銀色の雲

火曜日の風

文字の大きさ
30 / 91
3章 まず行動、目的は後からやってくる

2話 到着

しおりを挟む

 日の光が地平線に差し掛かかり、馬車の影は長く長く伸びていた。馬車の中には兼次と麻衣が、今日もスマホゲームをしながら時間を潰していた。

「だっ…から~! チートするなって、昨日も~、一昨日も~、何度も言ったよね?」
「真面目な話だが、やってないから、マジで… なんか運よく、最強キャラが出たり…俺に有利な展開が、頻繁に来る。」

 麻衣は若干キレ気味な態度で「おかしいから、絶対やってるから」と小さな声で連呼しながら、スマホの画面を、人差し指で力強く突いている。
 それを見ていた兼次は、ここで何かの違和感を感じた。彼はスマホ画面をタイトルまで戻し、クレジット画面を見た。そこには【制作・運営 ララ研究所】と載っていた。
 (…まさか、ララが作ってるのか? と言う事は、俺が有利になる展開は…)と思った彼は、何かを察したような顔つきで、麻衣を方を見ると。彼女は眉間にしわを寄せながら、イライラしながらスマホを操作していた。

俺は・・チートはやってない。これは真実だ… でも、なんかゴメン…」
「ほ~ら、やっぱり。認めた?」
「それでも俺は・・やってない。2回も言わせんな… 魔法石やるから機嫌直せ」

 兼次の言葉と共に麻衣は、スマホから目を離し彼を見上げた。

「その優しさが、気持ち悪い。なんか裏がありそう」
「あっそ・・・じゃあ、その魔法石は、来月の小遣いから天引きな」

「わぁぁぁ、冗談だってば~本気にしないでよ~」と麻衣は手を彼に向け、その手を振りながらアピールすると共に、すばやく話題を変えた。「しかし、このアプリってすごいよね? 1日おきにアップデートするし、バグなんて全く無いんだよ? 技術の進歩ってすごいね~」と彼女は笑顔で、スマホの画面を彼に向けた。

 そんな彼女を見ながら兼次は「だろうな…銀河系最速最強だし…」と彼女に聞こえない様に、小さな声で言うのであった。

 ドンドンと、馬車の中に壁を叩く音が響いた。それと共に「お客さーん。もうすぐ着きますよー」と運転手の大声が、馬車の外から聞こえた。

「三日も掛かったか、無駄に遠かったな。むしろ移動スピードが遅すぎだ…」
「イベントとか、何も起きなかったね・・・」
「何言ってんの? なぜか・・・橋が陥落しただろ」
「自分で壊したくせに… さも自然に壊れました、みたいな発言ねぇー??」

 兼次と麻衣は、窓から遠くに見える街並みを眺めていた。

 ……
 …

 カキレイの街から、川を挟んでおよそ150km。簡素な田畑が広がる中に、その街はあった。街の作りは、カキレイの街と酷似しており、遠目で見ると見分けがつかない。そんな街の入り口に兼次達の馬車が到着した。

「はぁぁー、ずーっと座ってたせいか、疲れたな。夜も野宿だったし…」
「いやいや、座ってなかったでしょ? ずーっと横になって、私の太もも見てたじゃん…」

 馬車から出てきた兼次は、両手を上げて背筋をほぐし始めた。後から出てきた麻衣は、そんな彼を見てその横に立つ。そして彼を見上げ、微笑んだ。

「ふっふっ…運命の出会いってのが、無かったね… 盗賊とか2、3隊は来るかなーって、思ってたけど。残念だったわー」
「それが現実だ。だが、これから俺には、大人の出会いがあるのだよ! ここから始まる運命の出会いがな!」

「それ絶対、お金目当ての人しか来ない気がするんだけど…」と麻衣は、兼次を肘で突きながら言った。さらに「前もって言っておくけど、宿屋にお持ち帰りしないでよね?」
 兼次はそんな麻衣を見下ろしながら「…うむ …いや スリーピーもありだな」と小声で答えた。

「ないない、絶対ないから」と麻衣は手を振りながら答える。しかし、何かを思い出したように、その手を口元に当てる「まてよ…ケモ耳なら…ありかな? ・・・いや、でも・・・う~ん」と瞼を閉じ考え始めた。

