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「逃がすな! 反逆者ローレンスと、大罪人アテナを捕らえよ!」
断罪の場となった私室を後にした二人の前に、王城に控えていた近衛騎士団が立ちふさがった。
その数、およそ五十。
かつてローレンスが鍛え上げ、その頂点に君臨していた精鋭たちだ。
「……どきなさい。貴方たちに、私の歩みを止める権利はないわ」
アテナが冷徹に言い放つが、騎士たちは恐怖に顔を強張らせながらも、槍を水平に構え直した。
「……アテナ、下がっていてください。少しばかり、掃除が必要です」
ローレンスが、アテナの肩を優しく叩いて前へ出た。
彼の手に握られた銀の剣が、城内の灯火を反射して不吉な輝きを放つ。
「ローレンス卿……! 貴方は我らの誇りだった! なぜ、たかが女一人のために国を裏切ったのだ!」
騎士団の一人が悲痛な叫びを上げる。
ローレンスは、その言葉を鼻で笑い飛ばした。
「たかが女? ……その言葉だけで、お前の命は尽きた。アテナはこの世界の何よりも尊く、この腐りきった王国など足元にも及ばない」
「――かかれっ!」
合図と共に、最前列の騎士たちが一斉に突撃した。
アテナは一歩も引かず、ただ静かにその光景を見つめる。
次の瞬間、空気が爆ぜた。
ローレンスは剣を振るったのではない。
ただ、踏み込みの一歩で大気を震わせ、圧倒的な「気」を放ったのだ。
「……っ、がはっ!?」
直接触れてもいない騎士たちが、まるで見えない巨人に叩きつけられたかのように、次々と壁まで吹き飛んでいく。
「無礼者共。貴様らの汚れた鉄が、アテナの視界に入るだけでも不愉快だ」
ローレンスが地を蹴った。
もはや人の目では追えない速度。
銀の閃光が幾重にも重なり、騎士たちの武器だけを的確に、そして無残に粉砕していく。
「あ、ああ……。化け物か……!」
「……騎士団長。貴方は、これほどの力を隠していたというのか……」
わずか数秒。
通路を埋め尽くしていた精鋭たちは、一人として立ち上がれる者はなかった。
命こそ奪われていないが、その心はローレンスの圧倒的な武力の前に完全にへし折られている。
ローレンスは血のついていない剣を鞘に収めると、何事もなかったかのようにアテナの元へ戻り、彼女の手を取った。
「お待たせしました、アテナ。……靴に埃がついてしまいましたね。後で私が、隅々まで磨き上げましょう」
「……貴方、本当に加減というものを知らないのね」
「貴女を守るために、手加減などという不敬な真似ができるはずもありません」
ローレンスはアテナの腰を引き寄せ、彼女の耳元で甘く、けれど残酷な囁きを落とした。
「この国の武は、今日、私が全て摘み取りました。もはや、貴女の指先一つに触れられる者など、この国には存在しません」
「……そうね。もう、未練なんて一欠片もないわ」
二人は動けなくなった騎士たちを文字通り踏み越えて、王城の正門へと向かう。
背後では、エドワード王子の無様な叫び声がまだ響いていたが、それを振り返る者は誰もいなかった。
門を出た先には、夜の闇に紛れて待機していた漆黒の騎馬隊。
ローレンスの真の部下である、帝国の精鋭たちが静かに跪いて主を待っていた。
「さあ、我が愛しき主(あるじ)。……これからは、誰も貴女を蔑まない。貴女の言葉一つで国が動き、貴女の微笑み一つで世界がひれ伏す……そんな場所へお連れしましょう」
ローレンスはアテナを馬に跨らせると、自らもその後ろに乗り、彼女を包み込むように手綱を握った。
「……ローレンス。私を、後悔させないでね」
「誓いましょう。貴女が『悪役令嬢』として捨てられたあの日よりも、一億倍の幸福で貴女を溺れさせてみせると」
高らかな蹄の音が響き、二人は王都を後にした。
明朝、この王国に届くのは、第一王子の廃嫡と、隣国の帝国による宣戦布告に近い最後通牒である。
逆襲の第3部は、こうして王国の崩壊を予感させながら幕を閉じた。
