目が覚めると幼女がいたんだ

お礼

恥ずかしい。

ここまで感情的に感傷に浸ったのはいつぶりだろうか。

それも、幼女の胸で泣くことになろうとは……


｢とーちゃん、もう痛くない？｣

どこか怪我でもしたかと思ったのか。

本当に優しい子である。

｢大丈夫だよ。ありがとうな｣


   そう、痛いのは心だけさ……！(恥)


｢良かったー！｣

｢じゃあ、昨日のお礼に行こうか！源さんの家分かる？｣

｢わかるー！｣


田舎だと、何がお礼になるんだろう。

畑とかあったら、ネギやら大根やら持って行くイメージがあるが……

もはや、畑がどこにあるのかすらわからん。


｢とーちゃん、何してるのー？｣

｢え？いや、ほら……お礼だし何か持っていかないと｣

｢大丈夫だよー！いつものニクタイロードーで！｣

肉体労働の事か？

この5歳児、本当に5歳か？


すると、庭先から聞き覚えのあるタイヤの音がした。

｢おお、おはよう！啓太！あずちゃん！｣

｢わ、おはようございます！｣

｢おはよーございまーす！｣

話を聞くと、これから畑仕事で、昨日は昼飯を食べに帰る途中だったとか……


   人様に多大なるご迷惑を……！


｢昨日は本当に、す……あ、ありがとうございました！｣

｢ハハハ！いいってことよ！｣

俺だったら、仕事の邪魔をされた上に昼飯までお預けにされて、こんなに笑っていられるだろうか。

｢あ、あの！｣

｢なんだ？｣

｢あの……俺、こんなに親切にされたの久し振りで……あ、いや！俺が忘れてるだけなんでしょうけど……それで、何かお礼したくて｣

｢そーかそーか！なら、畑仕事手伝ってくれるか？｣

｢はい！｣


俺は、初めて人の為に仕事をしたいと思ったかもしれない。