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「リディア、ちょっとこれを見てくれないか」
クリストファーが持ってきたのは、王宮の蔵から引っ張り出してきたという古い書物だった。国の政治や歴史がまとめられている分厚いもので、通常は騎士や役人が必要に応じて閲覧するような書類だという。
「こんな古い書物、初めて見ます。これに何か手がかりがあるのですか?」
「わからないが、当時の国際関係などが事細かに書かれている。国外からの政治的な干渉や、貴族同士の政略結婚の実例なんかも載っているからな」
クリストファーの目はどこか真剣だ。リディアは椅子に座り、ページをめくり始める。わずかな埃が舞い上がり、鼻をくすぐった。
「確かに、昔から王家の婚姻には外交目的も絡んでいて、一筋縄ではいかないみたいですね」
「お前も見て気づいたか? 自国内の貴族だけでなく、国外の有力者と結びつこうとする動きがあったのは歴史的事実だ。そして、そのために現在の婚約を潰そうと考える輩がいても不思議じゃない」
二人は顔を見合わせる。もはや単なる恋愛や家同士の事情ではなく、国際的な陰謀すら関わっているかもしれない。そう考えると、婚約破棄の背景がますます重々しく感じられた。
「でも、どんな理由にせよ、私は殿下との婚約を諦めたくありません。私が本当に望んでいるのは、国のためにも、そして殿下のためにもなる形だと思うから」
リディアが自分の心境を素直に語ると、クリストファーは少し目を丸くしてから柔らかく笑う。
「ありがたい。お前がそう言ってくれるなら、俺は何があっても諦めない。必ずお前と結ばれる。それが王太子としてだけじゃなく、一人の男としての願いでもあるんだ」
リディアの胸は一気に熱くなる。今まで目の前にあったはずの未来が、今ようやく手を伸ばせば触れられそうな距離にきたような感覚だ。
「殿下……」
「……いや、クリストファーでいい。ここにいるときは二人きりだ。敬語はやめてくれないか」
思わぬ提案に、リディアは戸惑いながらも微笑む。王宮という場所で、あえて彼の名を呼ぶことに小さな抵抗はあるが、二人の距離を縮めるためなら、とリディアは決意する。
「わかりました……クリストファー。私も遠慮せずに呼ばせていただきますね」
「その方が嬉しいよ、リディア」
こうして、いつの間にか二人は心を開き合うようになっていた。婚約破棄が中止となったときは、互いの思いがすれ違い、不安ばかりが募っていた。しかし、今は一歩ずつ同じ道を歩いている実感がある。この先、何が起ころうとも――二人ならば乗り越えられる。そんな希望が、古い書物のページを捲るたびに少しずつ強くなっていくのを感じるのだった。
クリストファーが持ってきたのは、王宮の蔵から引っ張り出してきたという古い書物だった。国の政治や歴史がまとめられている分厚いもので、通常は騎士や役人が必要に応じて閲覧するような書類だという。
「こんな古い書物、初めて見ます。これに何か手がかりがあるのですか?」
「わからないが、当時の国際関係などが事細かに書かれている。国外からの政治的な干渉や、貴族同士の政略結婚の実例なんかも載っているからな」
クリストファーの目はどこか真剣だ。リディアは椅子に座り、ページをめくり始める。わずかな埃が舞い上がり、鼻をくすぐった。
「確かに、昔から王家の婚姻には外交目的も絡んでいて、一筋縄ではいかないみたいですね」
「お前も見て気づいたか? 自国内の貴族だけでなく、国外の有力者と結びつこうとする動きがあったのは歴史的事実だ。そして、そのために現在の婚約を潰そうと考える輩がいても不思議じゃない」
二人は顔を見合わせる。もはや単なる恋愛や家同士の事情ではなく、国際的な陰謀すら関わっているかもしれない。そう考えると、婚約破棄の背景がますます重々しく感じられた。
「でも、どんな理由にせよ、私は殿下との婚約を諦めたくありません。私が本当に望んでいるのは、国のためにも、そして殿下のためにもなる形だと思うから」
リディアが自分の心境を素直に語ると、クリストファーは少し目を丸くしてから柔らかく笑う。
「ありがたい。お前がそう言ってくれるなら、俺は何があっても諦めない。必ずお前と結ばれる。それが王太子としてだけじゃなく、一人の男としての願いでもあるんだ」
リディアの胸は一気に熱くなる。今まで目の前にあったはずの未来が、今ようやく手を伸ばせば触れられそうな距離にきたような感覚だ。
「殿下……」
「……いや、クリストファーでいい。ここにいるときは二人きりだ。敬語はやめてくれないか」
思わぬ提案に、リディアは戸惑いながらも微笑む。王宮という場所で、あえて彼の名を呼ぶことに小さな抵抗はあるが、二人の距離を縮めるためなら、とリディアは決意する。
「わかりました……クリストファー。私も遠慮せずに呼ばせていただきますね」
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こうして、いつの間にか二人は心を開き合うようになっていた。婚約破棄が中止となったときは、互いの思いがすれ違い、不安ばかりが募っていた。しかし、今は一歩ずつ同じ道を歩いている実感がある。この先、何が起ころうとも――二人ならば乗り越えられる。そんな希望が、古い書物のページを捲るたびに少しずつ強くなっていくのを感じるのだった。
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