「旦那ぁー、あっしはこの辺で待ってます。宿屋を決めたら、来てください」

 馬車から手を振り、陽気な運転手が兼次達に話しかけた。「では、待ってますよー」と更に念を押した。兼次は手を上げ「おぅ、頼んだぞ」と答える。運転手は手綱を振るい、馬車を動かせると街の中心部に向かって進んでいった。

 兼次は馬車から降りたその場所で、辺りを見渡した。そこからほんの数十メートル先に、宿屋らしき看板が目に入った。彼は、隣で考え込んでいる麻衣を見る。

「よし宿屋は、あそこにするぞ!」
「ちょっと、待って! 決めるの早すぎない? しかも、近っか!」

 麻衣が目を開けると、兼次は目の前の宿屋に向けて、すでに歩き始めていた。彼女は小走りで彼に追いつくと、彼の袖を引っ張った。

「ねー、もちょっと考えようよ? 街の中心部に行ったら、いい宿あるかもよ? ついてに観光も…」
「速攻、即、決断、それが俺。それに、こんな田舎町に観光は期待できんな…行くぞ!」
「まぁ…いいか、自由行動あるし・・・」

 麻衣と兼次は、周りの景色に目もくれず宿屋に入った。宿屋の中は簡素な作りで、カキレイの街で泊まった宿屋と、さほど変わらなかった。二人は受付を済ませると、そのまま部屋に入った。二人は、その入り口で立って部屋を見渡す。ベッドしか置いていない、簡素な部屋を見て、

「今回も、ベッドが二つ・・・この世界には、ダブルベッドと言う概念がないのか?」
「そうかもね? ふっふふ…」

「では麻衣。着替えるぞ、一応、現地住民と同じ服にしよう」と兼次は言うと、部屋の中に向かって歩き始める共に、スマホを取り出し操作しながら耳にあてた「ララ、服の変更を頼む。お任せで・・」と彼が言うと同時に、彼の着ている服が全て粒子状になる。その粒子状の物は、彼の周りを回り、再構築をはじめ服となった。

「あえて、服の解説はありません。誰得? って事ですね」
「ナレーション要らないから、さっさと着替えろ。スカートは股下5cmな!」
「絶対いや!」

 麻衣はスマホを取り出し、操作を始めた。服変更アプリを起動し、画面を見るとトップ画面に、おすすめが表示されていた。

「すでに、おすすめ現地の服が、登録されてる。…件について!」と麻衣は、その言葉共に兼次の方を見た。
「俺は何も指示してないぞ。さっさと着替えろ」
「しょーがないわね・・・」

 麻衣は、そんな兼次から背を向けた。スマホのおすすめボタンを押すと、服の変更が始まった。

「ダサいし… 谷間が… 膨らみの強調が・・・嫌すぎる」
「現地の服について… 生地は伸び縮みしません。頭からかぶせながら着る為に、首の部分は大きめになっております。そのおかげで、胸の谷間辺りまで切れ込みがあり、谷間がよく見えます。ワンピース状になった服を、紐で腰のくびれ辺りを縛る為、お尻と胸が強調されます。スカート部分の長さは、膝上5cmぐらいでしょうか・・・太ももが見えないのが残念仕様です」

「ナレーション止めてって! 言葉で解説されると、恥かしいから・・・」
「さっきのお返しだ」

 兼次は冷の出入り口に向かって歩き始めた。ドアを開けると、振り返り麻衣を見る。

「では、俺は探求しに行くから。くれぐれも、事件を起こすなよ?」
「大丈夫だって・・・ たぶん」
「いいか、万が一があったら。全身黒色の服に着替えて、上空に逃げろ。いいな? 夜ならバレないはずだ。くれぐれも、攻撃するなよ? 騒ぎが大きくなるからな」
「そうやって、念を押すと。フラグが立つんだよね・・・」

「では解散、自由行動だ!」と兼次は、ドアから出て行った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

別れし夫婦の御定書(おさだめがき)

佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★ 嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。 離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。 月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。 おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。 されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて—— ※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...