〘完結〛病欠で婚約破棄が中止になったら、あれよあれよと溺愛されました

桜井ことり

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「リディア、これを見てくれ」

 

クリストファーが差し出したのは、先日カイルが入手した複数のメモと、それらを整理した一覧表だった。婚約破棄を目論む勢力の名前や、関連しそうな貴族たちの動きが細かく書かれている。

 

「この表によると、やはり複数の貴族が連携を取っているみたいですね。しかも、その中には国外の影響がちらついているという話もある……」

 

リディアは一覧表を指でなぞりながら、ひそかに声をひそめる。いつの間にか、クリストファーの執務室は“捜査本部”のような状態だ。

 

「俺たちに協力してくれるのはカイルや父、そして王妃も含めた数名だ。表立っては動けないが、これ以上放置すれば国全体が危うい」

 

クリストファーの目は鋭く、決意を宿している。以前のような病弱で倒れそうな雰囲気は感じられない。彼自身、リディアを守るためにも真相を突き止めようと決意したのだろう。

 

「結局のところ、誰が“黒幕”なのか、まだはっきりしないんですよね。複数人の共謀かもしれませんし、一人の主導者が裏で糸を引いているのかもしれない」

 

「それを探るためにも、まずは地道に証拠を集めるしかない。お前には危険な目に遭ってほしくないが……協力をお願いできるか?」

 

クリストファーの問いかけに、リディアは迷わず頷く。王太子としての彼を支えるだけでなく、自分の未来を守るためにも必要な行動だ。

 

「私も微力ながら、できる限り動きます。貴族令嬢としての立場を使って情報を得ることもあるかもしれません」

 

「無理はするなよ。お前に万が一のことがあったら……俺はどうすればいい」

 

その言葉にリディアは微笑む。心配の裏に、クリストファーの深い想いが隠れているのを感じたからだ。

 

「大丈夫です。私も危険に飛び込むつもりはありません。でも、誰かが黙っていては何も変わらない。勇気を出して、まずは一歩踏み出してみます」

 

「ありがとう。俺もお前を守り抜く。共にやろう」

 

二人は視線を交わし、静かにうなずき合う。婚約破棄を望む影の勢力を洗い出し、真相を暴くための闘いがここから本格的に始まろうとしていた。国を揺るがす陰謀に立ち向かうため、これまで以上に強い絆が求められるのを二人とも痛感している。それでも、共にいるというだけで恐怖よりも使命感が勝るのをリディアははっきり感じていた。
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