​『そんな美味い話が私(悪役令嬢)にあるわけがない!』

桜井ことり

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「……久しぶりだな、アルメリア。こんな泥臭い場所で、一体何をしていた?」

ガレットは馬の上から、さも汚い物を見るような目で私を見下ろした。
その隣には、相変わらず愛人らしき男爵令嬢が、怯えたような芝居をして寄り添っている。

「見ての通りですわ、ガレット殿下。土を耕し、汗を流し、健全な生活を送っております。王都にいた頃よりも、ずっと清々しい気持ちですわ」

私は完璧な微笑みを返した。
それが気に入らなかったのか、ガレットの顔がピクリと歪む。

「フン、負け惜しみを。銀髪が泥で汚れて無惨なものだな。公爵令嬢ともあろう者が、山賊の情婦にまで成り下がるとは……。ルノアール家の名は地に堕ちたな」

「殿下ぁ、怖いですわぁ……。アルメリア様、あんなに怖いお顔をなさって。きっと私たちを恨んでいるんですわ」

男爵令嬢がわざとらしく肩を震わせる。
ガレットはそれを守るように抱き寄せ、勝ち誇った顔で私を指差した。

「アルメリア。貴様が帝国と内通し、この地に不穏な要塞を築いているという報告を受けている。これは明らかな反逆行為だ」

「内通、ですか。私はただ、この土地で生きるために必要な設備を整えただけですわ。……それに、ここはもう王国の領土ではありません。あなたがそう仰ったはずですが?」

「黙れッ! 我が国の目の前で不穏な動きを見せれば、それは国家の安全保障に対する脅威だ! 貴様の言い訳など聞く耳持たん!」

ガレットは腰の剣を抜き、派手に空を薙いだ。

「今すぐ膝を突き、俺に許しを請え。そうすれば、その薄汚い山賊どもだけは助けてやらんでもない。……ああ、そういえば貴様の自慢だった両親も、この奥のボロ小屋に隠れているんだったな?」

ガレットがニヤリと下品な笑みを浮かべた瞬間、私の後ろの空気が一変した。
門の影に潜んでいたザックたちが、今にも飛び出しそうなほどの殺気を放ち始めたのだ。

「……殿下。今の言葉、取り消していただけませんか?」

私は、今日一番の冷たい声で言った。
しかし、ガレットはその警告を、ただの「震え」だと勘違いして、さらに声を張り上げた。

「取り消せ? 笑わせるな! 貴様のようなゴミに、俺が指図されると思うなよ!」

その時。
空から、まるで雷鳴のような轟音が響き渡った。
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