ピエロの嘲笑が消えない

葉羽

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8章

悪夢からの覚醒

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差出人不明のメールに添付された焼け焦げたピエロの仮面の写真。それは、灰塚院長が幼少期に体験したサーカス火災を想起させるには十分すぎるものだった。そして、「真のゲームはこれからだ」というメッセージは、まるで葉羽を挑発するかのような、不気味な響きを帯びていた。

「これは…一体どういうことだ?」

葉羽は呟き、彩由美に写真を見せた。彩由美も恐怖に顔を青ざめた。

「怖い…一体誰がこんなメールを…?」

二人は不安に駆られながらも、このメールが事件の真相を解き明かす鍵になるかもしれないと考え、メッセージの真意を探ろうとした。

葉羽は、まずメールの送信元を特定しようと試みたが、送信者は匿名で、追跡することはできなかった。次に、写真のピエロの仮面について調べ始めた。仮面は焼け焦げており、詳細は判別しづらいが、灰塚院長が保管していた写真に写っていたピエロの仮面と酷似しているように見えた。

「もしかして…火災事故の真犯人はまだ捕まっていないのか…?」

葉羽は呟いた。もしそうだとしたら、院長は真犯人に復讐するために、患者たちを利用してピエロの幻覚を見せていたことになる。そして、「真のゲームはこれからだ」というメッセージは、真犯人からの挑戦状なのかもしれない。

葉羽は、火災事故について改めて詳しく調べる必要があると感じた。彼は警察に連絡し、火災事故の捜査資料を閲覧させてもらえないかと依頼した。しかし、警察は事件から既に数十年が経過しており、資料は既に廃棄されていると回答した。

諦めかけたその時、葉羽は彩由美の言葉でハッとした。

「そういえば、叔母さんが昔、サーカスで働いていたって言ってたわ。もしかしたら、何か知っているかもしれない…」

葉羽と彩由美はすぐに静香が入院している病院へと向かった。静香は、幻覚誘導装置の影響から徐々に回復しつつあったが、まだ精神的に不安定な状態だった。

葉羽は静香に、サーカス火災について何か知っていることはないかと尋ねた。静香は最初は何も覚えていないと言っていたが、葉羽がピエロの仮面の写真を見せると、彼女の表情が変わった。

「…この仮面…覚えてる…火事の夜…ピエロが…笑ってた…」

静香は断片的な記憶を語り始めた。火災の夜、彼女は逃げ遅れた子供を助けようとしていた。その時、彼女はピエロの仮面を被った男が、火を放つところを目撃したのだ。

「…ピエロは…笑ってた…怖かった…」

静香は恐怖に震えながら、当時の記憶を語った。葉羽は静香の証言を録音し、警察に提出することにした。静香の証言は、火災事故の真相を解明する上で重要な証拠となるだろう。

そして、葉羽は静香の証言から、もう一つ重要なことに気づいた。静香が見たピエロは、灰塚院長が見ていたピエロとは別の人物だったのだ。つまり、火災事故の真犯人は、灰塚院長が考えていた人物とは別人だったのだ。

葉羽は、灰塚院長が長年、間違った人物に復讐心を抱き続けていたことを知った。院長は、自らのトラウマに囚われ、真実を見失っていたのだ。

葉羽は警察に連絡し、静香の証言と、火災事故の真犯人に関する新たな情報を伝えた。警察はすぐに捜査を開始し、ついに真犯人を逮捕することに成功した。真犯人は、サーカスの元従業員で、恨みを抱いて火災を起こしたことが判明した。

灰塚院長は、逮捕された真犯人の顔を見て、愕然とした。彼は長年、間違った人物に復讐心を抱き続けていたのだ。そして、自らの行いを深く後悔した。

全ての真相が明らかになり、クロウ・ハウスの悪夢は終わりを告げた。患者たちは徐々に回復し、静香も笑顔を取り戻した。葉羽は、事件を通して人間の心の脆さと、真実を追求することの大切さを学んだ。

しかし、葉羽の心には、まだ拭いきれない不安が残っていた。「真のゲームはこれからだ」というメッセージは、一体誰から送られてきたのだろうか? そして、その真意は何だったのだろうか?

葉羽は、この謎がいつか再び姿を現すことを予感していた。そして、その時に備えて、彼は心の準備をしていた。
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