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3章 まず行動、目的は後からやってくる
2話 到着
しおりを挟む日の光が地平線に差し掛かかり、馬車の影は長く長く伸びていた。馬車の中には兼次と麻衣が、今日もスマホゲームをしながら時間を潰していた。
「だっ…から~! チートするなって、昨日も~、一昨日も~、何度も言ったよね?」
「真面目な話だが、やってないから、マジで… なんか運よく、最強キャラが出たり…俺に有利な展開が、頻繁に来る。」
麻衣は若干キレ気味な態度で「おかしいから、絶対やってるから」と小さな声で連呼しながら、スマホの画面を、人差し指で力強く突いている。
それを見ていた兼次は、ここで何かの違和感を感じた。彼はスマホ画面をタイトルまで戻し、クレジット画面を見た。そこには【制作・運営 ララ研究所】と載っていた。
(…まさか、ララが作ってるのか? と言う事は、俺が有利になる展開は…)と思った彼は、何かを察したような顔つきで、麻衣を方を見ると。彼女は眉間にしわを寄せながら、イライラしながらスマホを操作していた。
「俺はチートはやってない。これは真実だ… でも、なんかゴメン…」
「ほ~ら、やっぱり。認めた?」
「それでも俺はやってない。2回も言わせんな… 魔法石やるから機嫌直せ」
兼次の言葉と共に麻衣は、スマホから目を離し彼を見上げた。
「その優しさが、気持ち悪い。なんか裏がありそう」
「あっそ・・・じゃあ、その魔法石は、来月の小遣いから天引きな」
「わぁぁぁ、冗談だってば~本気にしないでよ~」と麻衣は手を彼に向け、その手を振りながらアピールすると共に、すばやく話題を変えた。「しかし、このアプリってすごいよね? 1日おきにアップデートするし、バグなんて全く無いんだよ? 技術の進歩ってすごいね~」と彼女は笑顔で、スマホの画面を彼に向けた。
そんな彼女を見ながら兼次は「だろうな…銀河系最速最強だし…」と彼女に聞こえない様に、小さな声で言うのであった。
ドンドンと、馬車の中に壁を叩く音が響いた。それと共に「お客さーん。もうすぐ着きますよー」と運転手の大声が、馬車の外から聞こえた。
「三日も掛かったか、無駄に遠かったな。むしろ移動スピードが遅すぎだ…」
「イベントとか、何も起きなかったね・・・」
「何言ってんの? なぜか橋が陥落しただろ」
「自分で壊したくせに… さも自然に壊れました、みたいな発言ねぇー??」
兼次と麻衣は、窓から遠くに見える街並みを眺めていた。
……
…
カキレイの街から、川を挟んでおよそ150km。簡素な田畑が広がる中に、その街はあった。街の作りは、カキレイの街と酷似しており、遠目で見ると見分けがつかない。そんな街の入り口に兼次達の馬車が到着した。
「はぁぁー、ずーっと座ってたせいか、疲れたな。夜も野宿だったし…」
「いやいや、座ってなかったでしょ? ずーっと横になって、私の太もも見てたじゃん…」
馬車から出てきた兼次は、両手を上げて背筋をほぐし始めた。後から出てきた麻衣は、そんな彼を見てその横に立つ。そして彼を見上げ、微笑んだ。
「ふっふっ…運命の出会いってのが、無かったね… 盗賊とか2、3隊は来るかなーって、思ってたけど。残念だったわー」
「それが現実だ。だが、これから俺には、大人の出会いがあるのだよ! ここから始まる運命の出会いがな!」
「それ絶対、お金目当ての人しか来ない気がするんだけど…」と麻衣は、兼次を肘で突きながら言った。さらに「前もって言っておくけど、宿屋にお持ち帰りしないでよね?」
兼次はそんな麻衣を見下ろしながら「…うむ …いや スリーピーもありだな」と小声で答えた。
