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第111話 血は争えない
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父バーグの書斎に入ったミロアは早速オルフェの手紙をバーグに見せた。そして、手紙を熟読したバーグは事務仕事を切り上げて立ち上がった。
「……どうやら、ガンマ殿下とは別の意味で危険な男だったようだな。ローイ・ミュド、やはり粘性のあるような歪んだ愛情の持ち主だったか。血は争えんというものか……」
「血は争えん? お父様、それはどういう意味ですか?」
(あ、このパターンは何となく分かる)
どういう意味か。と聞いたのは空気を読んだだけ。ミロアは前世の知識で『血の争えない』という言葉の意味をすぐに理解したのだ。おそらくは、ローイ・ミュドの父親も息子と同じだったのだろうと。
「奴の父親はハトロイ・ミュド。嘗ての戦争を生き抜いた双子の兄弟の兄の方であってな。若かりし頃のハトロイも過激な愛情を抱く男であったのだ」
「そうだったのですか」
やっぱり、と心の中で思ったミロアだがこの後に続く話に驚かされることになった。
「今のハトロイは親戚の女を妻にしているようだったが、初恋の相手は私の前妻でありお前の母・スターナだったのだよ」
「え? ええ!? お母様が!? お母様が被害者だったのですか!?」
「ああ、スターナも付きまとわれて本当に苦労していたよ。無論、婚約者だった私も例外ではない」
バーグは嫌な思い出を思い出したせいで顔をしかめる。
「一目惚れしたという理由で恋文を送ったり一方的に話しかけたり頼んでもいないのに贈り物を送ったりと……非常に迷惑だったものだ。婚約者の私がいるというのにな」
「なっ、婚約者がいるのに!?」
「……私が婚約者と知った時は、別れるように迫ったり婚約破棄させるために私達のことを密かに調べようとまでしてきたからそれはもう……うんざりしたものだ。挙げ句には、スターナを襲おうとまで……!」
「はぁっ!?」
バーグの言葉に怒りが混じり始める。どうやら思い出しただけで怒りがこみ上げてきたようだ。
「あの時は……本当に危なかった。当時は戦時中だから護衛騎士も満足に用意できず、不測の事態もあって離れた隙をつかれて……胸騒ぎがして来てみれば……!」
「お、お父様!?」
「奴は、恍惚とした笑顔を浮かべながら……スターナに背負投されて伸びていた。私は奴が返り討ちにされたところに出くわしたのだ」
「……ふぁ?」
(ふぇ? お母様ってそんなに強かったの?)
ミロアの母は王都に流行した流行り病で亡くなった。そのせいでミロアの中では、実の母は体が弱い人だという印象があったため、強いとは思ってもいなかった。ましてや、大人の男を背負投するなんて……。
「……お母様は、そんなに強かったのですか?」
「今のミロアのように護身術を学んでいたのさ。当時は戦争で王都も戦場になるほどの激戦もあった。身を護る護身術を学ぶ令嬢も多かった。それが幸いして取り返しのつかない状況にはならなかったわけさ」
「……そうだったのですね」
(背負投か。柔道か空手でも……いや、この世界に日本の武道はないか。それにしてもお母様まで護身術……っていうか男一人を背負投って、もう護身術の域を超えてるんじゃ……)
まさか、自分の母まで男対策をしていたことに親近感を覚えるミロア。
「……どうやら、ガンマ殿下とは別の意味で危険な男だったようだな。ローイ・ミュド、やはり粘性のあるような歪んだ愛情の持ち主だったか。血は争えんというものか……」
「血は争えん? お父様、それはどういう意味ですか?」
(あ、このパターンは何となく分かる)
どういう意味か。と聞いたのは空気を読んだだけ。ミロアは前世の知識で『血の争えない』という言葉の意味をすぐに理解したのだ。おそらくは、ローイ・ミュドの父親も息子と同じだったのだろうと。
「奴の父親はハトロイ・ミュド。嘗ての戦争を生き抜いた双子の兄弟の兄の方であってな。若かりし頃のハトロイも過激な愛情を抱く男であったのだ」
「そうだったのですか」
やっぱり、と心の中で思ったミロアだがこの後に続く話に驚かされることになった。
「今のハトロイは親戚の女を妻にしているようだったが、初恋の相手は私の前妻でありお前の母・スターナだったのだよ」
「え? ええ!? お母様が!? お母様が被害者だったのですか!?」
「ああ、スターナも付きまとわれて本当に苦労していたよ。無論、婚約者だった私も例外ではない」
バーグは嫌な思い出を思い出したせいで顔をしかめる。
「一目惚れしたという理由で恋文を送ったり一方的に話しかけたり頼んでもいないのに贈り物を送ったりと……非常に迷惑だったものだ。婚約者の私がいるというのにな」
「なっ、婚約者がいるのに!?」
「……私が婚約者と知った時は、別れるように迫ったり婚約破棄させるために私達のことを密かに調べようとまでしてきたからそれはもう……うんざりしたものだ。挙げ句には、スターナを襲おうとまで……!」
「はぁっ!?」
バーグの言葉に怒りが混じり始める。どうやら思い出しただけで怒りがこみ上げてきたようだ。
「あの時は……本当に危なかった。当時は戦時中だから護衛騎士も満足に用意できず、不測の事態もあって離れた隙をつかれて……胸騒ぎがして来てみれば……!」
「お、お父様!?」
「奴は、恍惚とした笑顔を浮かべながら……スターナに背負投されて伸びていた。私は奴が返り討ちにされたところに出くわしたのだ」
「……ふぁ?」
(ふぇ? お母様ってそんなに強かったの?)
ミロアの母は王都に流行した流行り病で亡くなった。そのせいでミロアの中では、実の母は体が弱い人だという印象があったため、強いとは思ってもいなかった。ましてや、大人の男を背負投するなんて……。
「……お母様は、そんなに強かったのですか?」
「今のミロアのように護身術を学んでいたのさ。当時は戦争で王都も戦場になるほどの激戦もあった。身を護る護身術を学ぶ令嬢も多かった。それが幸いして取り返しのつかない状況にはならなかったわけさ」
「……そうだったのですね」
(背負投か。柔道か空手でも……いや、この世界に日本の武道はないか。それにしてもお母様まで護身術……っていうか男一人を背負投って、もう護身術の域を超えてるんじゃ……)
まさか、自分の母まで男対策をしていたことに親近感を覚えるミロア。
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