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4章
第二の密室
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望月俊介の容態は一時的な急性症状で、幸い一命は取り留めた。しかし、彼は依然として意識が朦朧としており、まともな会話は難しい状態が続いていた。
「やはり、この館のどこかに仕掛けがあるはずです」
葉羽は食堂に集まった参加者たちに語りかけた。しかし、誰も積極的な反応を示さない。皆が誰かを疑い、警戒している様子が手に取るように分かった。
その日の午後3時。音響工学者の鈴木香織が自室に籠もると言い出した。
「少し実験をしたいの」彼女は不安げな表情を浮かべながら言った。「この館の音響特性に、何か異常があるような気がして...」
「気を付けてください」葉羽は警告した。「山岸さんと同じように...」
「ええ、分かっています」鈴木は微笑んだ。「だから、1時間後には必ず戻ってくるわ。それまでに何か分かるはず」
しかし、約束の1時間が過ぎても、鈴木は現れなかった。
「また...」誰かが震える声で呟いた。
全員で鈴木の部屋へ向かう。案の定、内側から完全に施錠されていた。
「破りましょう」葉羽が決断を下した。
ドアを破った瞬間、誰もが息を呑んだ。
鈴木香織が、山岸と同じように首を吊っていた。しかし、今回は何かが違った。彼女の手には、小型の録音機が握られていた。
「これは...」葉羽が録音機を手に取る。再生ボタンを押すと、最初はノイズだけが流れた。しかし、途中から鈴木の声が聞こえ始める。
『異常です...この館の音響特性が...まるで人工的な...』
『周波数が...これは超音波?...まさか、あの実験の...』
『誰か来た?...なぜ扇風機が...気分が...』
そこで録音は途切れていた。
葉羽は部屋を細かく調べ始めた。今回も室温は異常に低い。扇風機の位置も山岸の部屋と同じ。そして床には、あの微細な金属片が...。
「あの...葉羽くん」彩由美が震える声で呼びかけた。「壁に何か書いてある」
カーテンの陰に、かすかな文字が走り書きされていた。
『実験番号2-B 音響波による共鳴実験 成功』
「実験...」葉羽は唇を噛んだ。「この殺人は、誰かの実験なんだ」
その時、彩由美が突然めまいを訴え始めた。
「大丈夫?」葉羽が支えると、彼女の体が異常に冷たい。
「部屋から出ましょう」神経科医の白石が叫んだ。「ここにいると危険です」
全員が部屋を出た後、葉羽は録音機の中身を詳しく解析することにした。波形を分析すると、人間の可聴域を超える周波数が検出された。
「鈴木さんは何かを発見しかけていた」葉羽は確信した。「そして、それが彼女の命取りになった」
夕刻、台風は更に激しさを増していた。館内の電気は度々ちらつき、どこからともなく低い振動音が響いてくる。
「葉羽くん」彩由美が不安そうに言った。「私の部屋の扇風機も、さっきから妙な音がするの」
葉羽は即座に彩由美の腕を引いた。「今夜は僕の部屋で過ごそう。一人になるのは危険だ」
その夜、二人は葉羽の部屋で、背中合わせに座っていた。
「ねぇ」彩由美が小声で言う。「私たち、ここから出られるのかな」
葉羽は答えなかった。窓の外では稲妻が光り、その瞬間、廊下に人影が見えた気がした。しかし、確認しに行く勇気は誰にもなかった。
深夜、館内放送が再び響く。
『第二の実験、完了。次のステージに進みます。皆様、どうぞご期待ください』
葉羽は、自分のノートに新たな項目を書き加えた。
・超音波の正体
・扇風機の機能
・実験の目的
・被害者の選定基準
そして、部屋の隅に置かれた扇風機を、ガムテープで完全に封鎖した。今や、この館の中で信用できるものは何一つない。
彩由美が眠りについた後も、葉羽は窓の外を見つめ続けた。月明かりに照らされた館の影が、巨大な怪物のように見えた。
「やはり、この館のどこかに仕掛けがあるはずです」
葉羽は食堂に集まった参加者たちに語りかけた。しかし、誰も積極的な反応を示さない。皆が誰かを疑い、警戒している様子が手に取るように分かった。
その日の午後3時。音響工学者の鈴木香織が自室に籠もると言い出した。
「少し実験をしたいの」彼女は不安げな表情を浮かべながら言った。「この館の音響特性に、何か異常があるような気がして...」
「気を付けてください」葉羽は警告した。「山岸さんと同じように...」
「ええ、分かっています」鈴木は微笑んだ。「だから、1時間後には必ず戻ってくるわ。それまでに何か分かるはず」
しかし、約束の1時間が過ぎても、鈴木は現れなかった。
「また...」誰かが震える声で呟いた。
全員で鈴木の部屋へ向かう。案の定、内側から完全に施錠されていた。
「破りましょう」葉羽が決断を下した。
ドアを破った瞬間、誰もが息を呑んだ。
鈴木香織が、山岸と同じように首を吊っていた。しかし、今回は何かが違った。彼女の手には、小型の録音機が握られていた。
「これは...」葉羽が録音機を手に取る。再生ボタンを押すと、最初はノイズだけが流れた。しかし、途中から鈴木の声が聞こえ始める。
『異常です...この館の音響特性が...まるで人工的な...』
『周波数が...これは超音波?...まさか、あの実験の...』
『誰か来た?...なぜ扇風機が...気分が...』
そこで録音は途切れていた。
葉羽は部屋を細かく調べ始めた。今回も室温は異常に低い。扇風機の位置も山岸の部屋と同じ。そして床には、あの微細な金属片が...。
「あの...葉羽くん」彩由美が震える声で呼びかけた。「壁に何か書いてある」
カーテンの陰に、かすかな文字が走り書きされていた。
『実験番号2-B 音響波による共鳴実験 成功』
「実験...」葉羽は唇を噛んだ。「この殺人は、誰かの実験なんだ」
その時、彩由美が突然めまいを訴え始めた。
「大丈夫?」葉羽が支えると、彼女の体が異常に冷たい。
「部屋から出ましょう」神経科医の白石が叫んだ。「ここにいると危険です」
全員が部屋を出た後、葉羽は録音機の中身を詳しく解析することにした。波形を分析すると、人間の可聴域を超える周波数が検出された。
「鈴木さんは何かを発見しかけていた」葉羽は確信した。「そして、それが彼女の命取りになった」
夕刻、台風は更に激しさを増していた。館内の電気は度々ちらつき、どこからともなく低い振動音が響いてくる。
「葉羽くん」彩由美が不安そうに言った。「私の部屋の扇風機も、さっきから妙な音がするの」
葉羽は即座に彩由美の腕を引いた。「今夜は僕の部屋で過ごそう。一人になるのは危険だ」
その夜、二人は葉羽の部屋で、背中合わせに座っていた。
「ねぇ」彩由美が小声で言う。「私たち、ここから出られるのかな」
葉羽は答えなかった。窓の外では稲妻が光り、その瞬間、廊下に人影が見えた気がした。しかし、確認しに行く勇気は誰にもなかった。
深夜、館内放送が再び響く。
『第二の実験、完了。次のステージに進みます。皆様、どうぞご期待ください』
葉羽は、自分のノートに新たな項目を書き加えた。
・超音波の正体
・扇風機の機能
・実験の目的
・被害者の選定基準
そして、部屋の隅に置かれた扇風機を、ガムテープで完全に封鎖した。今や、この館の中で信用できるものは何一つない。
彩由美が眠りについた後も、葉羽は窓の外を見つめ続けた。月明かりに照らされた館の影が、巨大な怪物のように見えた。
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