時空の歪みと幽霊屋敷の謎

1章

奇妙な招待状

梅雨明けの空が、ようやく青さを増し始めたある日の午後、神藤葉羽はいつものように古本屋を訪れていた。書棚の間を縫うように歩き、お気に入りの推理小説のコーナーへと足を運ぶ。眼鏡をずらして書名と著者を確かめながら、まるで宝石を選ぶように一冊一冊を手に取る。

そんな葉羽の背後から、けたたましいチャイムの音が響いた。振り返ると、そこには見慣れたピンク色の封筒を持った彩由美が立っていた。

「葉羽くん！会えて嬉しい！」

彩由美は、いつも通りの明るい笑顔でそう言うと、葉羽に封筒を手渡した。

「これ、葉羽くんに渡してって、おじいちゃんが言ってたの。大事なものだって」

戸惑いながら封筒を受け取った葉羽は、差出人の欄に書かれた見慣れた文字に目を奪われた。それは、彩由美の祖父、望月家の当主の名前だった。

「おじいちゃんから？何かあったの？」

「うーん、おじいちゃん、最近ずっと元気がないんだ。この封筒のことしか言わなくて…」

彩由美の表情は曇っていた。葉羽は、何か重大なことが起きていると感じた。

後日、葉羽は彩由美の誘いで、彼女の屋敷を訪れることになった。屋敷は、古木の生い茂る庭に囲まれた、重厚な造りの洋館だった。一歩足を踏み入れると、薄暗い廊下にひんやりとした空気が流れ、どこか懐かしいような、そして同時に不気味な雰囲気に包まれた。

「この屋敷、すごいね。まるでタイムスリップしたみたい」

葉羽は、周囲を見回しながら感嘆の声を漏らした。彩由美は、少し不安そうに葉羽の腕に手をかけた。

「そうでしょ。でも、この屋敷には、いろんな噂があるんだ。幽霊が出るって…」

彩由美の言葉に、葉羽は興味津々だった。彼は、幼い頃から推理小説を読みあさり、謎解きが大好きだった。

「幽霊、ね。面白そうだ」

葉羽は、そう言いながら、封筒から一枚の招待状を取り出した。そこには、美しい書体でこう書かれていた。

「神藤葉羽様へ
時空を超える物語が始まる。
望月家へようこそ」

招待状の裏には、日付と時間が記されていた。それは、数日後の夜、つまり今夜のことだった。

「今夜、この屋敷で何かが起こるのかな？」

葉羽は、高揚感と同時に、一抹の不安を感じた。彼は、この招待状が意味するものが何なのか、そして、この屋敷に隠された秘密が何なのか、知りたくなった。