落ちこぼれと呼ばれた賢者、実は全職適性S級でした 〜追放された俺は無自覚に世界最強の英雄になる〜

にゃ-さん

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第4話 初めての戦闘、そして気づかぬ圧勝

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夜を通して奴隷たちを救い出した翌朝、メルタの空は澄み切った青空だった。  
レインとユノは森の外れで目を覚まし、焚き火に残った火で簡単な朝食を取っていた。  
疲労はあったが、不思議なくらい心は軽い。初めて自分の力が“誰かの役に立った”という実感が胸に残っていた。  

「レイン、本当にあれほどの魔法が使えるなんて思いませんでした」  
ユノがスープをかき混ぜながら言う。  
「いや、あれは偶然だって。俺、あっという間に頭が真っ白になってたし」  
「偶然、というには綺麗すぎる制御でした。詠唱なしで複属性を重ねるなんて、普通は不可能です」  
レインは苦笑いした。  
「そう言われても実感がないんだよな。戦ってる最中って、気づいたら体が動いてる感じだし」  
「それが“天賦の才”というものですよ」  
「そんな大層なもんじゃないと思うけどなあ」  
ユノは小さく首を振り、「それでも、あなたは誇るべきです」とだけ言った。  

***  

その日、二人はメルタの冒険者ギルドを訪れた。周囲は活気にあふれ、腰に剣を下げた冒険者がひしめいている。  
受付のカウンターに立つと、金髪の受付嬢がにこやかに頭を下げた。  
「初めてのご登録ですね。お名前を」  
「レイン・アルディス。それと……」  
ユノを見やってから、「彼女はユノ。同行者だけど登録は俺だけでいい」と付け加えた。  
「畏まりました。では、魔力量と基本適性の確認を行います」  

受付嬢が取り出したのは、水晶のような測定球。  
レインが手をかざすと、強い光が一瞬で部屋を満たした。  
「うわっ、まぶしっ!」周囲の冒険者が振り向くほどの光量。  
測定水晶はバチッと音を立ててひび割れ、奥から白い煙が立ち上がった。  
受付嬢は硬直した表情のまま、水晶をそっと机に置いた。  

「……こ、これは壊れてますね!たまにあるんです!ええ!」  
慌てて笑顔を作るが、顔は引きつっている。  
(たぶん壊したの、俺だよな……)レインは内心で苦笑した。  

「と、ともかく、冒険者登録は完了です。階級は仮登録Fランク、依頼を三件こなせば正式認定となります」  
レインはギルドカードを手に取り、礼を述べた。  

その後、掲示板の低ランク依頼を見て回る。  
農場の獣退治、森での薬草採取、そして盗賊の見張り。  
ユノが指で一つを示した。  
「これがいいのでは?“北の丘陵に出没する野生オーク群の討伐”」  
「オークって強いのか?」  
「下級魔獣ですが、群れると危険です。Fランクで受けるには少々無謀かもしれません」  
「でも、やってみる価値はありそうだ」  
ユノはため息をつく。「あなたのそういうところ、本当に無自覚です」  

***  

丘陵地帯は街から半日の距離だった。  
昼過ぎ、二人は平原に立ち、遠くの岩場を眺める。そこに黒い影が動いている。  
「いた。一匹じゃないな……十体以上か」  
「普通ならBランク以上の依頼です」  
「でも俺たちは二人だ。ちょっと試してみよう」  

レインは杖を構え、息を整えた。  
脳裏に昨夜の戦いの感触が蘇る。  
(風を感じて、火を繋げて……)  
言葉にせず、ただ意識を一点に集める。  

オークたちが気づき、咆哮を上げて突進してきた。  
その瞬間、レインの周囲に不可視の風が巻き起こり、跳ねる砂が赤く燃え上がった。  
「行くぞ」  

空気が震え、火の線が地面を走る。  
次の瞬間、オークたちの足元が爆発した。  
閃光と轟音。空気の壁が押し寄せ、草原が瞬く間に焦げ付く。  

「……うそでしょ」ユノは呆然と立ち尽くした。  
煙が晴れた後、そこにオークの姿はなかった。  
ただの一撃、それも詠唱も構えもない一撃で、群れは跡形もなく消えていた。  

