声の響く洋館

葉羽

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9章

真実の扉

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神藤葉羽は、洋館の静寂に包まれながら、再び日記を手に取った。失踪した友人たちの声、そして過去の住人たちの悲劇を解決するために必要な鍵を見つけ出すため、彼はページをめくる手を急がせた。彩由美は彼の隣で、心配そうに周囲を見渡しながらも、彼を支えるように静かに待っていた。

「鍵についての記述があったはず…」葉羽は日記に目を凝らした。彼は過去の住人がどのようにこの家に囚われ、どのように声に導かれたのかを解き明かそうとしていた。

やがて、彼は一つのページに目を止めた。そこには、鍵が隠されている場所についての記録があった。

**「家の中心にある大きな時計の中に、鍵が隠されている。」**

「時計の中に鍵がある?」葉羽はつぶやいた。「それなら、あの古い時計を探しに行こう!」

「でも、あの時計はどこにあるの?」彩由美は心配そうに尋ねた。

「家の中心にあるということだから、リビングのどこかにあるはずだ。急ごう!」葉羽は決意を持って立ち上がり、リビングルームに向かって足を進めた。

二人は急ぎ足でリビングへ戻り、部屋の中心にある古い時計の姿を確認した。時計は大きく、装飾が施されているが、年月の経過とともに色あせ、埃まみれになっていた。

「これが…その時計?」彩由美は目を輝かせた。

「そうだ、これが鍵の隠されている場所だ。」葉羽は時計に近づき、静かにその表面を手でなぞった。動かすと、時計の針が静かに回り、かすかな音を立てる。

「どうやって開けるの?」彩由美が尋ねる。

「まずは、どこかに隠し扉があるかもしれない。何か動かせる部分がないか、探してみよう。」葉羽は時計をじっくりと見つめ、周囲を探り始めた。

すると、時計の背面に小さなネジがあるのを見つけた。「ここに何かあるかもしれない。ネジを回してみるよ。」葉羽はネジを回し始めた。

すると、突然、時計がきしむ音を立てて動き、背面が開いた。中には、古びた鍵が隠されているのが見えた。

「見て!鍵だ!」葉羽は興奮して叫んだ。

彩由美もその光景に目を輝かせた。「本当にあったんだ…!」

葉羽は鍵を手に取り、しっかりと握りしめた。「これで、あの扉を開けられる!」

「でも、開けたらどうなるの?」彩由美は不安そうに言った。「何か恐ろしいことが待っているかもしれない。」

「それでも、俺たちは真実を知る必要がある。過去の声を解放するためには、恐れを乗り越えなければならないんだ。」葉羽は決意を固め、どっしりとした気持ちでリビングを後にした。

二人は、あの大きな扉の前に戻った。葉羽は鍵を扉の鍵穴に差し込み、静かに回した。カチッという音とともに、扉がゆっくりと開いた。

「行こう。」葉羽は彩由美を振り返り、彼女の手を優しく引いた。二人は扉を通り抜け、暗い部屋の中に足を踏み入れた。

部屋の中は薄暗く、ほこりが舞っていた。葉羽は懐中電灯を照らし、周囲を見渡した。壁には古い写真が掛けられており、それはかつてこの家に住んでいた人々の姿を映し出していた。

「この部屋、何か特別な感じがする…」彩由美は不安そうに言った。

「確かに。ここに何かが隠されている。過去の住人たちの思いが残っているのかもしれない。」葉羽は部屋の中央に進み、何か手がかりを探し始めた。

その時、ふと耳にした声が彼の心を引き裂いた。「助けて…」

「また、声が…」葉羽は驚き、彩由美の方を見た。

「どこから聞こえるの?」彩由美は恐れを抱きながら尋ねた。

「声の正体を知るためには、ここにあるものを探さないと。」葉羽は周囲を探り続けた。

やがて、彼は壁の一部が他の部分と異なることに気づいた。「ここ、何かが隠されているかもしれない。」葉羽はその部分に手を当て、押してみた。

すると、壁がゆっくりと開き、その奥に隠された小さな部屋が現れた。そこには、古い日記や手紙が散らばっている。

「これ、何だろう…」葉羽はその中から一冊の日記を拾い上げた。

「それ、何が書いてあるの?」彩由美は興味津々で尋ねる。

葉羽は日記を開き、ページをめくり始めた。そこには、家族の一人が書いた思いが綴られていた。

**「私は声を聞く。助けを求める声。だが、私はその声に導かれてしまった。逃げようとしても、逃げられない。」**

「やっぱり、声はこの家の悲劇と関係があるんだ…」葉羽はつぶやいた。

「この家族も、声に囚われてしまったの?」彩由美は不安そうに言った。

「そうだ。彼らも、声に引き寄せられ、永遠にこの家に囚われている。俺たちが真実を知ることで、彼らを解放する手助けができるかもしれない。」葉羽は日記を読み進めた。

ページをめくるごとに、過去の悲劇が明らかになっていく。失踪した友人たちの声が、この家族の未練と深く結びついていることが分かってきた。

「ここには、過去の住人たちが解放されるための手がかりがある。」葉羽は日記を手にし、決意を新たにした。「この声の正体を明らかにし、彼らを解放しよう。」

「私も手伝うよ、葉羽くん。」彩由美は勇気を振り絞り、彼のそばに立った。「一緒に真実を見つけよう。」

「ありがとう、彩由美。二人で力を合わせれば、きっと真実にたどり着ける。」葉羽は微笑み、再び部屋の中を探索し始めた。

果たして、彼らはどのような真実に辿り着くのか。そして、過去の悲劇を解消するために何をしなければならないのか。葉羽はその先に待ち受ける運命に、期待と不安を胸に抱きながら進むのだった。 

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