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進む道と新たな仲間に
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しおりを挟む「途中まではヤックルに乗っていくが、坂がきつくなれば自分たちの脚で進むしかない。なるべく体力は温存しておいてほしい」
「分かったわ、足手纏いにならないように頑張るから」
馬小屋で待っていたヤックルは昨日の疲れも見せず、ロッテにすり寄ってくる。離れて寂しかったというように見つめてくるつぶらな瞳に、ロッテは胸をキュンとさせた。
「今日も一日よろしくね、ヤックル」
「ブルルル……」
どんな動物が相手でもロッテなら、こうして気持ちを伝えることが出来るのではないかとレーヴェは思っていた。溢れるような慈愛とその心の清らかさ、真っ直ぐな気持ちの伝え方の全てが彼女を聖女だと言っているようで。
「そろそろ行こう、今日の目標はゼガナの山を越えることだ」
「ゼガナの山、あそこは険しい場所だと聞いてるわ。頑張らなくてはね」
ゼーフェリング王国内の地理はある程度、過去の聖女教育で習っている。ナーデランド辺境地がこの国では一番の高山地帯だが、ゼガナ山も人が登るにはかなり厳しい地形だった。
それでも王都に行くためには、それを越えなくてはならない。迷っていたり、他の回り道を考えるほどの時間も惜しいので仕方がないのだ。
「行きましょう」
レーヴェがロッテを抱き上げてヤックルに乗せ、自分もその後ろへと腰を下ろした。彼女の背後から腕を伸ばして手綱をひくと、ヤックルが軽快に走り出す。
あっという間に小さかった町を離れ、そのまま道も無いような荒野を走り抜けていく。酷い揺れの中、早く王都に行くことだけを考えロッテは必死でそれに耐えた。
「ここからは歩きになる、荷物を減らすために食事は済ませていこう」
「ヤックルはどうするの? ここのは山道は登れないのよね、置いていくつもり?」
山の麓までヤックルに乗ってきたが、これ以上の坂道はヤックルの身体に負担をかけることになるので歩くしかない。ロッテの問いかけにレーヴェは麓の大きな木に隠れるように立っていた山小屋を指さした。
「あそこに魔女と呼ばれる老婆が住んでいる。先に連絡して、彼女にヤックルの面倒を見てもらうよう頼んでいるから大丈夫だ」
「魔女……?」
ゼーフェリング王国には魔法士はいないとされているが、実際は隠れて暮らしているのはロッテも知っている。他国の魔法士の血をひくものは、簡単な術くらいならば大抵使えるらしい。
基本的に魔法の使用を禁止されているこの国では、そうそう使える機会はないのだけれども。
「ああ、魔女と言っても薬品などを扱う女性だ。魔法士の血は流れていないらしい、本当かどうかは知らないが」
「そうなのね、じゃあヤックルも安心だわ」
山小屋のドアを叩くと年老いた女性が出てきて、レーヴェの顔を見た途端何とも言えない表情をした。
「お前はまだこんなとこにいたのかい? いつまでたっても鈍間だね、間に合わなくなってもアタシは助けちゃやんないよ」
「分かってるよ、相変わらず口煩い婆さんだな。それよりもこの子を紹介したいんだ、彼女はシャルロッテ。ファーレンハイト侯爵家の令嬢だ」
そう言って紹介されたロッテが老婆に挨拶をしようとすると、彼女の表情が驚きのそれへとみるみる変わっていく。そして……
「この娘は、聖女じゃないか!」
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