精霊の加護

Zu-Y

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精霊の加護158 教皇様を説得

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精霊の加護
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№158 教皇様を説得

 殿下と教皇様の交渉は、まるで俺が通訳するような状態で進んでいたのだが、ようやくその交渉が一段落した。いや、ほんとに疲れた。
 そもそも教皇様が、最初から本音を言えばいいのに、全部俺の御心のままにと言うもんだから、殿下が俺の意見を聞く。俺は、教国の細かい事情を知らないものだから、そこを教皇様に聞くと、そこで初めて教皇様はご希望を述べられる。
 最初から言えってんだよ!

 で、会談が一段落着いたら、教皇様以下教国から使節団は、あてがわれた控室に、引き上げて行こうとしたので、俺は待ったを掛けた。
 アイチャも教皇様とともに残ろうとしたので、アイチャだけはガキンチョ5人組がいる部屋へ戻らせた。ちょいと仕込みをするから、アイチャに席を外させたのだ。

「使徒様、何ですかな?」
「教皇様に折り入ってお願いがあります。」
「お願いなど畏れ多い。お命じ下され。」
「いやいや。そうは参りませんよ。実は東部公爵嫡男ヘルムートと、アイチャが恋仲になっております。」
「なんと!アイチャは神にお仕えする巫女見習ですぞ。将来は聖女かもしれぬのに、それを投げ打って色恋沙汰ですか。少し前までは、ソル様との契約のキスすら拒んでいたと言うのに。」

 そうなのだ。アイチャは、契約しようと誘うソルに対して、キスは嫌だとツンデレを貫いていた。まぁ異性に対する照れもあったのだろう。年相応である。
 精霊は契約した相手から体液を得やすい様に、契約相手が好む性別を取る。女の子のアイチャと契約したければ、精霊は男の子になるのだ。実際、初めて会ったときのソルは男の子だった。
 しかしアイチャのツンデレ対応に、いい加減、嫌気が差していたソルは、俺と出会うと、あっさりとアイチャに見切りを付けて、俺と契約すべく女の子になった。そして俺と契約したのだ。

「教皇様、アイチャも日々成長してるのですよ。ところで、相手がヘルムートであれば、将来的には教国と隣接する東部公爵家を継ぐ訳です。アイチャを娶った親教国の領主が、教国のすぐ隣に誕生すれば、教国にとっても都合がいいのでは?」
「しかし使徒様。それでしたら王太子殿下に縁付けて頂きたいものです。」
「殿下は帝国と教国の三国同盟に重きを置いていますからね、そのためには、一方だけと婚姻を結ぶことはありません。両国から伴侶を得るか、どちらからも得ないかです。殿下はどちらからも伴侶を得ないと言う決断されました。」
「そうですか。それは残念です。最善の手である王太子殿下との婚約が絶望的であれば、次善の手である東部公爵家との婚約で手を打つべきでしょうね。」
「いや、教皇様。ヘルムートへの輿入れは最善の手だと思いますよ。殿下なんかに輿入れさせたら、殿下はバランスを取るために帝国からも姫を迎えるでしょう。そしたら教国と帝国の、王宮での勢力争いに発展します。それを見て、平気で楽しむような男ですよ。殿下は。」

「こら、ゲオルク!全部聞こえておるぞ。」
「あれ?殿下、まだいらしたんですか?そうならそうと言って下さいよ。」
「たわけ、どうせ余がいるのを知っててわざとほざいたのであろう?この痴れ者めが。」
「うう、申し訳ありません、殿下。すべてお見通しとは畏れ入りました。」
「こいつめ、またもや抜け抜けとほざきおる。」と言う殿下をスルーして、
「さて、教皇様。いかがですか?」教皇様に話を戻す。
「使徒様のたってのお勧めとあれば、否やはありませぬ。使徒様の御心のままに。」
「それはありがたい。でも、一応ヘルムートの人物も、見てやって下さい。」
「承知しました。それでは私は部屋でアイチャとヘルムートどのをお待ちしております。」
 そう言って、教皇様は会見の場から退出して行かれた。

