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2章 地球激闘編
1話 輪廻転生
しおりを挟むキーンコーンカーンコーン・・・
「はーい、今日はこれで終わり、寄り道せずまっすぐ帰るんだよ」
とある小学校で一日の授業が終わり教師が児童たちを教室から出て行くのを眺めている。
「先生さよなら~」
「はい、さようなら。みんな、明日も無事に顔を見せてね」
今日も無事に一日の授業が終わった、前を通り過ぎていく児童を教師が一人一人の顔を目に焼き付ける。
「今日で日本も終わりかもしれないからね・・・」
その教師は誰にも聞こえない声量でつぶやいた。
4年2組の教室、2つある出入り口が開き子供たちが一斉に出てきた。
「ゆりえちゃん、いっしょにかえろ」
「うん、かえろっ」
声をあげながら廊下にあふれている児童たちに紛れて二人の少女の会話がかき消されている、片方の少女がゆりえの手を取り真剣なまなざしで話しかけた。
「ゆりえちゃん、聞いてほしいことがあるんだけど・・・」
「いいよ、なにかなぁ~??」
「みんないるから・・・帰り道の神社ではなそ?」
「うん、いいよ」
2人は手をつなぎ一緒に校舎を後にした。
……
…
とある神社で2人の少女が境内の賽銭箱付近で座り込んでいる、夕暮れ時の境内は薄暗く木々の隙間からさしてくる光が線となって見えていた。
「ゆりえちゃん・・・・3組のかみや君どう思う?」
「えっ、かみや君ってだれ?」
ゆりえと呼ばれた少女は首を傾げとなりに座っている少女を見る。
「3組の学級委員長だよ、知らないの?」
「ん~、みたことない・・・」
「わたし、かみや君が・・・が」と言いかけて少女は腕で膝を抱える、さらにオデコを膝に当てて小さな声で言った「す、す、す…すきなのぉ」
ゆりえはその少女を半口を開けて見ていた、校舎から出てここに来る間に発現したわずかな尿意、今ここで限界に達したのか腕を回している太ももに力を入れ我慢するが、収まる気配がなく腕に鳥肌が立っていた。
「め、めぐみちゃん・・・ちょっとまってて、おしっこしてくるから、なぜか漏れそう」
ゆりえは直ぐに立ち上がり社の裏側へ向かって走っていった、後ろからめぐみの声が聞こえる。
「だめだよーゆりえちゃん、神様のお庭でしちゃ、バチが当たるよー」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ、まってって!」
ゆりえは立ち止まり振り返り笑顔を見せるとそのまま社の裏側に消えていった。
社の裏側には幹の太さが子供の同体より太い杉の木が立ち並んでいた、ゆりえは木の隙間を通り奥に入って行き手ごろな木の影を見つけるとそこに向かって走っていった。
「もれるよー・・・あ、いてっ」
走っていると何故かソフトボールほどの石につまづいて転んでしまった、四つん這い状態になったゆりえは自分がつまづいた石を見るために振り返る。
「なぜ? ・・・ううう、ちょっとでちゃったよー」
石を見ていると何やら石に文字が彫ってあることに気が付いた、四つん這い状態で石の側に行き文字を見とそこには<油座 友里恵 様へ>と彫ってあった。
「私の名前だ・・・・なんだろう? 男子のイタズラかな?」
四つん這状態から立ち上がろうと両手に力を入れると、木が折れるバキッと言う音と共に右手が土の中に埋まってしまった。
「はうぅぅ、ビックリしたよー、ううぅ…少しもれちゃった」
埋まった右手を抜こうと手を動かすと何か箱のような物が穴に入っている事に気が付いた、箱をつかんで土の中から取り出す、その箱は薄い金属でできており振ると何かが入っている音がした、蓋には文字が刻まれていた。
<油座 友里恵はこのハコをあけて手紙を読むでしょう>
「うあぁぁぁ!」
箱に自分の名前が書かれていることに驚き声をあげ箱を投げ捨てる、すぐに辺りを見渡してみたが誰もいない。しばらく深呼吸し顔を引き気味にしながら箱を開けようと近づく、蓋に手を掛けそのまま蓋を開けゆっくりと顔を近づけ中を見た。
「ふ、ふうとう?」
封筒を手に取り中を見ると紙が入っていた、取り出し広げると確かに手紙だった。
※※※※※
油座 友里恵へ
貴方はこの手紙を偶然手にしたと思うかもしれんません
でも偶然ではありません、私は見ました、未来の私を
そして未来の私に、生まれる前の前世の記憶を呼び戻します
私は何代にも渉って、こうして転生後に転生前の記憶を渡しています
さあ、目の前の石に手を置いてください
貴方が生まれる前の記憶を呼び覚まします
貴方の魂の情報を読み取り
輪廻の掟を破り
前世の記憶を解放します
記憶が戻れば予知能力も復活します
さあ、本当の自分を取り戻しましょう
左手を石に置いてくださいね
追伸、おしっこは漏らしませんので安心してください
※※※※※
「よめない漢字がいっぱいだよ・・・左手を石におくのかな?」
ゆっくりと左手を名前の書かれた石に近づける、手を広げ石に触れた。
すこしづつ体が軽くなっていく感じがした、頭の中にわずかな頭痛がする場所ができる、そしてそこが頭全体に広がっていき割れるような激痛が襲う、強烈な頭痛で感覚がはっきりしてしまい気絶することも出来ずにいた。
両手で頭を抱えて苦しがっているはずだった、だが左手を見ると石に置いたまま動いていない、四つん這い状態のゆりえは腰を落とし倒れこんだ。
「どうなちゃうの? いたいよー、だれか…た、たすけ・・・」
荒く間隔の短い呼吸をしている少女はやがて力尽き意識を失う、しかし数秒後に目を開きゆっくりと起き上がった。
「ふっふっふ、50年の時を超え夜巳ちゃん、ふっかーーーつ!
さてさて何度体験しても嫌ですねー記憶の戻る感覚は、しかし失敗でした、手紙に漢字を書き過ぎましたね、小学4年生って事を計算に入れてませんでした、次からは考慮しなければなりませんね」
少女は持っていた手紙を破いて捨てると空を見上げ体を一周する。
「アレはアフリカ大陸上空で止まってますね、
さて・・・兼次様の元に行かなければ! と、その前におしっこしなきゃね」
……
…
社の裏側からゆっくり歩いて戻ってきた少女は待っていた少女の前で立ち止まる、腰に手を当てめぐみを見下ろした。
「どうしたの? ゆりえちゃん」
「目覚めました、我が名は白井夜巳、予知能力者です。
以後良しなに…」
「ゆりえちゃん、何言ってるの? こわいよ」
「冗談ですよ、めぐみちゃん。
明日、かみや君に告白してみましょう? 絶対成功しますよ」
「ほんと?」
「うん、結果を見たからね」
「けっか?」
「いいのいいの、なんでもない、帰ろ?」
「うん、かえろっ」
並んで神社の階段を降りる二人の少女。
「めぐみちゃん、私は明日から学校休むから」
「どうしたの? なんで?」
めぐみは歩みを止める、ゆりえの方を向くと、ゆりえもめぐみと向き合った。
「愛する人に会いに行くんです、これは運命です」
「私も・・・かみや君と・・・」
「っち、このマセガキが」
「ゆ…り…え…ちゃん?」
「な、なんでもないよ。めぐみちゃん、じゃーね」
「うん、またあしたー」
再び歩き始めた2人は鳥居を潜る、そこでお互いに手を振り別方向に歩いて行った。
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