運命のパズル

5章

葉羽の推理開始

第5章: 葉羽の推理開始

翌日の早朝、神藤葉羽は学校に足を踏み入れた。まだ誰も来ていない静寂の中、彼の足音だけが廊下に響く。
「よし、ここから始めよう」
葉羽は小声で呟きながら、会計室の前に立った。ドアには警察の封鎖テープが貼られているが、それを無視して中に入る。
室内は、昨日の混乱そのままの状態だった。散らばった書類、開けっ放しの金庫、そして床に落ちたペン。葉羽はゆっくりと室内を歩き回り、細部まで観察した。
「ふむ...」
彼は金庫の前にしゃがみ込み、虫眼鏡を取り出した。金庫の鍵穴を丁寧に調べる。
「これは...ピッキングの跡？いや、違う。鍵を使って開けられている」
葉羽は眉をひそめた。「つまり、犯人は鍵を持っていた。または...」
彼の思考は突然の声で中断された。
「葉羽くん！」
振り返ると、望月彩由美が息を切らせて立っていた。
「彩由美...こんな早くどうしたんだ？」
彩由美は少し恥ずかしそうに笑った。「葉羽くんなら、きっと早く来てるって思って...」
葉羽は少し驚いたが、すぐに表情を戻した。「そうか。じゃあ、一緒に調べよう」
二人で室内を調査する中、彩由美が突然声を上げた。
「あ、これ...」
彼女が指さす先には、小さな紙切れが落ちていた。葉羽はそれを拾い上げ、注意深く観察した。
「数字の羅列...7-15-9-14...これは何かの暗号か？」
彩由美は首をかしげた。「でも、山田さんの筆跡じゃないわ」
葉羽は紙切れをポケットにしまった。「重要な手がかりになるかもしれない。よく見つけたな、彩由美」
彩由美は嬉しそうに微笑んだ。
その時、廊下から足音が聞こえてきた。
「誰かが来る。ここを出よう」
二人は急いで会計室を出た。廊下に出ると、そこには佐々木が立っていた。
「おはよう、二人とも。こんなに早くから...」
葉羽は冷静に答えた。「ああ、少し調査していたんだ。何か分かったことはあるか？」
佐々木は首を振った。「警察も動いてるけど、まだ何も...」
葉羽は腕を組んだ。「そうか。じゃあ、これから職員室に行って先生たちから話を聞こう」
三人で職員室に向かう途中、葉羽は思考を巡らせていた。
「鍵、暗号、そして山田の失踪...全てが繋がっているはずだ」
職員室では、担任の高橋先生が彼らを迎えた。
「神藤くん、みんな心配してるよ。何か進展はあったかい？」
葉羽は真剣な表情で答えた。「はい、いくつか気になる点が...先生、山田さんについて何か気づいたことはありませんか？最近の様子とか」
高橋先生は少し考え込んだ。「そういえば...最近、山田さんは少し落ち着かない様子だったかな。誰かと話している姿をよく見かけたんだが...」
「誰かと？」葉羽の目が鋭く光った。
「ああ、確か...」
その瞬間、校内放送が鳴り響いた。
「緊急連絡です。全校生徒は直ちに体育館に集合してください」
葉羽たちは顔を見合わせた。
「何かあったのか...」
彩由美が不安そうに呟いた。葉羽は彼女の肩に手を置いた。
「大丈夫だ。一緒に行こう」