断罪の場となった私室を後にした二人の前に、王城に控えていた近衛騎士団が立ちふさがった。
その数、およそ五十。
かつてローレンスが鍛え上げ、その頂点に君臨していた精鋭たちだ。
「……どきなさい。貴方たちに、私の歩みを止める権利はないわ」
アテナが冷徹に言い放つが、騎士たちは恐怖に顔を強張らせながらも、槍を水平に構え直した。
「……アテナ、下がっていてください。少しばかり、掃除が必要です」
ローレンスが、アテナの肩を優しく叩いて前へ出た。
彼の手に握られた銀の剣が、城内の灯火を反射して不吉な輝きを放つ。
「ローレンス卿……! 貴方は我らの誇りだった! なぜ、たかが女一人のために国を裏切ったのだ!」
騎士団の一人が悲痛な叫びを上げる。
ローレンスは、その言葉を鼻で笑い飛ばした。
「たかが女? ……その言葉だけで、お前の命は尽きた。アテナはこの世界の何よりも尊く、この腐りきった王国など足元にも及ばない」
「――かかれっ!」
合図と共に、最前列の騎士たちが一斉に突撃した。
アテナは一歩も引かず、ただ静かにその光景を見つめる。
次の瞬間、空気が爆ぜた。
ローレンスは剣を振るったのではない。
ただ、踏み込みの一歩で大気を震わせ、圧倒的な「気」を放ったのだ。
「……っ、がはっ!?」
直接触れてもいない騎士たちが、まるで見えない巨人に叩きつけられたかのように、次々と壁まで吹き飛んでいく。
「無礼者共。貴様らの汚れた鉄が、アテナの視界に入るだけでも不愉快だ」
ローレンスが地を蹴った。
もはや人の目では追えない速度。
銀の閃光が幾重にも重なり、騎士たちの武器だけを的確に、そして無残に粉砕していく。
「あ、ああ……。化け物か……!」
「……騎士団長。貴方は、これほどの力を隠していたというのか……」
わずか数秒。
通路を埋め尽くしていた精鋭たちは、一人として立ち上がれる者はなかった。
命こそ奪われていないが、その心はローレンスの圧倒的な武力の前に完全にへし折られている。
ローレンスは血のついていない剣を鞘に収めると、何事もなかったかのようにアテナの元へ戻り、彼女の手を取った。
「お待たせしました、アテナ。……靴に埃がついてしまいましたね。後で私が、隅々まで磨き上げましょう」
「……貴方、本当に加減というものを知らないのね」
「貴女を守るために、手加減などという不敬な真似ができるはずもありません」
ローレンスはアテナの腰を引き寄せ、彼女の耳元で甘く、けれど残酷な囁きを落とした。
「この国の武は、今日、私が全て摘み取りました。もはや、貴女の指先一つに触れられる者など、この国には存在しません」
「……そうね。もう、未練なんて一欠片もないわ」
二人は動けなくなった騎士たちを文字通り踏み越えて、王城の正門へと向かう。
背後では、エドワード王子の無様な叫び声がまだ響いていたが、それを振り返る者は誰もいなかった。
門を出た先には、夜の闇に紛れて待機していた漆黒の騎馬隊。
ローレンスの真の部下である、帝国の精鋭たちが静かに跪いて主を待っていた。
「さあ、我が愛しき主(あるじ)。……これからは、誰も貴女を蔑まない。貴女の言葉一つで国が動き、貴女の微笑み一つで世界がひれ伏す……そんな場所へお連れしましょう」
ローレンスはアテナを馬に跨らせると、自らもその後ろに乗り、彼女を包み込むように手綱を握った。
「……ローレンス。私を、後悔させないでね」
「誓いましょう。貴女が『悪役令嬢』として捨てられたあの日よりも、一億倍の幸福で貴女を溺れさせてみせると」
高らかな蹄の音が響き、二人は王都を後にした。
明朝、この王国に届くのは、第一王子の廃嫡と、隣国の帝国による宣戦布告に近い最後通牒である。
逆襲の第3部は、こうして王国の崩壊を予感させながら幕を閉じた。
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