精霊の加護

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精霊の加護146 西部大草原開発計画のヒント

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精霊の加護
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№146 西部大草原開発計画のヒント

 西部大草原の所領予定地を、昨日1日掛けてくまなく見て回った。今日は国境の町バレンシーに向けて出発だ。
 西府からの役人ふたりには、新領地を案内してくれた礼を言って、ここで別れた。役人ふたりは西府に帰って行った。

 所領予定地は、農地か牧草地には適しているのだが、それだと気の利いた開発計画にはならない
 西府から馬車で1日半と離れているので、西府を取り巻く一大農地からすると、農作物の集荷には輸送費用が余計に掛かる。牧草地にして牧場をやるにしても、西府周辺の農地のまわりに点在する牧場は、西府から半日なので、やはり出荷コストで敵わない。
 結論としては、このままでは西部大草原の新領地には大して人が来ないから税収も上がらない。まぁ、だからこそ空き地なんだろうけどな。

「はぁぁ。手詰まりだな。」いい考えが浮かばず、独り言とため息が漏れてしまう。
「使者どの、どうされたのです?」
 精霊たちは索敵に飛んでおり、アクアビット号の見張台には、俺とガキンチョ5人組だけだ。俺の溜息にエカチェリーナがすかさず反応した。エカチェリーナにつられて、マリーもアイチャも、そしてヘルムートもディエゴも俺に注目した。

 余談だが、エカチェリーナは俺のことを「使者どの」と呼ぶ。俺が同盟締結のために帝国に行ったときにそう呼んで、それが何となく定着した。
 ちなみにアイチャの俺に対する呼び方は「使徒様」だ。教国は精霊神を信仰しており、精霊は神の使いで、精霊と契約する精霊魔術師は、教国では精霊神の使徒なのだそうだ。
 なお、教国出身で回復とバフを司る光の精霊との契約者は聖人または聖女と呼ばれている。そう言う意味では、ソルとも契約している俺は教国では「聖人」なのだが、アイチャと出会ったときはまだ、俺はソルとは契約していなかった。王国7精霊たちと契約していたので、アイチャからすると「使徒様」なのだ。

 少々話は逸れたので、元の話題に戻す。

 俺は、西部大草原の開発計画が行き詰っていることをガキンチョ5人組に話した。
「使徒様、今ある牧場は牛ばかりなのですよね?」アイチャが聞いて来た。
「ああ。そうだ。」
「では馬の牧場にすればよろしいのでは?現存の牧場と競合しないと思います。」なんと!その手があったか。確かに馬の牧場なら、牛の牧場とは競合しないな。
「おお、それはいい。流石、僕のアイチャ、素晴らしい思い付きだ。馬なら騎士団が必ず買うだろう。」ヘルムートが意中のアイチャの提案にすかさず賛同し、騎士団養成所の学生だけあって、真っ先に騎士団への販路のことも提案した。それと、さり気なく『僕のアイチャ』とか言ってたし。笑
「そうだね。騎士団でも馬は飼っているが、いい馬なら真っ先に購入するだろう。」ディエゴも賛成した。ディエゴも騎士団養成所の学生だ。

「馬か。確かにいいな。でも馬を生産するだけなら、村の人口はそうは増えないだろ。税収を上げるには人を集めたい。馬で人を集めるには…。」
「使者どの、それなら競馬をやればいいと思います。」エカチェリーナだ。
「競馬?」
「馬の競争です。帝国では競馬の催しをやっています。」
「馬の競争で人が集まるのか?」
「もちろん集まります。1等を予想して、その馬の馬券を馬券売場で買うんです。そして、当たった馬券は、馬券売場で払戻されます。人気の低い馬が勝つと馬券の払戻金も高くなるんです。」それだ!ギャンブルなら人は集まる。それに、西府から1日半の距離だから、訪れたら宿泊になる。
「なるほどな。馬券はいくらするんだ?」
「大銅貨1枚です。」
「安っ。」
「だから買いやすいのです。でも何枚買ってもいいのです。競争を始める少し前に締め切って、馬ごとの馬券の売上げから、払戻しの金額を決めるんです。」

「エカチェリーナ、詳しんだね。」ディエゴが聞いた。
「やったことあるのよ。そのとき、大銅貨1枚が大銀貨1枚になったわ。」
「え?100倍?それは凄いね。」ディエゴが驚きの感想を言った。俺も、口には出さなかったが、十分驚いたけどな。
「連戦連勝の馬が出てたので、多くの客がその馬の馬券を買ったの。私は人気がなかったけど調子が良さそうな馬の馬券を買ってて、その馬が1等になったの。」
「流石、僕のエカチェリーナ、目の付けどころが違う。」すかざず、ディエゴがエカチェリーナを褒めた。こいつもちゃっかり『僕のエカチェリーナ』とか言ってるし。笑
「そんな配当が出たらハマるな。」と俺が言うと、
「使者どの、そんな配当金はめったに出ませんよ。ところで、ちょうど帝国に行くんですから、競馬場を見学されてはいかがです?」
「そうするよ。エカチェリーナ、帝都で競馬場を案内してくれ。」
「はい。」

