視界迷宮の村 絶望の連鎖と歪む残像

17章

視界迷宮の核心

日光寺晴玄の逮捕により、白髯村を震撼させていた連続殺人事件は、ついに終結を迎えた。しかし、事件の真相があまりにも複雑怪奇であったため、村人たちは、何が起きたのか、完全には理解できずにいた。葉羽は、白銀館の大広間に集まった村人たちに向けて、事件の全容を説明することにした。

「皆さん、本日はお集まりいただき、ありがとうございます。」葉羽は、静かに口を開いた。彼の声は、大広間の静寂の中に響き渡り、村人たちの注目を集めた。

「私は、この数日間、白髯村で起きた一連の事件について、調査を行ってきました。そして、ついに、事件の真相を解き明かすことができました。」

葉羽は、ホワイトボードに、事件の関係図と、各事件の概要を書き込んだ。彼は、視覚誘導装置、時間操作レンズ、幻覚剤、そして、白髯村に伝わる三つの迷信について、詳細に説明した。

「日光寺晴玄、彼は、数十年前の集団失明事件の黒幕であり、今回の連続殺人事件の首謀者でもありました。彼は、樹海一族への復讐心から、これらの事件を企てたのです。」

葉羽の言葉に、村人たちは息を呑んだ. 彼らは、村長として尊敬されていた晴玄が、このような凶悪な事件を起こしたとは、信じられないといった様子だった.

葉羽は、集団失明事件について説明を始めた。「晴玄は、樹海一族に深い恨みを抱いていました。彼は、過去に樹海一族によって家族を奪われ、全てを失ったのです。そして、彼は、復讐のために、集団催眠装置を開発し、集団失明事件を引き起こしました。」

彼は、装置の仕組みを詳しく説明した。装置は、特定の周波数の音波と光のパターンを発生させることで、人間の脳波に影響を与え、催眠状態に誘導する。晴玄は、影の祠で行われた儀式を利用して、村人たちを催眠状態に陥れ、集団失明を引き起こしたのだ。

「しかし、晴玄の計画は失敗に終わりました. 樹海一族は、事件の真相を隠蔽し、被害者を装うことで、罪を逃れたのです。」

葉羽は、連続殺人事件について説明を続けた。「晴玄は、復讐の機会を伺っていました. そして、樹海蒼也の死が、彼の復讐計画の引き金となりました. 蒼也は、集団失明事件の真相を知っており、晴玄の罪を暴く可能性がありました. 晴玄は、それを阻止するために、蒼也を殺害したのです。」

彼は、視覚誘導装置を使った密室トリック、時間操作レンズを使った時間差トリック、そして、幻覚剤を使った集団パニックについて、詳細に説明した。彼は、晴玄が、これらのトリックを駆使して、自らの犯行を隠蔽し、罪を逃れようとしていたことを明らかにした.

「晴玄は、非常に狡猾で、周到な人物でした。彼は、綿密な計画を立て、あらゆる可能性を考慮に入れて、犯行を実行しました。しかし、彼は、一つのミスを犯しました。それは、私という存在を計算に入れていなかったことです。」

葉羽は、静かに言った。「私は、推理小説が好きで、様々なトリックについて知識を持っていました. そして、私は、晴玄のトリックを見破り、彼の正体を暴くことができました。」

彼は、白樫銀次についても言及した。「銀次は、晴玄の共犯者でした。彼は、晴玄に脅迫され、事件に加担させられていました。しかし、銀次は、良心的な人物でした. 彼は、自らの罪に耐えきれず、自殺してしまったのです。」

葉羽は、深いため息をついた。「この事件は、人間の心の闇が生み出した悲劇です。晴玄の復讐心は、彼自身を破滅へと導き、多くの人々を不幸にしました。」

彼は、村人たちに向けて、真剣な表情で語りかけた。「私は、この事件を通じて、人間の心の弱さと脆さを改めて認識しました. そして、私は、二度とこのような悲劇が起こらないように、真実を追求し、正義を貫くことを誓います。」

葉羽の説明が終わると、大広間は静まり返った。村人たちは、事件の真相に衝撃を受け、言葉を失っていた.

彩由美は、葉羽の手を握りしめ、静かに言った。「葉羽くん、お疲れ様。よく頑張ったね。」

「ああ。」葉羽は、彩由美に微笑みかけ、頷いた。「これで、全てが終わった。」

彼は、窓の外の景色を見つめた。空は晴れ渡り、太陽が燦々と輝いていた. 白髯村は、長い闇から解放され、新たな光を取り戻しつつあった。

葉羽は、この事件を通じて、「視界迷宮」という言葉の真の意味を理解した。それは、単に視覚を操るトリックのことではなかった。それは、人間の心が作り出す、迷宮のような世界のことだった。人は、自分の心に迷い込んだとき、真実を見失い、道を誤ってしまう. そして、その結果、悲劇が生まれるのだ。

彼は、二度とこのような迷宮に迷い込まないように、そして、迷宮に迷い込んだ人々を救い出すことができるように、これからも真実を追求し続けると心に誓った。

彼は、彩由美と共に、白髯村を後にした。二人は、事件の記憶を胸に刻み、それぞれの日常へと戻っていった. しかし、白髯村での出来事は、二人の心に深く刻まれ、彼らの未来を大きく左右することになるだろう.