 しばらくしてガキンチョ5人組がやって来た。
 そして、この5人組のリーダー格であるマリーが切り出した。
「ゲオルク様、これからヘルムートとアイチャが婚約のお願いに、教皇猊下の所に参ります。是非ともお口添えを頂けませんか?」アイチャは真剣そのものの表情で、ヘルムートとアイチャは、神のお告げの私的乱用について、俺から説教を食らったこともあり、マリーの後ろで心配そうに控えている。
 ここは未来の正室、マリーの顔を立てて、ポイントを稼ぐか。何たって三の姫殿下だしな。
「マリーのたっての願いとあらば、俺は未来の夫として聞き届けねばなるまいな。」と、軽くくすぐる様なことを言ってやると、
「ああ、ゲオルク様、ありがとうございます。」「ゲオルクどの。」「使徒様。」
 3人の目がキラキラしている。マリーの目に至ってはハートマークだ。横で殿下が呆れている。「白々しい。」と言う声が聞こえて来そうだ。

「しかしな、最初から俺に頼るのはよくない。ヘルムート。教皇様に『アイチャを下さい。』と言ってみろ。お前が話を付けるつもりでな。どうしても教皇が『うん。』と言わなかったときは、俺が助っ人に入ってやる。」
「はい。もちろんそのつもりです。」
「ムート様…。」アイチャがヘルムートに対して、目ん玉をハートマークにした。
「ヘルムート、頑張れよ。気合と気迫だ。そしたら何とかなる。僕みたいにな。」
 おいこら、待てや。ディエゴ、お前なぁ、イゴール帝を自分で説得したと思ってるんじゃないだろうな。お前が頼みに行く前に、俺が話を付けてやってたんだぞっ!
 と、言おうと思ったが、それを言うといかにも野暮ったい男に成り下がるのでやめておいた。

「いざとなったら俺が後ろに控えている。でもな、ヘルムート、お前が決めて来い。」
「はいっ。ゲオルクどの。
 アイチャ、参るぞ。」
「はい、ムート様。」
 ふたりは喜び勇んで出て行った。

 それから30分後。ヘルムートとアイチャが戻って来た。殿下はすでに、しびれを切らし、「後で報告に来い。」と言い残して、自室に戻っていた。

「ゲオルクどの、教皇猊下からお許しを頂きました。」
「それはよかったな。しかし、ずいぶん時間が掛かったな。」
「はい。実は教皇猊下に試されたようなのです。」
「ほう。」俺は、ヘルムートとアイチャの報告を聞かされた。

~~ヘルムート・アイチャ目線、30分前~~

「教皇猊下、お目通りをお許し頂き、ありがとうございます。トレホス王国東部公爵家嫡男、ヘルムート・ベルリブルクでございます。」
「東部公爵家ですか。教国の良き隣人としてよろしくお願いしますよ。」
「はい。こちらこそよろしくお願いします。」
「アイチャも一緒か。ちょうどよかった。
さて、早速ですが、ヘルムートどの。そなたを案内して来たアイチャですが、教国と王国との絆を深めるために、王太子殿下に嫁がせたいのです。」
「「え?」」ハモるヘルムートとアイチャ。
「どうであろう、ヘルムートどのには、お隣の誼で、殿下へのご紹介の労を取って頂きたいのだが、お引き受け頂けますかな?」
「…。」いきなり出鼻を挫かれ、絶句するヘルムート。
「いかがされたのです?」

 すー、はぁー、すー、はぁー、と深呼吸したヘルムートは、きっぱりと断りを入れた。
「畏れながら教皇猊下、その儀はお許しを。と言うのも、アイチャどのは、わが正室として、東部公爵家に迎え入れたいのです。」
「ほう、ヘルムートどのが?しかしヘルムートどのはまだ随分お若いようですが?」
「はい。まだ未熟者ですので、もうしばらくは婚約で構いません。」
「しかし私は、教国と王国が対等の同盟を結ぶためにも、王家の殿下に嫁がせたいのです。」
「いいえ、教皇猊下。わが東部公爵家は王家の一門で分家です。いわば王家に匹敵する家柄。わが東部公爵家と結ぶことは王家と結ぶことと同じです。」
「ほう、そうなのですか?」

