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3章
時を超えた工作
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月明かりが、図書館の古い資料に冷たい光を投げかけていた。
葉羽は、机に広げられた複数の資料を見比べながら、ある事実に辿り着いていた。
「やはり...」
彼は声を潜めて呟く。
「全ての事件は、満月の夜に起きている」
手元の記録。
40年前の望月啓介の死。
今回の五十嵐先生の事故。
そして、百年前に起きた最初の失踪事件。
全て、満月の夜だった。
「葉羽くん、これ見て」
彩由美が古びた一冊の本を持ってきた。
『明治期の機巧師たち』
ページを開くと、一枚の写真が目に飛び込んでくる。
明治時代の機巧師・霧島蓮の肖像写真。
「この人...」
葉羽の声が震えた。
「理事長先生にそっくりだ」
写真の人物は、確かに望月薫子理事長と瓜二つ。
しかも驚くべきことに、この写真は明治30年代のものだという。
「ねぇ、葉羽くん」
彩由美が不安そうな表情で言う。
「私、理事長先生の書斎で見つけたものがあるの」
彼女がカバンから取り出したのは、古い設計図。
「これ、天井裏の機構の図面みたい」
葉羽は図面に目を通す。
複雑な歯車機構。
光を集める装置。
そして...魂を抽出する儀式の手順。
「これは...」
その時、図書館の電気が突然消えた。
月明かりだけが、二人を照らしている。
「誰かいるの?」
彩由美の声が震える。
カタン、カタン...
天井から、聞き覚えのある機械音。
「逃げるぞ」
葉羽が彩由美の手を取る。
二人は暗い廊下を走った。
しかし、どの角を曲がっても、
あの機械音が追いかけてくる。
「ここだ」
葉羽は音楽室のドアを開けた。
五十嵐先生が亡くなった場所。
そして望月啓介が死んだ場所。
月明かりが、グランドピアノを銀色に染めている。
「葉羽くん、私...」
彩由美が何かを言いかけた時、
天井から白い影が降りてきた。
長い黒髪の少女。
百年前の制服を着ている。
「見つけてくれて、ありがとう」
少女は微笑んだ。
その顔は、若かりし日の理事長そのものだった。
「あなたは...」
葉羽が声を絞り出す。
「私は、霧島蓮の娘」
少女は悲しそうに言った。
「そして、最初の実験体」
突然、彩由美が崩れ落ちる。
「彩由美!」
少女が彩由美に近づく。
「あなたも、私たちの血を引いているのね」
「血を...?」
葉羽は混乱する。
しかし次の瞬間、全てを理解した。
「永遠の命...」
彼は呟いた。
「理事長は、霧島蓮その人なんだ」
少女は静かに頷いた。
「父は、百年以上も前から...」
その時、音楽室のドアが開いた。
理事長・望月薫子が立っていた。
いや、霧島蓮が。
「よく解読したわね」
彼女の声が、部屋中に響く。
「でも、ここまでよ」
天井の機構が唸りを上げ始めた。
満月の光が、特殊な装置を通して増幅される。
「さあ、彩由美」
理事長が手を差し伸べる。
「あなたの魂で、私の永遠の命は完成する」
葉羽は彩由美を抱きしめた。
「させません」
「邪魔しないで」
理事長の声が歪む。
「私は、永遠に生き続けなければならないの」
その瞬間、彩由美の体が光り始めた。
「葉羽くん...私...」
意識を失う彩由美。
葉羽は叫ぶ。
「彩由美!」
しかし彼女の体は、すでに透明になりつつあった。
魂が抜き取られていく——
「これで...」
理事長が微笑む。
だが、葉羽は気づいていた。
天井の機構の弱点に。
そして、満月の光の本当の意味に。
彼は、決断を下した。
葉羽は、机に広げられた複数の資料を見比べながら、ある事実に辿り着いていた。
「やはり...」
彼は声を潜めて呟く。
「全ての事件は、満月の夜に起きている」
手元の記録。
40年前の望月啓介の死。
今回の五十嵐先生の事故。
そして、百年前に起きた最初の失踪事件。
全て、満月の夜だった。
「葉羽くん、これ見て」
彩由美が古びた一冊の本を持ってきた。
『明治期の機巧師たち』
ページを開くと、一枚の写真が目に飛び込んでくる。
明治時代の機巧師・霧島蓮の肖像写真。
「この人...」
葉羽の声が震えた。
「理事長先生にそっくりだ」
写真の人物は、確かに望月薫子理事長と瓜二つ。
しかも驚くべきことに、この写真は明治30年代のものだという。
「ねぇ、葉羽くん」
彩由美が不安そうな表情で言う。
「私、理事長先生の書斎で見つけたものがあるの」
彼女がカバンから取り出したのは、古い設計図。
「これ、天井裏の機構の図面みたい」
葉羽は図面に目を通す。
複雑な歯車機構。
光を集める装置。
そして...魂を抽出する儀式の手順。
「これは...」
その時、図書館の電気が突然消えた。
月明かりだけが、二人を照らしている。
「誰かいるの?」
彩由美の声が震える。
カタン、カタン...
天井から、聞き覚えのある機械音。
「逃げるぞ」
葉羽が彩由美の手を取る。
二人は暗い廊下を走った。
しかし、どの角を曲がっても、
あの機械音が追いかけてくる。
「ここだ」
葉羽は音楽室のドアを開けた。
五十嵐先生が亡くなった場所。
そして望月啓介が死んだ場所。
月明かりが、グランドピアノを銀色に染めている。
「葉羽くん、私...」
彩由美が何かを言いかけた時、
天井から白い影が降りてきた。
長い黒髪の少女。
百年前の制服を着ている。
「見つけてくれて、ありがとう」
少女は微笑んだ。
その顔は、若かりし日の理事長そのものだった。
「あなたは...」
葉羽が声を絞り出す。
「私は、霧島蓮の娘」
少女は悲しそうに言った。
「そして、最初の実験体」
突然、彩由美が崩れ落ちる。
「彩由美!」
少女が彩由美に近づく。
「あなたも、私たちの血を引いているのね」
「血を...?」
葉羽は混乱する。
しかし次の瞬間、全てを理解した。
「永遠の命...」
彼は呟いた。
「理事長は、霧島蓮その人なんだ」
少女は静かに頷いた。
「父は、百年以上も前から...」
その時、音楽室のドアが開いた。
理事長・望月薫子が立っていた。
いや、霧島蓮が。
「よく解読したわね」
彼女の声が、部屋中に響く。
「でも、ここまでよ」
天井の機構が唸りを上げ始めた。
満月の光が、特殊な装置を通して増幅される。
「さあ、彩由美」
理事長が手を差し伸べる。
「あなたの魂で、私の永遠の命は完成する」
葉羽は彩由美を抱きしめた。
「させません」
「邪魔しないで」
理事長の声が歪む。
「私は、永遠に生き続けなければならないの」
その瞬間、彩由美の体が光り始めた。
「葉羽くん...私...」
意識を失う彩由美。
葉羽は叫ぶ。
「彩由美!」
しかし彼女の体は、すでに透明になりつつあった。
魂が抜き取られていく——
「これで...」
理事長が微笑む。
だが、葉羽は気づいていた。
天井の機構の弱点に。
そして、満月の光の本当の意味に。
彼は、決断を下した。
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