 馬の牧場と競馬場か。それに宿泊所も要るな。西府との間に送迎も必要だ。競馬は定期的に開催しよう。距離は短距離、中距離、長距離と分けるか。速さを競うのもいいけど、重い荷を引かせて馬力比べも面白そうだ。
 競馬場を村営にすれば、税収に匹敵する財源となる。

 そうだ、折角だから乗馬体験もいいか。そうすれば家族連れも来るぞ。乗馬に慣れてる客には、野外の乗馬トレッキングなんてのもありだぞ。
 待てよ、乗馬ができる客が、参加できる催しもできないかな。スピード競争にすると危ないから、いいペースで馬を長距離走らせるような…。
 例えば、長距離を区間ごとに区切って、区間ごとに規定時間内で走る。速くても着いても馬が疲れてたら失格ってどうよ?馬を疲れさせないペースで長距離を走るとか。そうだ、ライダーとクルーのチームにして、区間と区間の間の休憩のときにクルーが馬をケアしつつ、ライダーは馬を疲れさせないように乗る。とか?

 行き詰ってたのに、アイディアが浮かんで来たぞ。
 競走馬や軍馬を生産しつつ、ギャンブルの競馬場もいいが、客が参加できる乗馬トレッキングもありだ。
 よし、この線で本格的に構想を練ろう。

 ふと気付くと、ヘルムートとアイチャ、ディエゴとエカチェリーナが、それぞれいい雰囲気になっている。ぴったり寄り添ってるし、さり気なく腰に手を回しているではないか。
 若干、ボッチ気味のマリー。可哀想に。俺はマリーを手招きして、耳元で囁いた。
「ふた組とも、いい雰囲気じゃないか?」
「そうなんですの。もう少しでキスまで行きそうですのに、ヘルムートもディエゴもなかなか思い切りませんの。」恋の進展に期待してヤキモキしている。こう言うところは幼くても女の子だ。笑

『ゲオルクー、お腹すいたー。』ツリだ。精霊たちは、アクアビット号の周囲を警戒するために上空に飛んでいて、索敵してくれている。たまにこうやって、魔力補給に下りて来るのだ。
 ツリがぶっちゅーっと魔力補給をしているのを、ふた組ともチラ見している。
『にひひー。』と悪戯っぽい笑いを浮かべて上空に戻るツリ。
 あ、俺の心を読んで、ふた組の初々しいカップルを煽りに来たのか。まったくもう。苦笑
『ゲオルクー、クレもー。』ぶっちゅー、ちゅーちゅー。吸ってやがる。クレも煽りに来たな。ふた組のこっちを見る眼がギョッとなった。もはやチラ見ではなくガン見だ。笑

 あれ?マリーがちょっと不機嫌になったかな?まぁ仕方ないか。魔力補給と分かっちゃいるんだろうけど、未来の旦那にべろちゅーして行かれたんだものな。
 もっとも、精霊たちには間違いなくふた組を煽る悪戯心からの行動だけどな。あ、やっぱりふた組とも意識してるぞ。ほんと、精霊たちは悪戯好きだ。苦笑

 もちろん精霊たちに、マリーを刺激する気はさらさらなかったのだが、ちょっとだけご機嫌斜めになったマリーに、ご機嫌取りのつもりでキスをした。
「!」驚くマリー。
「「え?」」「「え?」」もっと驚くふた組。
 もちろん9歳の女の子だから軽くチュッって感じだったけど。でもマリーは真っ赤になって俯いてしまった。あれ?マリーとキスしたのってこれが初めてだったか?
 んー、軽いご機嫌取りのつもりが、マリーを驚かせ、ふた組をさらに煽る結果となったようだ。なんか俺、やらかしたっぽい。苦笑

『ゲオルクー、敵ー。』『敵ー。』精霊たちが降りて来た。
「どこだ?数は?」
『1㎞先の土の中ー。』
「土の中だと?」
『20~30匹ー。』
「多いな。大きさは?」
『10mー。』
「10mって…。」

 俺は伝声管で御者席に伝えた。
「1㎞先の土の中に10m級の敵が20~30匹だそうだ。心当たりある?」
「そりゃ、グランドワームじゃないか?」「ですわね。」「間違いないわ。」
 カルメン、ジュヌ、リーゼだ。流石、元ギルドの受付主席の3人。一発で敵の正体を見抜いた。グランドワームって言ったらミミズの化け物だな。

「このまま進んで大丈夫か?」
「100mまでは近付いて大丈夫よ。ただし、精霊魔法を撃ち込んで、地上に出させて。」
「いいか、お前らはここで見てろ。実戦だ。演習じゃないぞ。」
 黙って頷くガキンチョ5人組。