「はい。しかもわが東部公爵家の領地には、教国との国境も含みます。教国から見れば、わが東部公爵家は王国の玄関にあたります。僕とアイチャが婚姻を結べば、王国と教国の懸け橋となり、王教同盟は盤石です。」
「それは殿下と結んでも同じでしょう?失礼ながら殿下は次期国王となられるお方。ヘルムートどのよりも、有望株に見えますが?」
「いいえ、殿下は教国と同じく帝国とも誼を結んでいます。帝国と教国のパワーバランスを重視しますので、教国だけと婚姻を結ぶことは致しません。」
「されば、帝国からもエカチェリーナ姫でしたかな?新帝の妹御も、アイチャとともに迎えればよろしいでしょう。」
「エカチェリーナ姫はすでに西部公爵家のディエゴと婚約致しました。」
「そうでしたか。」
「よって、アイチャどのと僕が婚約すれば、教国と帝国のバランスも取れます。」
「ふむ。」
「何よりも、僕とアイチャはすでに恋仲。僕たちの仲をぜひ認めて下さい。決して悪いようには致しません。」
「教皇様、私はヘルムート様をお慕いしているのです。」
「ふむ。では最後にひとつ。教国と王国が敵対したらどうされるおつもりですか?」
「そうならぬように尽力致します。」
「仮に敵対したら?」
「させません。それにゲオルクどのも、敵対させぬはずです。殿下は教国との友好関係をお望みです。殿下のお考えでは、王国は同盟の盟主となっても、教国や帝国の主君となることはありません。それに、教皇猊下ご自身も、ゲオルクどのの意に逆らってまで王国に敵対することはなされないでしょう?」
「ふっ。それはそうですね。ヘルムートどの、物怖じせぬ立派な物言いでした。よろしい、アイチャとの婚約を認めましょう。」

~~ゲオルク目線、現在~~

「…と言う訳なのです。」
「ヘルムート、お前なぁ。俺をダシに使うんじゃないよ。」
「まぁまぁ、いいではありませんか。ゲオルクどのが、王国と教国の対立を望むはずはないですからね。」
「それはそうだが。」
「それに殿下は賢いお方ですから、教国や帝国に対して、盟主にはなったとしても、主君面をする様なことは、決してなされないはずです。」
「まあ確かにな。」
「殿下が、教国や帝国を尊重している間は、両国とは揉めません。教皇猊下の、『仮に敵対したら。』と言う前提が、あり得ないんですよ。おそらく、僕の反応を見るための試験じゃないですかね?」ヘルムートの奴、しっかり見抜いてやがる。
「私もそう思います。そしてムート様のお返事を教皇様がお認め下さいました。ムート様は、無事、教皇様の試験に合格したんです。私のために…。」
「アイチャ…。」「ムート様…。」
「おい、お前ら、ここではやめろ。」
「あ、つい…。」「すみません。」

「分かった。じゃあ、殿下に報告に行こう。」
「「はいっ。」」

 それから殿下に報告に行った。ヘルムートが、殿下に対しても物怖じすることなく報告していた。ヘルムートの奴、教皇様を説得してひと皮むけやがったな。
 ま、教皇様に予め手を回していたのは、この俺だけどね!でもそれは言わないでおく。笑

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

設定を更新しました。R4/12/25

更新は火木土の週3日ペースでしたが、11月中旬にストックが尽きてしまい、1か月ちょっとの間、自転車操業で更新していました。
このため、後からの付け足しなど、修正改稿が増えてしまいました。
次週より、しばらく更新をお休みして、ストックを増やしてから再開いたします。

2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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