レインは首をかしげる。  
「おかしいな、もう少し威力を抑えたつもりだったんだけど」  
「いえ、“抑えてこれ”です。普通なら山ごと吹き飛びます」  
ユノの言葉に、レインは頭をかいた。  
「強すぎるのも困るな……でも危険じゃなかったからよかった」  

戦いのあと、丘の上から風が吹き抜けた。  
燃え残った草が揺れる音だけが響く。レインは杖を地面に突き、軽く息をついた。  

「これで依頼は達成か?」  
「はい。討伐証明代わりに残骸の魔核を持ち帰れば十分です」  
「よかった。実戦で試せたし、いい経験になったな」  
ユノは呆れを通り越して笑った。  
「あなた、本当に無自覚で最強ですね」  
「いやいや、倒せたのは運がよかっただけだって」  

***  

帰路の途中、空が赤く染まり始めたころ、二人は小川のそばで休憩を取った。  
ユノが傷ついた小鳥を見つけ、優しく手に取る。  
「この子、翼が折れていますね」  
「治せる?」  
「応急処置なら、でも……」  

レインは覗き込み、鳥の小さな体を見た。  
手をかざすと、体の中の温かい何かが自然に動く。  
「ヒール」――と声に出した瞬間、鳥の体が柔らかな光に包まれた。  

「……治った!」ユノが驚く。  
小鳥は羽ばたき、空へと飛び立っていった。  
レインはただ呆然とその光景を見上げていた。  

「俺、回復魔法も使えるのか……?」  
「やはり全職適性者です。魔法体系すべてを扱えるんですよ」  
「便利すぎて逆に怖いな」  
レインは苦笑したが、胸の奥で小さな喜びが湧いた。  
力を使うことが誰かを救うことに繋がる――それだけで十分に意味があるような気がした。  

***  

夕暮れ、メルタに戻った二人がギルドの扉を開くと、冒険者たちの視線が一斉に集まった。  
「おい、あいつら戻ってきたぞ。北の丘のオーク、全滅だって!」  
「冗談だろ、Fランクがそんなわけ……」  

受付嬢が慌ててカウンターから身を乗り出した。  
「レインさん!依頼の結果を!」  
「うん、無事終わった。これ、魔核」  
彼が袋を差し出す。受け取った受付嬢は、中を見て絶句した。  
「……数が、十個どころじゃありません。三十以上も……しかも状態が異常にきれい……」  

ギルドがざわめいた。誰かが叫ぶ。  
「まさかあの爆発、全部あの無詠唱のやつがやったのか!?」  
レインは思わず後ろを振り向く。外の通りには黒く焦げた風の柱の跡が遠くに見えた。  
「え、やっぱり見えてたのかあれ……」  
周囲が呆気に取られている中、受付嬢は震える手でカードを差し出した。  

「特例で、Dランク昇格の推薦が出ました。前例のない速度です。これ……本当にあなたが?」  
レインは戸惑った表情でカードを受け取った。  
「うん、多分。でも……まだ実感がないな」  
「実感がなくてその結果なら、実感したときが怖いです」ユノが苦笑する。  

依頼を終え、報酬を受け取って外に出た。  
メルタの夜風は穏やかで、人々の笑い声が聞こえる。  
歩きながら、レインがふとつぶやいた。  
「……俺、本当に追放されてよかったのかもしれない」  
ユノは隣で静かに笑った。  
「だから言ったでしょう。あなたは無能ではなく、世界が追いついていないだけです」  

灯りが街を照らし、二人の影が並んで伸びていく。  
まだ自分の力の半分も理解していない。だが、その旅路は確かに始まっていた。  

(続く)
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