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言葉の裏に隠したモノ ~契約…?秘密をバラすなってこと?

プロローグ

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 目まぐるしく場面が変わるのは、きっと夢だから。
 少年はそう理解していた。しかし、

『いやだ。ショーティとは組みたくない』

 目の前で告げられた一言に、記憶が揺り動かされる。声は、まだ幼い少女によるものだった。そして、少年もまた幼い自分であった。

『だって、私よりショーティの方がかわいいんだもん。自分よりかわいい子とは組みたくないわ』

 金髪碧眼の愛くるしい少女の言葉に一同がざわめいた。そして視線は、ゆっくりと少年を捕らえる。栗色のさらりとした髪、大きな茶系の瞳、少女に負けず劣らず愛くるしい少年は周囲を見回し、

『あ、じゃあ僕、あっち手伝う』

 にっこりと笑みを浮かべ、首を傾げた。肩先で揃えた栗色の髪がさらりと揺れる様に周囲が見惚れていることなど知る由もなく、踵を返すとスタスタと歩き始めた。事実、彼にはバザーでの劇になんら未練もなかった。

 なぜこんな意味のない劇に参加しなければならないのか。子供にだって意思はあるのに、そうあるべきだと勝手に押しつけてくる。反発すると疲れるのでそのままにしていたのだが、同年からの声は大切にするべきだ。そう幼いショーティは考える。
 それに、いつのまにか身につけた聡さが同年代の友人たちを遠ざけて、あまつさえ可愛さが生意気だと映る。

 ついでに言うならば、ショーティ自身は自分のことをかわいいと思ったことなどなかった。

 物心ついてから8年程、この顔をずっと見てきた。自分なんかよりももっとかわいい子など山のようにいる。この顔をかわいいなんて、図々しいにもほどがあるというものだ。

 それは幼いショーティが思ったのか……、言葉が脳裏で、いや心の奥底で……そう、どこか深いところでつぶやく。

『かわいいって言うのは……』

 ふわふわの金髪はまるで綿帽子。
 色の白い肌は柔らかくピンクを帯びて地球の空を思わせるブルーの大きな瞳…。

“それは、誰?”

 ショーティの耳元に優しく響いた声は、しっとりと細い大人の女性のものだった。





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 この ”言葉の裏に隠したモノ” は ”seasons” の中で触れた、ショーティとアーネストが学生時代に交わした契約に纏わる話です。重複しているところもありますが………お付き合い頂けると幸いです。
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