 100mまで近付いた。
「クレ、地面をこね回してグランドワームを引きずり出せ。」
『おっけー。』
 クレの土属性の精霊魔法で広範囲の地面が波打った。慌てたグランドワームがあちこちから頭を出す。

「フィア、火球をぶち込むぞ。派手にな。」
『ラジャー。』
 上空に大きな火球ができてグランドワームたちに降り注いだ。焼かれ、のた打ち回るグランドワームたち。

「チル、吹雪で凍らせろ。動きを止めるんだ。」
『任せてー。』
 吹雪が一面を襲い、急に動きが悪くなるグランドワームたち。変温動物だもんな。凍った奴らもいる。

「ワラ、水浸しにして足場を悪くしろ。どろどろにして動きにくくするんだ。」
『了解ー。』
 地下水が吹き上げ、クレがこねた土と相まって、ドロドロにした。これでスムーズには移動できまい。

「ウィン、竜巻で襲え。」
『はーい。』
 ゴーっといくつもの竜巻がグランドワームたちを襲い、中には上空に巻き上げられたものもいる。あ、巻き上げられたのは半身で、胴体がちぎれたっぽい。竜巻でねじられたもんな。

「メタ、落雷、行ったんさい。」
『いいよー。』
 いくつもの落雷がグランドワームを直撃した。もう、ほとんどの奴がくたばってるんじゃね?

「ダク、デバフを見舞ったれ。」
『出番、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』
 各種デバフが瀕死のグランドワームたちを襲う。なんか黒い靄が掛かったような…。

「ツリ、拘束。」
『分かってるよん。』
 地面から蔓が敢えて、グランドワームたちをぐるぐる巻きにした。なんかそのまま絞め殺しそうな感じやん。

「ソル、わが妻たちにバフ。」
『ほーい。』
 ソルのバフがわが妻たちを強化する。

 カルメンも皆にバフを掛け、さらにグランドワームにデバフを掛けた。
 トーラはグググっと力を込めてブーストモードで2倍の大きさになった。

「よし、掛かれー。」
 ベス、ビーチェ、ドーラ、トーラの近距離攻撃組が突撃して行き、ジュヌは魔法障壁を張った。リーゼは援護のウインドカッターを放っている。
 間もなく到着した近距離攻撃組がグランドワームに襲い掛かった。もとより各種の属性攻撃で滅多打ちにされ、各種デバフでさらに弱り、蔓の拘束も効いている。
 ビーチェの異国の大刀による斬撃、ベスの騎士団の長槍による刺突、ドーラのドラゴンブレイドによるスラッシュ、トーラのタイガーガントレットによるコークスクリューが、次々にグランドワームを粉砕して行った。

「凄ぇ。」「一方的だわ。」「なんなのよ?」「信じられねぇ。」「流石、ゲオルク様。」
 ガキンチョ5人組がそれぞれの言葉で感嘆している。ちなみに最後の感想がマリーな。

 引き上げて来た、ベス、ビーチェ、ドーラ、トーラの近距離攻撃組に、ソルとジュヌがヒールを掛けた。この後、手分けしてグランドワームの魔石を回収し、クレーターだらけの荒地になった草原を、ツリがきれいに元通りにして、バレンシーへの行程を再開したのだった。

 再び、アクアビット号の屋上見張台にいる俺とガキンチョ5人組。
 マリーは目ん玉をハートマークにして、俺の膝の上をちゃっかりと定位置に定めていた。やたらと精霊魔法の話を聞いて来る。余程、精霊魔法が気に入ったらしい。
 俺は膝の上に座ったマリーをバックハグする格好だが、その姿勢から俺を見上げて来るマリーが何ともかわいい。第二形態の頃の精霊たちを思い出す。もはや、俺たちふたりは、デレパパ&愛娘状態だ。苦笑
 精霊たちが、上空での索敵任務から交代で魔力補給に降りて来る度に、マリーは「○○様、さっきの精霊魔法、凄かったです。」と言う台詞を繰り替えして大燥ぎだ。わが精霊たちが放った精霊魔法は、魔術師見習のマリーの琴線をいたく刺激したようだ。
 こうなると、精霊たちへ魔力補給のべろちゅーをしても、マリーは不機嫌にはならなくなった。

 残りの4人も俺に尊敬の眼差しを向けて来たが、俺とマリーの、デレパパ&愛娘のべったりんこに当てられたのか、一定の距離を置いている。
 さらには、ヘルムートがアイチャの、ディエゴがエカチェリーナの手を握り、しかも恋人繋ぎをしているではないか。笑

 それからひと晩野営して、国境の町バレンシーに到着する頃には、ふた組の初々しいカップルは、キスも済ませ、ディエゴはエカチェリーナを、リーナと愛称で呼ぶようになっていたのだった。

 くっつけちゃおう大作戦、成功♪

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

設定を更新しました。R4/11/27

更新は火木土の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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