どうしようもない世界。

瀬見

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「日野はどうしたいの?」
「……どうしたいんだろうな。わかんないんだよ、全部」
「別に俺はさ、ここで死んでもいいんだよ。」
「……」
「だって、日野と一緒に死ねるし。」
「は、?」
「日野って馬鹿だよなぁ、なんで俺がたかが幼馴染にこんなに一生懸命になってると思ってんの?」

 冷静に考えてみれば不思議な話だ、長嶋には何度も命を救ってもらった。それも彼自身に危険が迫ろうとも。
 別に俺らは元々仲が良かったという訳でもない、幼馴染なんてほとんど意味の無い言葉となっていた。それなのに、何故彼はここまで俺と一緒に居て助けてくれたのだろう。
 
「あー、ほんっっとにバカだな。」
「いやそんなに言われるほど馬鹿じゃねえし!」 
「いや、お前は馬鹿だよ。それに鈍感。俺がこんなに体張って頑張ってアピールしてんのに1ミリも気づかねえの。」
「いや、だからさっきから何が、」
 
 続けようとした言葉は俺の口の中に飲まれていく。
 彼の唇と俺の唇が触れ合う、彼の髪がおでこに当たりくすぐったい気持ちになる。
 ——状況をやっと理解した途端に心臓がはち切れそうな程に早く鼓動し始める。
 彼の顔が離れ、長嶋は目を細め俺を見る。
 
「は、」
「これで俺の気持ち、少しは分かった?」
「い、いや、え……、」
「好きでもないやつの為に一生懸命になるほど俺、お人好しじゃねえっての。」
「す、す、す、す、すき!?」
「ははっ、顔真っ赤じゃん。」
「だ、だっていきなりキスとかしてくるから!俺、ファーストキスだったのに!」
「ま、だよな。お前モテないもんな。」
「ぐっ……!」
 
 事実に言い返せなくて、言葉に詰まる。確かに長嶋の容姿端麗な姿とは違い平々凡々な俺は生まれてこの方彼女も出来たことがない。
 長嶋はそんな俺をニヤニヤとした笑みを浮かべながら見つめてくる。イラッとしたが、それでも何だかさっきよりは苦しくなくなったような気がする。
 代わりにファーストキスを奪われ、衝撃的な事実を知ってしまった訳だが。それに相変わらず車の外はゾンビだらけで絶望的な状況だが。
 
「それで、どうすんの?」
 
 なにが、とは敢えて聞かなかった。
 
「……長嶋はどうしたいの?」
「んー、俺は別にここで死んでもいいけど、俺の今までの行動の意味全然伝わってなかったのが悔しいんだよなあ。」
 
「だから、もうちょっと一緒に生きてよ。」
 
 ——まるでプロポーズみたいな言葉に笑いそうになる。
 絶望的な状況だし、助かる可能性なんて限りなく低い。けれど、彼の行動に嫌悪感を抱かなかった時点で、俺の答えは決まっていたみたいなものなのかもしれない。
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