救国の魔女と滅国の皇子～プログラマーは魔法も作れる！？～

仲間

４６．心肺蘇生

「助けてくれ！！娘なんだ！！」

「アンソンもう無理だ。心臓が止まっちまったんだ...」

「傷は治ってますか？」

「ああ...ただ、その時にはもう虫の息だった...」

「ならまだ間に合うかもしれません。」

カバンを置いて、女性の口に耳を近付けて、脈を取った。

脈も呼吸もない。でも、息を引き取ってからまだ時間は経ってない。

まずは気道の確保だ。女性の頭を動かして口を開かせた。

「失礼します。」

胸元を開けようとしたけど、コルセットが邪魔をする。

「お父さん、見えないようにそのコートで囲ってください。」

「あ、ああ！！」

私は剣でコルセットを引き裂いた。

心臓の位置を指で確認して、手を重ねて心臓の上に置いた。

「処置をよく見ていてください。心臓の蘇生方です。」

「心臓の蘇生だと！？」

「行きます。」

教習所で習った心臓マッサージ、役に立つ機会なんて来て欲しくなかった。

私よりずっと若いじゃない。初恋もまだかもしれない。この世にはクソみたいなことが沢山あるけど、素敵な事も沢山あるんだから、戻ってきて。

願いを込めて何度も心臓マッサージをした。

呼吸を見ていた医師が私を止めた。

「い、息を吹き返した...生き返ったぞ！！」

私も呼吸を確認した。弱いけど、確かに息をしていた。

「今の治療法のタイムリミットは、心停止から２分です。蘇生が遅くなるほど脳に障害が残ります。外傷が治っているのに心臓が止まった患者に使ってください。マッサージだけでも効果はあります。やり方は覚えましたか？」

「あ、ああ。大丈夫だ。」

「治癒師の嬢ちゃん！ここはもう大丈夫だ！」

「わかりました！現場に向かいます！」

カバンを掴んで、私は外に飛び出した。

人は東側の門から来てる。私があの狐に出逢った方向だ。

どうか無事であってほしい。

「コノエ様ー！！！」

走る私の元に、追い越した馬が近付いてきた。

振り返ると、昨日、主任を止めていた職員だった。

「主任を止めてください！！魔獣は貴重な生き物だからとかなんとか言って、一人で出て行っちゃったんです！！」

「分かりました。付きてきてください。」

サーチで主任を見つけ出し、私は足を早めた。

「見付けた。」

私は主任の顔を確認してジャンプし、首根っこを掴んで体を反転させ、主任を馬から引き摺り下ろした。