転生したら最強の神具を持っていた!~無自覚英雄は今日ものんびり街を救う~

にゃ-さん

文字の大きさ
2 / 4

第2話 神具「全能の腕輪」ってチートすぎませんか?

しおりを挟む
「えっと……つまり、俺が魔獣を一瞬で消したってこと?」  
「はいっ!見ました!本当にスッと光って、一瞬で全部粉々に!」  

リリアが勢いのまま熱弁している姿に、タクトは額に手を当てた。  
いや、自分でも何をしたのか分からない。気づいたら光って消えただけだ。  

「……でも俺、魔法とか使った覚えないんだけど。」  
「それがすごいんです!詠唱もなく、杖もなし。そんなの、神話級の賢者くらいしか……!」  

周囲では冒険者らしい者たちがざわざわと話している。  
「今の人、もしかして勇者様か?」「いや、見慣れない服だ」「あの腕の光、見たか?」  
いつの間にか囲まれていて、タクトはいたたまれなくなった。  

(ちょっと目立ちすぎじゃないか……?)  

タクトが困っていると、リリアが助け舟を出してくれた。  
「皆さん、彼は恩人です!外で長話をするのも何ですから、街に戻って説明しましょう!」  

その言葉に人々は頷き、群れがほどける。  
リリアが導くまま、タクトは街の門をくぐった。石造りの壁と尖った屋根。行き交う人々、荷馬車。  
まさしく異世界ファンタジーの街だった。  

「ここはリュミナスの町って言うんです。人と魔法が共に生きる交易の町です。」  
そう言うリリアの声はどこか誇らしげだった。  

門を抜けた瞬間、タクトの腕輪が小さく震えた。  
ふと見ると、表面に青い文字が浮かび上がっている。  

――“環境認識完了。新世界における言語/通貨/体系を自動同期しました”  

(……勝手に学習してるんだけど!?)  
心の中でツッコミつつ、彼はつくづくこの腕輪のヤバさを実感した。  

「その腕輪、とても綺麗ですね!」  
横を歩いていたリリアが目を輝かせてのぞき込む。  
「へ?あ、ああ、これ?いや、ちょっとしたお守りというか……」  
「魔力が凄いです。まるで生きてるみたい。」  
「気のせいだよ、きっと。」  

タクトは苦笑でごまかしながら、心の中で腕輪に問いかける。  
(なあ、あんた、喋れる?)  
“はい。マスターの声に反応可能です”  
(やっぱり喋れるのか!ていうか、マスターって何!?俺主人でも何でもないんだけど!)  
“神より全権限を移譲されています。マスターの命令は世界法則に優先します”  
(世界法則に優先って……!)  

冷や汗が背中を伝う。神具どころの話ではない。存在そのものが世界チートだ。  

「タクトさん?どうかしました?」  
「い、いや何でもない!」  
慌てて笑顔をつくるが、顔が引きつっているのを自覚する。  

* * *  

街の中心部にある冒険者ギルドに案内された。  
扉を開けると、熱気とざわめきが一気に押し寄せる。  
屈強な戦士、魔導士風の男女、受付には気の強そうな女性が立っていた。  

「リリア、また怪我でもしたの?昨日も森で魔物に襲われたって報告が——」  
女性が言いかけて、タクトに目を向けた。  
「……彼が助けてくれたの?」  
「はい!見てくださいリサさん!一瞬で全部の魔物を消し去ったんですよ!」  

「一瞬、ねぇ?」  
リサと呼ばれた受付嬢は懐疑的な目でタクトを見つめる。  
「大袈裟に言ってるんじゃないの?魔物を一瞬で消すなんて、伝説級の魔導士でも——」  
「ま、まあ俺もよく分かってなくて……」  
タクトの言葉に、リサは肩をすくめた。  

「とりあえず恩人なら歓迎するわ。登録しておいたら?冒険者証があれば活動も楽になるわよ。」  
「冒険者証……なるほど。じゃあお願いします。」  

タクトは促されるままカウンターに署名する。  
名前、年齢、種族などの簡単な項目を記入。  
だが職業欄で手が止まった。  

「職業……えっと……」  
「戦士とか魔法使いとか、得意な系統でいいのよ。」  
困っているタクトを見て、リリアが口を開いた。  
「彼は……『全能者』です!」  
ギルド内が一瞬で静まり返った。  

「ぜ、全能者……!?」  
「まさか伝説の称号持ちか!」  
ざわつく周囲に、タクトは即座に否定した。  
「いやいやいや!そんな大げさなもんじゃない!ただの冗談だよ!」  
「でも、腕輪がそう言ってましたよね?」  
「えっ?」  

リリアの言葉に反応するように、腕輪が光を放った。  
ギルド中に響く声がした。  
“確認:使用者は全能権限保持者です”  

崩れ落ちるタクト。  
(まじで余計なこと言わないでくれ……!)  

