副団長は愛妻家。

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ブラウト国内編

【閑話】ギレル夫婦とセウス夫婦。

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王太子となり執務も増えて最近の楽しみはローザとゆっくりする事。

「また何か考えているのか?」

寝台の上で尋ねたがふわりと笑って誤魔化すつもりらしい。

「ローザは私より誰に夢中なのかな?少し妬けてしまうよ」

夜着を脱がそうとした手をパチンと叩かれ、彼女を見ると冷々する瞳とかち合った。

「少しお話があると申しましたわよね?」

「話とは?」

仕方なく膝に頭を乗せてゴロンと寝転がると、優しく頭を撫でるローザの手が心地好い。

「影からの報告で、エーテル国から王弟のマグラーンの行方が分からなくなりました。この前、西の森で起こった異常事態も裏でマグラーンが関わっていた事が判明いたしました。魔術団長と騎士団長へは詳細を話し、現地エーテルへは、ガードン様の推薦もありシンザとアリエッタを向かわせますわ。

それと、ガードン様とリュンヌの事です。仲睦まじいのは良い事ですが。あの二人を快く思っていない方がチラホラと。
私の影に調べさせておりますが、ギレル様に対しても軽んじている様子。

そろそろ1人でも、立場を解らせて差し上げても宜しいかと。とりあえず候補はあげておきますのでギレル様の御心のままに」

頭の回転も早く行動力もあり、人を使う事にも長けている。

「つくづく私は良い伴侶を得たと思っているよ」

「な、何なんですの!私はギレル様を支えて共に生きると昔から申しておりましたわ!」

ふふ。照れると髪を指に巻き付けるクセは昔からだね。

「うん。私もだよ、ローザを愛している。これから共に国を支えて行くだけじゃなく、心からの愛をキミへ」

起き上がり唇へ深いキスをし、恥ずかしがるローザを押し倒した。


******

「また……ですか?」

執務室へ入ると、セウスの呆れ顔が少々疎ましい。

「ん?何がだ?セウス」

肩を落として大きく息を吐くが、ローザが可愛いのが悪いと思う。いつも辛辣な態度で他者を圧倒するのに、二人の時だけは、まるで子猫のように甘えん坊で、ギレル様…なんて呼ばれたら我慢なんて出来なくなっても致し方ない。

「午前中の公務は入れないように致しますが、ローザの身体を思うと双子の妹ですからね。あのじゃじゃ馬があんな状態だと少し心配にはなるんですよ」

「まぁ……確かにな」

今朝も、

『…私もリュンヌのように身体を鍛えなきゃ…』

と呟いていたが、ローザがリュンヌみたいに強くなるのは反対だ。私の楽しみが減ってしまうではないか。

「今日も、艶々でギレル様にはローザの分まできっちりお仕事をして頂きます」

よい笑顔のセウスが大量の書類を持ってきた。


「そう言えば。シンザとアリエッタがエーテルへ行くのか?」

すっかり忘れていたがローザが昨夜言っていた気がする。

「そうですよ。シンザなら色々と詳しいですし適任でしょう」

セウスが言うなら任せる事にして。それにしてもまさか、ガードンがリュンヌへプレゼントを考えているとは。

「私もローザへ何かプレゼントをしようかと思うが彼女は自ら何でも買ってしまうからな。双子ならローザの欲しそうなモノを何か知らないか?」

セウスに聞くとニヤニヤと私を見てアズハル商会のカタログを渡された。

「うちのキュートなヴィオレットが、新作をコルデ嬢と考えまして。この中にローザが好んで作るデザイナーが数量限定で販売されますよ」

「では、それを」

上手く乗せられた気もするが、ローザの反応が楽しみだ。


******

「ギレル様!」

執務室へローザが入って来て、真っ直ぐ近寄り私の膝に座るといきなりキスされ固まってしまう。ローザは二人きりじゃないと、こんな事は今までしなかった。

「どうした?」

「今日、コルデから連絡があってまさかギレル様が私の好きなデザイナーまでご存知とは思ってもみませんでしたわ!

今まで頂いたドレスや宝飾品も全て嬉しかったですが、いつもキレイしか仰って頂けなかったので、あまり興味が無いと思っておりましたの」

うるうるした瞳が私を見上げ、興奮したのか頬も赤くなり私の子猫が胸にすり寄ってくる。

「こんなに喜ぶなら、もっと早く知っておれば良かったな」

確かに最初は彼女の能力を買って婚約を決めたが、今となっては彼女以外考えられない。

「私の子猫は、ここが執務室と分かった上で誘惑しているのかい?」

チラリと見れば。セウスは居らず二人きりだ。



******

明日は今日の分までやって頂こう。

執務室から出たセウスは双子の妹が幸せそうにしている姿に満足をしているが、ギレルが最初。能力だけでローザを選んだ事も知っていた。

はぁ。俺も早く帰ろうかな?ヴィオレットを愛でたい。

手に持った書類を思いだし、ギレルが明日少しでも捗るようにしなければ……

「いっつも損な役回りだよなー」

「セウス!!」

声が聞こえた方を振り向いた。

パタパタと、淑女としてはダメだが俺は両手を広げて彼女が駆け寄って来るのを受け止める。

「もしかして会えるかと思って来たのよ!」

素直に甘えてくるヴィオレットに、どうせギレル達も今日は仕事出来ないだろうと、頭の中で今後の予定を組み替えた。

「よし、何とかなりそうだ。ヴィオレット帰ろう」

抱きしめてヴィオレットの頭に顎を乗せて言えば、びっくりした顔を向けた後。蕩けるように微笑まれてしまった。

「最近、お互い忙しかったから嬉しい」

腰に手を回して歩き出せば、ヴィオレットはカフェへ行きたいと言い出した。

「今日は二人きりになりたい。愛しているよ」

耳元で囁き、再びびっくりした顔を向けたが、それは一瞬ですぐに俯いた彼女の耳は真っ赤に色付いている。

朝もゆっくり登城出来るか予定を組み替えれば、頬が緩む。

ギレルやガードンも新婚なら、俺も新婚だ。さて、早く帰ろう。
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