〘完結〛ずっと引きこもってた悪役令嬢が出てきた

桜井ことり

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私とルシアン殿下の婚約から、一年が過ぎた。

その間、彼は、その類まれなる才覚を発揮し、兄であるアルフォンス王太子を助け、国内の混乱を、見事に収拾させていった。

国境を脅かしていた、隣国の陰謀も、彼の巧みな外交術によって、未然に防がれた。

国は、すっかり安定し、民の暮らしにも、笑顔が戻っていた。

そして、季節は巡り。

緑が美しい、初夏のある日。

私とルシアン殿下の結婚式が、王都の大聖堂で、執り行われた。

その日、王都は、朝から祝福のムード一色だった。

大聖堂へと続く道には、私達の結婚を祝うために、大勢の国民が詰めかけていた。

私は、お父様にエスコートされながら、ゆっくりと、バージンロードを歩く。

純白のウェディングドレスは、王妃様が、最高のデザイナーに作らせてくださったものだ。

その裾には、何千もの真珠が、星屑のように縫い付けられている。

祭壇の前では、純白の軍服に身を包んだ、ルシアン殿下が、少しだけ緊張した面持ちで、私を待っていた。

彼の隣には、兄であるアルフォンス殿下が、誇らしげな笑みを浮かべて立っている。

フラワーガールを務めてくれたのは、もちろん、クラリッサ王女だ。

彼女は、満面の笑みで、花びらを撒きながら、私達の前を歩いてくれた。

参列席には、国王陛下と、美しいドレスをまとった王妃様。

そして、涙を必死でこらえている、お父様と、優しく微笑むお母様、そして、少し照れくさそうにしている、お兄様の姿もあった。

私は、お父様の手から、ルシアン殿下の手へと、引き渡される。

固く握られた、彼の手は、とても温かかった。

荘厳なパイプオルガンの音色と、神聖な聖歌隊の歌声に包まれて、私達は、神と、そして、集まった全ての人々の前で、永遠の愛を誓った。

「健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しき時も、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、固く節操を守ることを、誓いますか?」

「「はい、誓います」」

私達の声が、大聖堂に、厳かに響き渡る。

指輪の交換。

そして、ルシアン殿下が、私の顔を覆うベールを、そっと上げる。

その紫色の瞳には、私への愛が、溢れんばかりに湛えられていた。

私達の唇が、ゆっくりと、重ねられる。

その瞬間、大聖堂は、割れんばかりの拍手と、歓声に包まれた。

式の後には、王都を巡る、馬車でのパレードが行われた。

沿道からは、「ルシアン殿下、万歳!」「セレナード様、おめでとうございます!」という、国民からの、温かい祝福の声が、絶え間なく降り注ぐ。

私は、その声の一つ一つに、笑顔で手を振って応えた。

かつて、悪役令嬢と恐れられた私が。

婚約破棄され、3年間も、部屋に閉じこもっていた私が。

今、こんなにも多くの人々に、祝福されている。

その事実が、夢のように、幸せだった。

私は、隣で、同じように笑顔で手を振る、愛しい夫の顔を見上げた。

彼と出会えたからこそ、私は、本当の幸せを、見つけることができたのだ。

この幸せが、永遠に続くように。

私は、そっと、心の中で祈った。
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