焔星高校の密室鏡影の殺人～天才少年・神藤葉羽と幼馴染の事件簿～【本格推理×ホラー×どんでん返し】

葉羽

文字の大きさ

大中小

8 / 26

7章

容疑者たち

しおりを挟む

彩由美の悲鳴が、葉羽の鼓膜を叩いた。凍り付くような恐怖が、彼の全身を駆け抜ける。彩由美に何かが起きたのだ。彼は、必死に体を動かし、拘束を解こうとしたが、無駄だった。頑丈なロープが、彼の体をしっかりと椅子に固定している。

「彩由美！」

葉羽は、叫んだ。しかし、彼の声は、閉鎖的な空間に虚しく響くだけだった。

仮面の男は、どこに行ったのか。一体、何を企んでいるのか。

不安と焦燥感が、葉羽の心を締め付けていた。

その時、部屋のドアが開き、男が戻ってきた。

「心配するな。君の可愛いお友達は、まだ無事だ」

男は、不気味な笑みを浮かべながら言った。

「どこだ！彩由美をどこにやった！」

葉羽は、怒りを込めて男に詰め寄った。

「落ち着きなさい。すぐに会えるさ」

男は、そう言うと、部屋の奥へと消えていった。

しばらくすると、男は彩由美を連れて戻ってきた。

彩由美は、怯えた様子で男の後ろに隠れていた。彼女の目には、涙が浮かんでいた。

「彩由美！」

葉羽は、再び叫んだ。

「葉羽くん…」

彩由美は、弱々しい声で葉羽の名前を呼んだ。

「大丈夫か？彼は、何もしなかったか？」

葉羽は、心配そうに彩由美に尋ねた。

「う、うん…まだ…」

彩由美は、震える声で答えた。

「よかった…」

葉羽は、安堵の息を吐いた。しかし、安心できたのは束の間だった。

「さて、神藤葉羽君。ゲームを始めよう」

男は、仮面の下から冷酷な視線を葉羽に送った。

「ゲーム？」

葉羽は、男の言葉の意味が分からなかった。

「ああ、推理ゲームだ。君の大好きな推理小説のようにね」

男は、不気味な笑みを浮かべながら言った。

「一体、何を企んでいる？」

葉羽は、男に詰め寄った。

「簡単さ。君には、これから起こる出来事を推理してもらいたい。そして、犯人を突き止めてもらう」

「これから起こる出来事？」

葉羽は、男の言葉に不吉な予感を感じた。

「ああ。これから、この洋館で、殺人事件が起こる。そして、犯人は、この中にいる」

男は、そう言うと、部屋のドアを開けた。

ドアの外には、数人の人影が立っていた。

彼らは皆、仮面を付けており、正体は見えない。

「彼らが、今回のゲームのプレイヤーだ。そして、その中の一人が、殺人鬼だ」

男は、不気味な声で言った。

「まさか…」

葉羽は、言葉を失った。

「さあ、ゲームを始めよう。制限時間は、24時間。それまでに、犯人を突き止めなければ、君の可愛いお友達は…」

男は、言葉を濁らせた。

しかし、その意味は、明白だった。

葉羽は、彩由美を見つめた。彼女の目には、恐怖と不安が入り混じっていた。

彼は、必ず事件を解決し、彩由美を守らなければならない。

葉羽は、推理を開始した。

彼は、プレイヤーたちの行動を観察し、彼らの発言に耳を澄ませた。

一人一人に、疑いの目を向けた。

プレイヤーたちは、皆、何かを隠しているようだった。

嘘、欺瞞、裏切り。

様々な思惑が交錯し、事件は複雑さを増していく.

制限時間は、刻一刻と迫っていた。

　葉羽は、プレイヤーたち一人ひとりと面会し、彼らの alibi、動機、そして佐伯蔵人との関係性について尋問した。

一人目は、佐伯蔵人の長男、佐伯勇人（さえきはやと）。彼は、父親の遺産を狙っていたという噂があった。

二人目は、佐伯蔵人の妻、佐伯美智子（さえきみちこ）。彼女は、夫との関係が悪化しており、離婚を考えていたらしい。

三人目は、佐伯蔵人の秘書、黒崎怜（くろさきれい）。彼女は、佐伯蔵人の仕事上の秘密を知っていた。

四人目は、佐伯家の使用人、灰原静香（はいばらしずか）。彼女は、佐伯家に長年仕えており、家族同然の存在だった。

五人目は、佐伯蔵人の主治医、白鳥優希（しらとりゆうき）。彼は、佐伯蔵人の健康状態を把握していた。

葉羽は、彼ら一人ひとりの証言を慎重に分析し、矛盾点を探した。

勇人は、事件当時、別の場所にいたと主張していたが、彼の alibi には不審な点があった。

美智子は、夫を殺害する動機があったが、彼女には犯行を実行するだけの能力がなかった。

怜は、佐伯蔵人の秘密を握っていたが、彼女が犯人だとすれば、なぜ秘密を公表しなかったのか。

静香は、佐伯家に長年仕えており、家族同然の存在だったが、彼女には、佐伯蔵人を恨んでいる理由があった。

優希は、佐伯蔵人の健康状態を把握していたため、毒殺を実行することは容易だった。しかし、彼には、佐伯蔵人を殺害する動機がなかった。

葉羽は、プレイヤーたちの証言をパズルのように組み合わせ、事件の全体像を把握しようと試みた.

しかし、パズルのピースは、なかなかはまらなかった.

時間だけが、無情に過ぎていく.

焦燥感が、葉羽の心を締め付けていた.

その時、彼は、あることに気づいた。

プレイヤーたちの証言には、ある共通点があったのだ.

それは、「鏡」だった.

　　　　　　　　　　　　　　　　

しおりを挟む