが、その平和を支えていたのだった。

しかしそれも時代とともに変わった。

  ショーで行われるダンスで最も重要とされているのはセクシーさだ。彼女らは自分の思う最高の方法でそれを表現してきたが、いつしかそれらは2つの大きな大系にまとまっていった。1つは身体の細さを強調し、美しさのなかの儚さを表現するもの、もう1つは身体の揺れを大きくし、激しく迫力あるパフォーマンスをするものだ。両者の目に見える違いは、なんといっても演者の体つきだ。前者はバレリーナの体型を理想とし食事制限等あらゆる方法で細い身体を維持するが、後者は逆に肉付きの良い身体を目指し、太るための食事とそれを肉として定着させるためのトレーニングに勤しんでいる。この体型の違いから、前者は「スキニーズ」後者は「ファティーズ」と呼ばれるようになった。
  両者は初めのうちは共存していたものの、この流派の違いに気付き始めた狡猾なイベント企画者たちは「スキニーズのみ」「ファティーズのみ」の派遣を要請し始めた。平等に与えられていた仕事は奪い合いで手にするものになり、それまで相手にしなかった小さなイベント、安いイベントにも行かざるを得なくなった。両者が顔を突き合わせればすぐさま口論になり、互いを罵り合う言葉の中に、かつてあった平和な時代と同じものはなかった。
  これはそんな時代を生きた美しき女性たちの物語だ。
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