「ないない、絶対ないから」と麻衣は手を振りながら答える。しかし、何かを思い出したように、その手を口元に当てる「まてよ…ケモ耳なら…ありかな? ・・・いや、でも・・・う~ん」と瞼を閉じ考え始めた。
「旦那ぁー、あっしはこの辺で待ってます。宿屋を決めたら、来てください」
馬車から手を振り、陽気な運転手が兼次達に話しかけた。「では、待ってますよー」と更に念を押した。兼次は手を上げ「おぅ、頼んだぞ」と答える。運転手は手綱を振るい、馬車を動かせると街の中心部に向かって進んでいった。
兼次は馬車から降りたその場所で、辺りを見渡した。そこからほんの数十メートル先に、宿屋らしき看板が目に入った。彼は、隣で考え込んでいる麻衣を見る。
「よし宿屋は、あそこにするぞ!」
「ちょっと、待って! 決めるの早すぎない? しかも、近っか!」
麻衣が目を開けると、兼次は目の前の宿屋に向けて、すでに歩き始めていた。彼女は小走りで彼に追いつくと、彼の袖を引っ張った。
「ねー、もちょっと考えようよ? 街の中心部に行ったら、いい宿あるかもよ? ついてに観光も…」
「速攻、即、決断、それが俺。それに、こんな田舎町に観光は期待できんな…行くぞ!」
「まぁ…いいか、自由行動あるし・・・」
麻衣と兼次は、周りの景色に目もくれず宿屋に入った。宿屋の中は簡素な作りで、カキレイの街で泊まった宿屋と、さほど変わらなかった。二人は受付を済ませると、そのまま部屋に入った。二人は、その入り口で立って部屋を見渡す。ベッドしか置いていない、簡素な部屋を見て、
「今回も、ベッドが二つ・・・この世界には、ダブルベッドと言う概念がないのか?」
「そうかもね? ふっふふ…」
「では麻衣。着替えるぞ、一応、現地住民と同じ服にしよう」と兼次は言うと、部屋の中に向かって歩き始める共に、スマホを取り出し操作しながら耳にあてた「ララ、服の変更を頼む。お任せで・・」と彼が言うと同時に、彼の着ている服が全て粒子状になる。その粒子状の物は、彼の周りを回り、再構築をはじめ服となった。
「あえて、服の解説はありません。誰得? って事ですね」
「ナレーション要らないから、さっさと着替えろ。スカートは股下5cmな!」
「絶対いや!」
麻衣はスマホを取り出し、操作を始めた。服変更アプリを起動し、画面を見るとトップ画面に、おすすめが表示されていた。
「すでに、おすすめ現地の服が、登録されてる。…件について!」と麻衣は、その言葉共に兼次の方を見た。
「俺は何も指示してないぞ。さっさと着替えろ」
「しょーがないわね・・・」
麻衣は、そんな兼次から背を向けた。スマホのおすすめボタンを押すと、服の変更が始まった。
「ダサいし… 谷間が… 膨らみの強調が・・・嫌すぎる」
「現地の服について… 生地は伸び縮みしません。頭からかぶせながら着る為に、首の部分は大きめになっております。そのおかげで、胸の谷間辺りまで切れ込みがあり、谷間がよく見えます。ワンピース状になった服を、紐で腰のくびれ辺りを縛る為、お尻と胸が強調されます。スカート部分の長さは、膝上5cmぐらいでしょうか・・・太ももが見えないのが残念仕様です」
「ナレーション止めてって! 言葉で解説されると、恥かしいから・・・」
「さっきのお返しだ」
兼次は冷の出入り口に向かって歩き始めた。ドアを開けると、振り返り麻衣を見る。
「では、俺は探求しに行くから。くれぐれも、事件を起こすなよ?」
「大丈夫だって・・・ たぶん」
「いいか、万が一があったら。全身黒色の服に着替えて、上空に逃げろ。いいな? 夜ならバレないはずだ。くれぐれも、攻撃するなよ? 騒ぎが大きくなるからな」
「そうやって、念を押すと。フラグが立つんだよね・・・」
「では解散、自由行動だ!」と兼次は、ドアから出て行った。
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