リサが唖然としたまま口を開く。  
「……あなた、本当に何者なの?」  
「えーと……多分、ただの通りすがり……?」  

どう見ても通りすがりではない。  
けれど今さら本当のことを言っても信じてもらえる気がしない。  

リサはため息をつくと、机から銀色のカードを取り出した。  
「ま、わかったわ。事情はよく分からないけど、最低ランクで登録してあげる。これ、Fランク証よ。」  
「ありがとう。」  
受け取ったカードには、淡い光の文字で“ミカミ・タクト”と刻まれていた。  

「とりあえず、簡単な依頼でも受けて感覚を掴むといいわよ。リリア、案内してあげて。」  
「はいっ!」  

そうしてタクトの冒険者生活が、静かに幕を開けた。  

* * *  

初めて受けた依頼は「草原に群生する回復草の採取」。  
聞けばただの簡単な採取クエスト。命の危険もほぼゼロ。  
「こういうので地道に経験積むんですよ!」  
リリアがにこにこと説明する。  

「わかった。俺もできるだけ迷惑かけないようにするよ。」  

二人で森の外れに向かい、緑の茂みを探しまわる。  
タクトには何の問題もないと思っていた。  
しかし、腕輪がまた反応した。  

――“依頼内容:回復草採取を確認。効率化モードを提案しますか?”  
(ちょ、提案とかしなくていい!俺手でちゃんと集めたいんだよ!)  
“了解。全自動収集を実行します”  
(聞いてねぇぇぇぇぇっ!!)  

次の瞬間、大地から光の粒が立ち上り、周囲の草原に生えていた回復草が根こそぎ浮かび上がった。  
小さな竜巻のようにくるくると回り、ぱらぱらとタクトの足元に山のように積もる。  

「……終わりました」  
「……え?終わり?」  
「はい。指定数量を三千パーセント達成しました」  
「やりすぎ!!!」  

リリアが真っ青になって叫んだ。  
タクトも同じ気持ちだった。  

こうして二人は山盛りの回復草とともにギルドへ戻る羽目になった。  

リサは眉をひそめ、机を叩いた。  
「……依頼の数量、十束だったわよね?」  
「えっと、その、つい……」  
「在庫庫が埋まるわ。もう一生分あるかもね。」  

ギルド中から笑いが起こる。  
だがリサの目には諦めと興味が混じっていた。  

「あなた、本当に何者なのよ、全能者さん。」  
「だからそれ違うって……ただの平凡な転生者です。」  
「転生者?」  
「……あっ。」  

言ってはいけない一言だった。  
ギルド中の視線が一斉にタクトへ集まる。  
そして次の瞬間、どよめきが広がった。  

「やっぱりそうか!異世界の英雄だ!」  
「久しぶりだぜ、転生者様が現れたのは何十年ぶりだ!」  
歓声にも似た騒ぎが広がり、タクトは両手を上げて必死に否定する。  

「ちがっ、違うってば!俺はただ、のんびり暮らしたいだけなの!」  

しかし、その願いは誰にも届くことはなかった。  
リリアですら、頬を赤くしながら見つめている。  
「やっぱりすごい人なんだ……」  

(違うんだ、そんな立派なもんじゃない!俺はただ、休みたいだけなんだ……!)  

こうして三上タクトの異世界生活は、本人の意思に反して急速に英雄街道を走り始めるのだった。  

(続く)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

学生学園長の悪役貴族に転生したので破滅フラグ回避がてらに好き勝手に学校を魔改造にしまくったら生徒たちから好かれまくった

竜頭蛇
ファンタジー
俺はある日、何の予兆もなくゲームの悪役貴族──マウント・ボンボンに転生した。 やがて主人公に成敗されて死ぬ破滅エンドになることを思い出した俺は破滅を避けるために自分の学園長兼学生という立場をフル活用することを決意する。 それからやりたい放題しつつ、主人公のヘイトを避けているといつ間にかヒロインと学生たちからの好感度が上がり、グレートティーチャーと化していた。

落ちこぼれ職人、万能スキルでギルド最強になります!

たまごころ
ファンタジー
ギルド最弱の鍛冶師レオンは、仲間に「役立たず」と笑われて追放された。 途方に暮れる彼の前に現れたのは、伝説の鍛冶書と、しゃべる鉄塊(?)。 鍛冶・錬金・料理・魔道具――あらゆるクラフトスキルを吸収する《創精鍛造》を極め、万能職人へと覚醒! 素材採取から戦闘まで、すべて自作で挑む“ものづくり異世界成り上がり譚”が今、始まる。 裏切った元仲間? 今さら後悔しても遅いぞ!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

転生したら追放された雑用スキルで世界最強になっていた件~無自覚に救国してハーレム王になった元落ちこぼれの俺~

fuwamofu
ファンタジー
冒険者ギルドで「雑用」スキルしか持たなかった青年・カイ。仲間から無能扱いされ、あげく追放された彼は、偶然開花したスキルの真の力で世界の理を揺るがす存在となる。モンスターを従え、王女に慕われ、美少女賢者や女騎士まで惹かれていく。だが彼自身はそれにまるで気付かず、ただ「役に立ちたい」と願うだけ――やがて神々すら震える無自覚最強の伝説が幕を開ける。 追放者、覚醒、ざまぁ、そしてハーレム。読後スカッとする異世界成り上がり譚!

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

処理中です...