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ただ会いたいだけなのに ~冬のパリ、甘々だったよね!

迎えに行くよ

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 2113年 2月

 会って、まずは何を言うべきなのか。そもそも、会ってくれるだろうか。

 仕事の真っ最中にもたらされた朗報(?)に、ショーティは仕事仲間を説き伏せて一人ニューヨークへと戻っていた。

 今日、まさにこれから、ショーティの学生時分の友人の結婚式があり、それにアーネストが出席するとの情報が入ったのだ。
 まさか、さほど親しくも無い友人の結婚式に出席するなどにわかに信じられなかったが、どうやら会社絡みもあり、更にスイも出席するらしい。

 2ヶ月にしてようやく動いたアーネストの真意に、その時初めて触れたような気がした。
 つまり、キーマンはショーティ自身だったのだ。

 今回の結婚式にショーティは出ない。取材旅行と被っているからだが、そもそもその友人とはそれほど仲の良いほうではなかった。それを見越してのアーネストの行動ならば、自分が避けられているのは事実だ。

 その原因がショーティには思い当たらないのだが、それはそこ、当たって砕けろはジャーナリスト魂だ。もちろん、当たって砕けるつもりは毛頭ないのだが、そもそも会わないと話にならない。

 そのためにショーティはムリを承知でこの飛行機に飛び乗った。

 取材ももちろん大切だ。けれど、何を置いても、ショーティの中での優先順位はアーネストだ。
 それをきちんと伝えなければ、わかってもらわなければ……。

 時間だけが無常にも過ぎていき、間に合わないかもしれないとつぶやく。

 飛行機の窓から覗く雲海を見下ろしたショーティは、ゆっくりとその瞳を閉じた。
 脳裏に浮かぶのはその悠然たる姿。
 茶金の切れ長の双眸。絹糸のように艶やかな金茶の髪。優雅な物腰と洗練された所作。けれどどこか儚く、脆く、砕けやすそうな心。

 もしかしたら本人さえも気付いていない、その内なる真実。
 全てを捨てさせることができたら。
 それが、自分のためだったら……。

 最高だとは思うけれど、今はただ、名前を呼んで欲しい……と、そう切に願うショーティであった。



   ただ、会いたいだけだから END


~・~・~・~・~・~

月について語ってみようか ~季節の前に はここで完結です。seasonsの補足的にショーティ視点を書いてきました。お付き合いありがとうございました!
この後seasonsにつながって、ショーティは誘拐…されます。誘拐と言うより、拉致ですかね……監禁?
もう一踏ん張りがんばれショーティ。


 
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